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なぜNON STYLEは10代に人気なのか? 「お笑い界の摩訶不思議」の理由と業界評価

NON STYLEの画像1
NON STYLE(写真:サイゾー)

 「LINEリサーチ」を運営するLINEヤフーは5日、中高生を対象に実施した「一番好きなお笑い芸人」についての調査結果を発表。高校生のランキングでサンドウィッチマンや陣内智則ら納得の面々に混じって、NON STYLEが上位入りした。

 NON STYLEはサンドウィッチマンらと比べるとテレビ露出はそれほど多いとは思えないが、若年層に根強い人気がある。なぜ彼らは高校生ら10代から支持されるのか、業界内ではどのように評価されているのか。お笑い事情に詳しい芸能ライターの田辺ユウキ氏が解説する。

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若年層のノンスタ人気は業界でも謎?

 今回の「一番好きなお笑い芸人」ランキングでは、女子高校生の1位がサンドウィッチマン、2位がNON STYLE、3位がチョコレートプラネット、4位が霜降り明星、5位が千鳥。男子高校生の1位が陣内智則、2位がサンドウィッチマン、3位がNON STYLE、4位が千鳥、5位が令和ロマンとなった。

 圧倒的な好感度の高さを誇るサンドウィッチマンや、テレビ露出が多くYouTubeチャンネルも若者世代に人気の陣内ら納得のメンバーが並ぶなか、NON STYLEが異彩を放っている。現時点でメインを務める地上波の番組がなく、SNSなどで熱烈に支持されているイメージもないため、なぜこれほど「若者ウケ」しているのかあまり見えてこないからだ。

 しかも彼らの高校生からの人気の高さは今年に限ったことでなく、昨年や一昨年の同調査でも高校生部門のランキングで上位に入っている。

 この疑問について、田辺氏はこう解説する。

「若年層のNON STYLE人気の高さは、お笑い界の摩訶不思議の一つですよね(笑)。目立った冠番組や話題になったCMがあるわけではないですから。あくまで推察なのですが、今の10代の親世代や先生世代は、1970年代~1980年代の生まれが多いと思います。この世代は、NON STYLEが『M-1グランプリ』で優勝した2008年当時、20代から30代だった。

 当時のNON STYLEはほかにもNHKの『爆笑オンエアバトル』で圧倒的な強さを誇るなどし、若者から熱烈な支持を集めていました。ちなみに私は約20年前、大阪の『うめだ花月』(2008年10月閉館)があったころ、NON STYLEの井上裕介さんを梅田で見かけることがありました。井上さんが若者たちに人気の商業施設付近に立っていたり、通りかかったりすると、その辺りにいた20人くらいの若い女性が一気に集まってくるんです。とにかく大モテで、ものすごい人気がありました

 ですから、高校生世代にNON STYLEがウケている理由は、自分たちの親や先生がNON STYLEが好きで、その影響を受けてYouTubeチャンネルなどで小さいころからネタなどを見ているからではないでしょうか」

 実際、YouTubeチャンネルが若者人気に影響している可能性は高そうだ。彼らは定期的に漫才の動画を公開しているが、コンスタントに20万~50万回ほどの高い再生数を記録している。おそらく、高校生ら若者世代はYouTubeなどでNON STYLEの笑いに親しみ、彼らを好きになったのだろう。

実はストイック…業界評価も変化

 NON STYLEというと、かつてアイドル的な支持を誇ったこともあり、どこか「人気先行」といったイメージがつきまとっていた。現時点での業界内での評価はどうなのか。田辺氏はこのように彼らの実力を分析する。

「2000年代、大阪の若手の劇場『baseよしもと』は、『ワラキチ(笑麒千)』と呼ばれたトップの3組、笑い飯、麒麟、千鳥が強く、しかも『おもしろくないやつに価値はない』くらいのストイックな空気が流れていました。そんな中、NON STYLEは、そのスタイリッシュさでお客さんをたくさん呼んでいたものの、笑い飯、千鳥らとは芸風がまったく違っていたため、犬猿の仲と言われていました。特に笑い飯の哲夫さんは、劇場でスベった芸人がいると『お前らはNON STYLEか』とバカにしていたと言われるほどでしたから。

 ただ哲夫さんはその後、実力をしっかり伸ばしたNON STYLEのことをちゃんと認められましたよね。学園祭での営業で、『M-1』のネタを披露したNON STYLEに対し『なにをNON STYLEがおもろい漫才しとんねん』と声をかけたエピソードは有名です。

私は、NON STYLEもまたストイックに笑いを追求したコンビだと思っています。ワーキャー人気に溺れず、ネタを磨いていった印象です。『M-1』の優勝ネタは非常に洗練されていましたし、あのスピード感の中に言葉とキャラクターを詰めていくのは、なかなかできることではないと思います」

 アイドル的なチヤホヤに勘違いすることなく、地道に実力を磨いていった結果が、YouTubeで漫才動画が高い再生数を記録する現状につながっているようだ。田辺氏は続ける。

「現在、石田明さんはNSC(吉本総合芸能学院)の先生も務めていらっしゃり、漫才論に関しても深く言及されていますよね。著書『答え合わせ』(マガジンハウス/2024年)も気づきが多い内容でした。井上裕介さんは、私もテレビ番組で一度ご一緒したことがありますが、エピソードトークが上手いですし、いじられ役にも回れますし、あと大阪出身でありながらツッコミがお優しいんですよね。

 キレ者である石田さんとソフトタッチな井上さんは、テレビ関係者にとっても使いやすいのだと思います。ですので、井上さんに不祥事があっても、結局、仕事が途切れることはなかった。今後に関しては、石田さんは先生の職にも就いているのでまさに盤石。このままお笑い界の大御所ルートに乗ると思います。井上さんはバラエティのひな壇タレントでもいけますし、恋愛番組などのトークゲストもできますから、テレビタレントとしてマルチに活躍されるのではないでしょうか」

(文=佐藤勇馬)

協力=田辺ユウキ
大阪を拠点に芸能ライターとして活動。映画、アイドル、テレビ、お笑いなど地上から地下まで幅広く考察。

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佐藤勇馬

1978年生まれ。新潟県出身。SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。著書に『ケータイ廃人』『新潟あるある』がある。

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最終更新:2025/03/15 14:00