『耳の穴』さらば青春の光・森田哲矢が語った『KOC』卒業と「脳汁」の在りか

21日放送の『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日系)にお笑いコンビ・さらば青春の光が出演。賞レースについての思いをMCのウエストランド・井口浩之とぶつけ合った。
『耳の穴』は昨年4月、井口ととろサーモン・久保田かずのぶのMCで同局の「バラバラ大作戦」の火曜深夜2時34分枠でスタート。今年4月の改編で月曜深夜1時58分枠に昇格したものの、今年2月から久保田が出演を見合わせており、井口の単独MC体制が続いている。
今回はそんな井口がさらばの2人に「賞レース以上に熱くなれる瞬間ってありますか?」と尋ね、さらばの本音に迫った。
さらばは『キングオブコント』(TBS系)で6回、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)でも2016年にファイナリストとなっている。2018年の『キングオブコント』を最後に賞レースから引退しているが、さらばの森田哲矢は井口に対し「その時期が来ると寂しさはある」と語った。
「賞レースって若手の刹那というか、青春みたいなところあるじゃないですか」
2010年代、さらばはまさに『キングオブコント』の顔役だった。そしてそれは、そのままさらば青春の光というコンビの波乱万丈なキャリアの歴史といえる。
脱竹のきっかけも『KOC』だった
もともとさらばというコンビは、08年に第1回『KOC』の開催が発表され、その大会への出場をきっかけに結成されている。初年度は1回戦敗退だったものの、そのウケに森田が手ごたえを感じたことから正式にコンビとなっている。
10年と11年に早くも準決勝進出。そして12年、初のファイナリストとなり、その大舞台で準優勝という結果を残す。
「これで売れる」と確信したさらばだったが、思うように仕事が入らず、所属事務所である松竹芸能への不信感を募らせていく。翌13年1月、松竹は「これ以上彼らの芸能活動を支えることが不可能」というコメントを発表してさらばを事実上、放逐。上京してフリーとなった矢先に東ブクロが先輩芸人との不倫騒動を起こし、テレビはおろかライブシーンからも見放されることになった。
そんなさらばを救ったのもまた、『KOC』だった。13年の準決勝、さらばはイチウケをさらったものの、森田は当時、ファイナルへの進出を確信することができなかったという。一切の仕事を失い、自分たちがテレビ番組である『KOC』に出してもらえるのかどうか、ウケとは別の要素で排除されるのではないかという不安を抱えていたと、後に語っている。
「出れんねや」
ファイナル進出が決まったとき、そう思ったと森田は言う。大手の松竹とケンカ別れして、先輩芸人と不倫をして、それでも『KOC』には、おもしろければ「出れんねや」。
翌年、その翌年も『KOC』はさらばをファイナルに連れて行っている。
15年大会の明と暗
15年の『KOC』はさらばにとって大きな分岐点となる大会だった。
史上初の4年連続ファイナル進出という輝かしい肩書きを得たが、本番では大いにスベり、審査員の松本人志から「床見てる方がおもろかった」というありがたくないコメントを戴いている。結果は最下位。翌16年には2回戦敗退という屈辱に塗れたが、同年末には初の『M-1』決勝進出で意地を見せている。
17年に『KOC』ファイナルに返り咲くも、結果は3位。ここまで、森田の言う「1000万円へのスーパーリーチ」を『KOC』で5度、『M-1』で1度逃しているさらばは、賞レースからの引退を決意し、18年の『KOC』をラストイヤーと定めて挑むことになった。
ひっそりとした引退
『M-1』であれば、ラストイヤー組にはファンの応援も熱が入るし、会場のウケにもいくばくかのバイアスがかかるところだ。
しかし、この年のさらばは本番まで「ラストイヤー」の雰囲気を盛り上げることができなかった。この年に限って、『KOC』はファイナリストを大会当日の発表とし、例年なら準決勝終了後に判明していたそのラインナップを視聴者が知ることはなかった。当然、出演者にも緘口令が敷かれ、さらばが「ラストイヤー」を宣言できたのは当日の生放送中だった。
前年まで上位5組が進出していた最終決戦も、この年は3組に変更。4位だったさらばは『KOC』と決別することになる。同年、準決勝敗退という結果を持って『M-1』からも撤退している。
賞レースからYouTube活動に比重を移したさらばのその後の活躍は、日本中が知るところだ。
21年、幻の復活
21年初頭、「さらばが『KOC』に出る」というウワサが界隈に回ったことがあった。年初に収録し、年末に放送される『クイズ☆正解は一年後』(TBS系)で、共演者のくっきー! らに煽られた森田が『KOC』への出場を宣言。これをチョコレートプラネットがYouTubeで「戻ってくるらしい」と明かしたことから、さらば復帰のウワサは現実味を帯びることになった。
森田自身も出場するつもりでいたが、結果としては不出場。その理由を翌22年、森田自身がラジオ番組で明かしている。
「いざ出ようかってなってたら、ちょうどブクロのスキャンダルが出まして。で、もうそれどころじゃないっていう」
さらばの転機には、いつだって東ブクロの不祥事がついて回るのだ。
森田と井口の「脳汁」の話
今回の『耳の穴』で、井口はさらばの2人に「じゃあいつ脳汁が出るんだ」と迫り続けた。自身は脳汁を求めて「無意識に『R-1』に出ちゃってる」と語り、賞レースにおける脳汁こそが芸人を続けるモチベーションであると訴えた。
森田はこれに「単独ライブ」と答える。毎年キャパを広げ、全国ツアーを打っているさらば。そのほとんどの会場は即完で、さらばの単独はプラチナチケットとなっている。
「目の前にちゃんと現金払って来た人たちを相手にするってなかなかシビれる」
「めちゃくちゃ怖いからなこれ」
ふんふんと聞いている井口だが、納得している様子はない。井口は単独ライブについて、たびたび「意味がない」「やってる人の気が知れない」と吹聴して回っている芸人だ。
漫才とコント、『M-1』王者と『KOC』最多出場、単独ライブへの考え方、さまざまなコントラストが浮かび上がったこの日の『耳の穴』だった。
(文=新越谷ノリヲ)