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「好きになるのは20代の地下アイドルやコンカフェ嬢」――44歳芸人が婚活で直面した理想と現実

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飲食店で働きながら芸人としても活動している山田泰之さん(仮名・44歳)は20代の女性ばかりを好きになってしまう。(写真:Getty Imagesより/写真はイメージです)

「結婚したいのに結婚できない」――。そう考える男性は少なくない。

 別に女性を蔑視しているわけでもない。性格がめちゃくちゃ悪いわけでも、見た目が極端に悪いわけでもない。それでも、“普通の人生”を歩めないのはなぜなのか?

 この疑問を抱える中年男性たちに、自らの半生を振り返ってもらい、「なぜうまくいかないのか」を自己分析してもらった。

 俺がおかしいのか? それとも、社会がおかしいのか? 弱者男性たちのリアルな婚活事情に迫る。

人妻の綱渡りなパパ活事情

40代で婚活に苦戦する人たちの共通点

「結婚を考えるとき、多くの人は、まず『好き』という気持ちがあって、その後に『条件をすり合わせていく』という順番で考えます。でも、本来は『ライフプランから逆算して相手を探す』という発想がすっぽり抜け落ちている人が多いんです。特に結婚相談所を利用している人には、その傾向が強いのかもしれません」

 そう語るのは、恋愛・婚活アドバイザーの菊乃さん。

 ライフプランを深く考えないまま人生を歩んできた結果、40代になって婚活に苦戦している男性がいる。

 兵庫県出身の山田泰之さん(仮名・44歳)は、がっちりとした体型の男性だ。普段は飲食店で働きながら、芸人としても活動している。

 周囲を引っ張るリーダーのような性格で、安心感もある。一見すると、女性に好かれそうなタイプだ。しかし、婚活はまったくうまくいかないという。

「結婚を前提に、気になる女性をデートに誘ったりはするんですが、なかなか交際には発展しないんです。一方で、あまり興味のない女性とはワンナイトのチャンスがあることもありますが、自分もあまり気が乗らなくて、一度きりで終わってしまいます。好きな人には振り向いてもらえず、逆に何とも思っていない人から好かれてしまう。どうしたものかなと悩んでいます」

 山田さんは中学、高校時代は野球部で汗を流していた。一方で、頭の回転が速く、悪知恵も働いたため、教師からは厄介な子どもだと思われていた。

「父が巨人ファンだったので、子どもの頃から野球をやらされていました。中学生の頃は先生によく反抗していましたね。『廊下を走ってはいけません』と言われたときには、『先生は廊下を一度も走ったことがないんですか』と聞き返したりしていました(笑)」

 今で言えば、「論破型」とでもいうべき性格だった。大人からは好かれなかったが、同年代の友人には恵まれた。

「野球部では、顧問の先生がそれほど野球経験もないのに偉そうに指示を出していたので、部員みんなで『野球があまりうまくない先生に、練習や試合のことを細かく指示されるのはおかしい』と抗議したこともありました」

 そんな山田さんは、正義感からだったのか、それとも単なる反骨心だったのか、高校時代にはセクハラ教師を告発したこともあった。

「バレー部の顧問で、『練習の様子を撮っておいたほうが役に立つ』と言って、大きなビデオカメラをいつも回している先生がいました。それを見て僕は、『先生、ビデオばかり撮っていますけど、まさか変なことに使っているわけじゃないですよね』と言ったんです。当然、ものすごく怒られました」

 腹を立てた山田さんが、その後、教師がトイレに行くタイミングで後をつけたところ、顧問が不適切な行為をしている場面を目撃してしまったという。

「それ以来、先生が嫌がるようなあだ名を付けたり、教頭先生に報告したりしたのですが、当時はまだ昭和の名残のような空気があり、懲戒免職になるようなことはありませんでした。とにかく、いろいろな先生に嫌われる生徒だったと思います」

合コン三昧だがすべてネタにするため

 そんなひねくれた学生生活が影響したのかは分からないが、女性とは縁のない日々を送っていた。その後、地元の大学に進学したものの、お笑い芸人になることを夢見てすぐに中退。逃げるように上京した。

「親にはかなり反対されました。でも、このまま大学を卒業するまで待てば22歳になります。そこから芸人を目指すのでは遅いと思ったんです」

 上京後は、自分で作ったネタを手に、さまざまなお笑い事務所のネタ見せに参加した。その中の一社に所属することになり、ショーパブなどで活動を始めた。

 当時のショーパブでは、ものまねショーが全盛期だった。そんななか、山田さんは一人漫談で芸人の裏話を披露する芸風で注目を集めた。そのため周囲の芸人たちは、いつ自分の裏話を暴露されるかと、戦々恐々としていたという。

「表ではいい顔をしているのに、裏では後輩芸人に威張っている先輩が多くて、それがすごく嫌だったんです。だから、そういう人たちが裏でどんなことをしているのかを、そのままネタにしていました。本人から『頼むからやめてくれ』と言われたこともありましたが、『だったら後輩いじめをやめてくださいよ』と返していました」

 高校時代から、やっていることはあまり変わっていないが、芸人になってからは、女性との接点も増えていった。初めての体験は22歳くらいの頃。芸人仲間からの誕生日プレゼントとして、ソープをおごってもらった。仲間には、それが初めての経験だということを隠していた。

「実際に行ってみると、担当してくれたのはふくよかな年配の女性で、『この人で卒業するのか……』と少しがっかりしました。でも、これも芸人としてネタになるかもしれないと思って頑張りましたね」

 その後は、合コンで誰をターゲットにするかを決め、持ち帰るという遊びをするようになった。

「もちろん、理由はそれだけではなく、初めて会う女性をお客さんだと考えて、話術で笑わせる練習とも考えていました。そういう地道な積み重ねが、いつか芸人として花開くと信じていたんです」

 女性との出会いも、芸の肥やしになる経験として捉えることが多く、ひとりの女性ときちんと交際する経験は積んでこなかった。

「合コンに来る女性もノリのいい人が多く、ワンナイトの関係になることも何度かありました。それだけではなく、合コン合宿を企画して、肝試しの最中に驚かせたり、今なら間違いなくNGと言われるような遊びをたくさんしていました」

 破天荒な芸人としての生き方にこだわるあまり、テレビ向けの軽いネタを作ったり、周囲に媚びたりすることができなかった。その結果、テレビに出演する機会を次々と逃し、山田さんは「売れない芸人」としての道を歩み続けることになる。

「芸人というのは、目の前にいる人を笑わせるものだと思っていたので、テレビにはまったく興味が持てなかったんです。自分では格好悪いと思っていた先輩がテレビに出て調子に乗り、しばらくすると使い捨てられていく……。そういう状況を見ているうちに、売れたいという気持ちもだんだん薄れていきました」

 やがて山田さんは、ライブハウスで行われる過激なネタライブに出演したり、自ら主催したりするようになった。

40代だけど20代が好きになってしまう

 気づけば40歳になっていた。それまで、彼女のような存在を欲しいと思ったことは一度もなかった。だが、このままでは一生独り身になってしまうと考え、婚活を始めた。

 ところが、いざ結婚相手を探そうとすると、なかなか相手が見つからない。それまで、一人の女性ときちんと交際した経験がなかったからだ。

「そこで出会いを増やそうと、不特定多数の女性が来る飲み屋で働き始めました。エピソードトークを交えながら、気になる女性を次々とデートに誘う作戦だったのですが、なかなかうまくいきませんでした。仮に交際につながっても、芸人好きの個性的な女性が多く、『この人とずっと一緒に暮らしていきたい』と思える相手には、なかなか出会えませんでした」

 より好みをすればするほど、候補となる相手は少なくなっていく。街コンにも顔を出すようになったが、それでもピンとくる相手は見つからない。

「正直に言うと、いいなと思うのは20代の女性が多くて、コンカフェで働いていたり、地下アイドルをしていたりする子なんです。でも、そういう女性にはたいてい別に男性がいて、僕のほうには振り向いてもらえません」

 山田さんは44歳。20代の女性ばかりにアプローチする姿は、いわゆる「おじアタック」と呼ばれても仕方のない状況だ。

「『いい感じかもしれない』と思って積極的にアプローチしても、『そんなつもりはなかったのに、急に距離を詰められて驚いた』と断られてしまうこともありました。いわゆる『ヌイペニ』みたいな扱いですよね」

「ヌイペニ」とは、「ぬいぐるみペニスショック」の略称。女性が、恋愛対象ではなく、安心できる友人やマスコット、ぬいぐるみのような存在だと思っていた男性から、恋愛感情や性的好意を示され、ショックや嫌悪感を抱くことを指すインターネットスラングである。

 がっちりとした体型の山田さんは、どこか愛嬌があり、人には好かれそうに見える。しかし、必ずしも恋愛対象として見られているわけではないということなのだろう。

「もう若くもないので、自分の身の丈に合った相手を探さなければいけないとは思っています。でも、そういう相手を全力で口説こうという気持ちにもなれません。婚活も半分くらい諦めていて、今は毎日働いている飲食店に来てくれる仲間と楽しく過ごせたら『それで十分かな』という気持ちになっています」

 行き当たりばったりの女性関係を続けてきたことで、ひとりの女性と長期的な関係を築くことが難しくなっているのかもしれない。男女が関係を長く続けるためには、互いに歩み寄る努力も必要になる。

 そんな山田さんについて、前出の菊乃さんはこう語る。

「今の20代には、『一度も人と付き合ったことがない』と、特に引け目を感じることなく話す人が少なくありません。ですから、この方も交際経験がないこと自体を気にする必要はないと思います。ただ、問題は結局、若い女性ばかりを求めてしまっていることです。まさに、マッチングアプリで若い女性にばかり『いいね』を送る中高年男性と同じ構図ですよね。実際に入籍している夫婦は、年齢差が3歳以内のケースがほとんどです。だからこそ男性は、自分が若い男性とも比較される立場にあることを念頭に置いて婚活をしたほうがいいと思います」

 山田さん自身も、「身の丈に合った相手を探さなければならない」と頭では理解している。それでも、心は20代の女性に向いてしまう。その理想と現実の隔たりこそが、山田さんの婚活を難しくしているのかもしれない。

“リボ払い地獄”にハマった男性の末路

婚活アドバイザー菊乃さんのオフィシャルブログ
https://ameblo.jp/koakuma-mt/

(取材・文=山崎尚哉)

山崎尚哉

1992年3月生まれ、神奈川県鎌倉市出身。レビュー、取材、インタビュー記事などを執筆するほか、南阿佐ヶ谷でTALKING BOXという配信スタジオを運営中。テクノユニット・人生逆噴射の作曲担当で別名DJ.YMZK。

X:@yamazaki_naoya

山崎尚哉
最終更新:2026/08/05 12:00