CYZO ONLINE > 芸能ニュース > てんちむ賠償命令、弁護士が「当然の結論」と同情論バッサリ

てんちむ、約4億円の賠償命令に「かわいそう」の声も…弁護士が「当然の結論」と解説

てんちむ、約4億円の賠償命令に「かわいそう」の声も…弁護士が「当然の結論」と解説の画像1
イメージ画像(写真:Getty Imagesより)

 タレントでYouTuberの「てんちむ」こと橋本甜歌が、豊胸手術をした事実を隠しながら育乳効果を想起させるナイトブラ「モテフィット」をプロデュースしたことをめぐり販売元から損害賠償を請求されていた裁判で、東京地裁が16日に3億8457万4504円の賠償を命じる判決を出した。

 ネット上のファンからは「さすがにかわいそう」「いくら何でも賠償額がデカすぎる」といった同情の声が湧き起こり、それと同時に「てんちむは控訴するのか」という点に注目が集まっている。4億円近い巨額の賠償金は妥当なのか、法律のプロに解説してもらった。

 てんちむは2020年、豊胸手術したことを隠しながら「モテフィット」をプロデュースし、その後に豊胸が発覚したことで炎上。てんちむとメーカーは購入者から返金を求められ、さらにメーカー側は豊胸手術を隠していた「説明義務違反」などを理由に5億円にのぼるとされる損害賠償を求め、てんちむを訴えた。

 結果、てんちむは先述したように3億8457万4504円の賠償を命じられ、自身のSNSのアカウント名を「圧倒的敗訴」に変更。YouTube動画では「もし転落生活になったとしても、秒速で億万長者に戻るつもりではありますけどね」などと強気の姿勢を見せたが、いくら彼女でも3億8000万円超の賠償金となると、ダメージが大きくないはずがない。

 これに対して、ネット上のファンからは「かわいそう」との声が続出。親交のある元「青汁王子」こと実業家の三崎優太氏も自身のYouTube動画で「さすがに同業者として、てんちむがかわいそう」「おかしな広告をやっていたのはメーカーの責任」「あまりにもやりすぎ。これがまかり通ってしまうと、この業界の未来やインフルエンサー、タレントの保護という観点においてすごく問題がある」などと、同情的な見方を示した。

 てんちむも、7月にSNSなどで「付けるだけでは胸は大きくならないので、あくまでも補助として使ってください」と動画を通して呼びかけていたとし、自身は関与していなかったという広告について「『モテフィットでバストアップできる』と誤解を招く広告にも原因があるのではないか、そのような広告で販売したことも炎上の一因なのでは?」として、誤認させるような広告を展開していたメーカー側にも責任があると訴えていた。

巨額賠償への弁護士の見解は

 実際のところ、てんちむに下った3億8457万4504円の賠償命令は妥当といえるのか。山岸純法律事務所の山岸純弁護士は「かわいそう」「賠償金が巨額すぎる」という意見があることに対し、このように厳しく断じた。

「賠償金額は妥当と考えます。おそらくメーカーは、てんちむさんの豊胸が発覚した後、消費者からのクレームが相次ぎ、ナイトブラの返金に応じていたのでしょう。また発覚後、在庫のナイトブラはほとんど売れなくなってしまったはずです。そうであれば、返金分や在庫分は損害にあたるので、当然の結論です。なお、『誇大広告をしたメーカー側にも責任がある』という反論ですが、この方は、自分が著名人であり、自分の言動の影響が大きいことを十分に認識しているはずで、その影響力をナイトブラ販売に利用されていることを本人が熟知している以上、通用しません」

 メーカー側は金銭的なダメージに加え、信頼失墜やブランドイメージの毀損といった、計り知れない痛手を負っており、それら踏まえると「妥当」となるようだ。

 今後は「てんちむは控訴するのか」が大きな分岐点となるが、彼女は敗色濃厚を悟った時点で控訴を検討していると示唆していた。

それに対して、2ちゃんねる創設者で実業家の「ひろゆき」こと西村博之氏は9月に自身のSNSで「5億円の裁判だと弁護士は、着手金だけで1500万円(旧報酬会規)。控訴審で負けるとわかってても弁護士事務所は裁判をやりたがる。セカンドオピニオンを無関係の弁護士に聞かないと出費が増えるだけになるやも」と助言していた。

ひろゆき氏の私見にプロは異論

 もし本当に「5億円の裁判なら着手金だけで1500万円(旧報酬会規)になるので、負けることが分かっていても弁護士事務所は控訴審をやりたがる」となると厄介で、セカンドオピニオンとなる弁護士が必要になりそうだが、実際のところはどうなのだろうか。山岸弁護士はこう指摘する。

「この場合、4億円の賠償命令に対する控訴審について、旧日弁連規程に基づいて弁護士費用(着手金)を請求して受任する弁護士は、まず、いません。すなわち、『負けるとわかっていても控訴審をやりたがって、1500万円を請求する弁護士』は、まずいないということになります。

 地裁判決をひっくり返すのは難しいので、まず、クライアントにはこれをしっかり理解してもらい、そのうえで『100万円~200万円程度の着手金をもらい、賠償金額の減額に成功した場合に、着手金減額分を上乗せして請求する』というのがたいていの場合です。なぜなら、1500万円もの着手金をもらっておいて判決が変わらなかったら、クライアントと揉めるのが目に見えているからです。

 なお、地裁を担当した弁護士以外に、いわゆるセカンドオピニオンとして別の弁護士の意見を聞くというのは大賛成です。しかし弁護士界隈では、クライアントから『他の弁護士に聞いたところ、こうやればいい、こういう風に(勝てるなど)言っていたので、これでやってください』などと言われるのは非常に嫌がられることなので、セカンドオピニオンに意見を聞くなら、その弁護士に控訴審を担当してもらうくらいの心構えが必要です」

(文=佐藤勇馬)

■協力=山岸純/弁護士・山岸純法律事務所代表

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。山岸純法律事務所

佐藤勇馬

1978年生まれ。新潟県出身。SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。著書に『ケータイ廃人』『新潟あるある』がある。

X:@rollingcradle

最終更新:2024/12/19 08:57