レンタルビデオのゲオが“リユース最大手”に――「セカンドストリート」売り上げ3000億円の舞台裏

「中古でもいい」から、「あえて中古がいい」へ――。
かつては新品を買えないときの代替品というイメージもあった中古品だが、いま、その位置づけは大きく変わりつつある。
フリマアプリの普及によって誰もが簡単に「売る側」になり、若い世代では購入時点から手放すことを前提に商品を選ぶ人も増えた。
一方、スマートフォンだけで中古品を売買できる時代になったにもかかわらず、実店舗の「セカンドストリート」も急成長している。
なぜ、これほどまでに中古品が私たちの日常へ入り込んだのか。
レンタルビデオ店がリユース最大手になった理由
いま、日本のリユース市場は明確な拡大局面にある。環境省の調査によると、2024年の国内リユース市場規模は3兆4986億円。2009年の約1兆1274億円から、15年間で3倍以上に膨らんだ。
そんな市場の拡大を象徴する存在が、総合リユースショップ「セカンドストリート」だ。「リユース経済新聞」の「リユース売上ランキング2026 BEST300(2025年度実績)」によると、セカンドストリートを運営するゲオホールディングスのリユース売上高は3006億円に達し、初めて3000億円の大台を突破した。前期比でも9.7%増となり、衣料品だけでなく、家具や家電などの売り上げも伸びている。
ご存じのように、ゲオホールディングスはもともと「GEO」のビデオレンタル事業を中核に成長してきた企業だ。ところが現在では、グループ売り上げ高の6割以上をリユース事業が占めるまでになっている。
そして2026年10月には、創業40周年を機に持ち株会社の社名そのものを「セカンドリテイリング」へ変更する。同社コーポレートコミュニケーション室広報課の中川稜氏は、その理由をこう説明する。
「『ゲオホールディングス』という名称では、グループ全体の事業を表しきれなくなってきました。また、主要事業であるセカンドストリートを運営する企業としての認知が、海外も含めて十分に広がっていないという課題もありました。そこで、リユース業界のグローバルなトップランナーを目指すという決意を込めて社名変更します」(以下、「」内コメントは中川氏)
「レンタルビデオは永遠に続かない」
もっとも、セカンドストリートはゲオが立ち上げたブランドではない。1996年、フォー・ユーという会社によって始まった総合リユースショップだ。一方、レンタルビデオ市場では後発だったゲオは、早くから「レンタル事業が永遠に続くわけではない」という危機感を抱き、第二の柱を模索していた。
「ゲオはレンタルビデオブームがある程度成熟したタイミングで参入し、価格などで競争力をつけながら大きくなってきた会社です。だからこそ、90年代ごろから『レンタルビジネスは近い将来、何らかの形で変わるだろう』という危機感を持っていたんです。創業者の遠藤結城は『空から何かしらの形で降ってくるだろう』と言っていました」
そこで目をつけたのが、もともと中古ゲームの売買も手がけていたゲオと親和性の高いリユース事業だった。2008年からフォー・ユーの買収を進め、2010年に完全子会社化。ゲオで稼いだ資金をセカンドストリートへ投じ、店舗網を拡大していった。
ただし、中古ゲームと古着では商売の仕組みがまるで違う。ゲームソフトには商品コードがあり、同じタイトルなら商品そのものに大きな違いはない。一方、古着は一点ずつ状態も需要も異なる。
「衣料品にはバーコードはなく、商品や状態によって査定額を変えなければいけない。トレンドなど、さまざまな要素が複合的に絡むので、どうしても『目利き』という人的な要素が必要になります」
そこにゲオが持っていた大規模チェーンの運営能力が加わった。セカンドストリートの「目利き」と、ゲオが1000店舗以上を展開する中で培った店舗運営の仕組み。この組み合わせが、その後の大量出店を可能にした。
もうひとつ、セカンドストリートの成長を支えたのが、「リユースショップらしくしない」店づくりだった。
「セカンドストリートが創業した当時は『リサイクルショップ』と呼ばれていましたが、個人経営のお店も多く、『怪しい』『汚らしい』『この商品は本物なのかな』といったネガティブなイメージを持たれることもありました。そこでセカンドストリートは、創業当初から白を基調にしたきれいな店舗にして、一般的なアパレルショップと変わらないような商品陳列や店づくりを心がけました。それが、当時のリユースショップとは一線を画していた部分だと思います。それによって女性客やファミリー層を取り込めたことが、成長につながりました」
実際、同社のPontaカードのデータで確認できる利用者は40~50代女性が最も多く、次いで同年代の男性だという。もはや一部の古着好きが通う店ではなく、幅広い世代が日常的に利用する小売店になっている。
中古市場を広げた「メルカリ効果」
では、メルカリをはじめとするフリマアプリの台頭は、実店舗にとって脅威ではなかったのか。
「2014年ごろからフリマアプリが台頭し、リユースを日常生活の身近な選択肢として使う方が非常に増えました。それに加えて、消費者の中古品に対する意識もかなり変わりました。フリマアプリの普及によって『中古でもいいかな』と思える人が増えたことは、リユース市場そのものを広げる上で非常に重要だったと思います。特に現在、物価上昇が続いていますが、新品価格が上がる中で、『良質なものを賢く手に入れたい』という消費者の意識が高まっています」
さらに大きく変わったのが、「買う」と「売る」の関係だ。
「特に若い世代で新しいと感じるのが、『売ることを前提にした購買行動』です。以前の世代であれば、新品で買ったものは壊れるまで使う、自分で最後まで使い切るという意識が強かったと思います」
いまや「リセールバリュー」、つまり手放したときにいくらで売れるのかまで念頭に置いて商品を選ぶ人が増えているという。
「例えばAとBの商品で迷ったときに、『Aのほうがリセールバリューが高いから、どうせならAにしよう』と考える。売るときの価格が、商品を選ぶひとつの要素になってきています。消費者がリユースとうまく付き合うようになってきたという印象がありますね」
中古品の価値をさらに押し上げているのが、海外からの需要だ。東京商工リサーチも、円安と訪日外国人の増加をリユース市場の追い風として挙げている。
日本の中古品は状態が良く、訪日客にとっては自国より安く購入できるケースもあるという。中川氏は、その価値を「ユーズド・イン・ジャパン」と表現する。
かつて「メイド・イン・ジャパン」が品質を示すブランドだったとすれば、いまや「日本人が使った中古品」であることまでが、ひとつの価値になり始めている。
「最近面白かったのが、原宿で海外のお客様へのインタビューに立ち会ったときのことです。アメリカにもセカンドストリートがあるので、『日本の本場のセカンドストリートを見に来た』と言っている方がいました。『本場も何もないんですけどね』とは思いましたが(笑)。それでも、海外で認知度が高まったことで、日本旅行の際にセカンドストリートへ立ち寄ってくださる方も増えています」
なかには、セカンドストリートを訪れること自体を、日本旅行の目的のひとつにする人までいる。
「大宮に『スーパーセカンドストリート大宮日進店』という非常に売り上げの大きい店舗があります。一般的には観光で行くような場所ではないのですが、SNSなどで紹介されているのを見て、10日間の日本旅行のうち1日を使って『本場のセカンドストリートに行きたかった』と来店する海外の方もいるようです」
「日本式リユース」は世界で通用するか
そして、海外から日本の店舗へ客を呼び込むだけではない。セカンドストリート自身も、海外で急速に店舗網を広げている。
2026年8月末時点で海外161店舗。2018年のアメリカ初出店を皮切りに、マレーシア、台湾、タイ、シンガポール、香港などへ進出してきた。2036年3月期までには国内1500店、海外1000店規模を目指す構想を掲げる。
「海外1号店はアメリカで、2018年に出店しました。きっかけは、アメリカ事業の立ち上げメンバーが、別件の社内研修で現地を視察したことでした。その際に古着店などを見て、店舗の展開方法や扱っている商品などを調べたんです。そこで改めてわかったのが、日本は実はリユース先進国で、リユース文化がかなり成熟しているということでした。『日本式、ひいてはセカンドストリート式の売買型店舗をアメリカに持っていっても通用するのではないか』という目測が立ち、帰国後に事業計画を作って、1号店をオープンしました」
つまり、海外へ輸出しようとしているのは、日本で集めた中古品だけではない。現地の消費者から商品を買い取り、それを現地で再び販売する。そんな「日本式リユースショップ」の仕組みそのものを持ち込もうとしているのだ。
「リユースを利用した経験がある方は、人口全体で見ればまだ限られています。買ったことはあるけれど売ったことはない人もいれば、売ったことはあるけれど買ったことはない人もいます。リユースを日常的に利用する人を増やす余地はまだありますし、商材についても、これまで中古で買うという発想がなかったものが、今後リユースされるようになる可能性があります。海外にも、日本ほどリユースの仕組みが整っていない国はたくさんあります。リユース市場には、まだかなり成長余地があると思っています」
「中古でもいい」から、「中古だからいい」へ――。セカンドストリートの急成長は、中古品の価値そのものが変わりつつあることを象徴している。
(取材・文=千駄木雄大)
