霜降り明星・粗品vs友田オレ、新旧『R-1』王者対談から浮かび上がる「新世代」の息吹

霜降り明星・粗品のYouTubeチャンネル「粗品のロケ」に、先日行われたピン芸人日本一決定戦『R-1グランプリ』(フジテレビ系)で優勝を果たした友田オレが出演。17日に公開された『友田オレと話した』、19日公開の『R-1最年少優勝塗り替えられたからキレたった【友田オレ】』で、計1時間以上にわたって対談している。
粗品は2018年末に霜降り明星として『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)を制し、その翌年春の『R-1』でも優勝を果たしている。そのとき、26歳。当時の『R-1』における最年少優勝記録だった。
そして、その粗品の最年少記録を更新し、23歳で今年の『R-1』を獲ったのが友田オレ。粗品は番組MCを務めていた。そういう関係性である。
1本目の動画では友田オレの芸人になるまでの道のり、そして大会前に友田が公言していた「R-1連覇宣言」についての意思確認が行われた。友田は来年の出場について「検討中ぐらいの感じですね」と正直な心境を明かし、粗品もそれに理解を示している。
そして2本目では友田の今後のキャリアについて、粗品が詳細にインタビューしている。「ネタ番組」「コント番組」そして『ミヤネ屋』のような情報番組にも出たいという友田の言葉に、粗品はときに共感し、ときに驚きを見せながらインタビュアーに徹していた。
その中で、話題は「世代」へと移っていく。そこで、粗品は明言する。
「ダウンタウン世代じゃない」
「俺らでもさ、ギリ、ダウンタウン世代じゃないねん。ダウンタウンのお笑い、まったく知らんねん正直。千鳥とか笑い飯とかのド世代や、俺ら。何見てきた? って言われたら、それや。テレビでは」
18年に『M-1』を制し、翌19年、テレビバラエティは「第7世代ブーム」に沸いた。その中心にいたのは、間違いなく霜降り明星だった。そして常に、粗品はセンターにいた。
ブームが去り、粗品は多くの番組を失うことになる。時を同じくしてYouTubeでの活動に時間を割くようになり、現在ではコンビでのチャンネルで週7本、個人のメインチャンネル「粗品Official Channel」でも週7本、粗品のロケで週3本、合計で週17本の動画を更新している。
「もう先輩がメインのテレビに出るのはええかなぁ」
いつからか粗品はそう口にするようになり「俺なりの天下を目指す」と宣言した。
相方のせいやがピンでゲスト出演を重ね、テレビスターとして順調に成長していく傍ら、粗品はYouTubeでの発言を先鋭化させ、まるで自らテレビの世界を遠ざけているように感じられた時期もあった。
しかし昨年の『27時間テレビ』(フジテレビ系)で、突如粗品はテレビバラエティのド真ん中に回帰することになる。圧倒的な存在感を見せつけ、再びテレビは粗品を中心に動き出そうとする。ガタリ、と音を立てて時代が再起動した瞬間だった。
しかし粗品は、殺到するオファーをことごとく断っていく。ゴールデンの大型特番、年末のネタ番組、それらの番組名を具体的に名指しし「賢いから断ったぁ~!」と切って捨てていく。
そして狙いすましたように年明けの『ytv漫才新人賞』(読売テレビ)の審査員席に座り、また圧倒的な存在感を示して見せる。
現在、各賞レースの審査員を務めるのは、正真正銘「ダウンタウン世代」の芸人たちだ。『R-1』ならバカリズムに野田クリスタル、『キングオブコント』(TBS系)に東京03の飯塚悟志、バイきんぐ・小峠英二、『M-1』ナイツ・塙宣之、誰もがダウンタウンと松本人志の影響を公言してきた芸人ばかりだ。
そんな賞レースの“審査員界”にも、粗品は風穴をあけてしまった。こうなれば、世代交代は進むしかない。
一時的にメインストリームから外れることで、回り道せずに再びメインストリームに舞い戻ってきた粗品、その肩には『M-1』『R-1』という2本のチャンピオンベルトがかかっており、その肩書きの説得力が粗品の存在感を後押しする。
そして今の粗品の目には、もう先輩は映っていない。「粗品のロケ」に『ytv』のファイナリスト全員に続いて友田オレという後輩を呼んで、「粗品のロケの業界視聴率エグいで、関係者全員見てる」と言ってその背中を押す。
友田オレとの対談でも、何度も「世代」というワードが出てきた。粗品は何度も友田に「同じ世代でやりたいやろ」と問いかけた。
そして、自身の『R-1』最年少記録が破られ、『M-1』では粗品さえ成しえなかった令和ロマンの連覇を目の当たりにしたことを、実に屈託なく喜んで見せた。
時代を変えようとしている。そして、時代を変える仲間を育てようとしている。ここ最近の粗品からは、そういう思いが強く感じられる。
くしくも、ダウンタウンは2人ともテレビから一時退場することになった。後に日本中を席捲することになる「第7世代」という言葉を生み出したラジオ番組『霜降り明星のだましうち!』(ABCラジオ)も、この春で最終回を迎える。
新旧『R-1』王者の対談は、そんな時代の移り変わりを強く感じさせる一幕だった。
(文=新越谷ノリヲ)