アイドルに“いい曲”は必要か?「商業的成功」と「芸術的価値」から考えるドルソンの形
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ミュージシャンをはじめ多くの人が“歌”で自己表現を追求する日本のエンタメ業界。指先ひとつで音楽も歌も半自動的に生まれるこのAI時代で、人間の歌や声が生み出す価値を、声楽家・歌唱指導者である「純子の部屋」純子先生が分析していく本連載。
本連載2人目のゲストとして、関西を拠点に活動する作詞作曲編曲家・星ひでき氏が登場。純子先生が「関西のアイドルシーンでは知らない人がいない」と評価する星氏は、アンリック、くぴぽ、KiMiNiAiTAiなど関西アイドルグループを中心に、矯正ちゃんをはじめとしたタレントなど幅広く楽曲提供を行う他、4人組オルタナティブ・ロック・バンド RobotMeetRoboや、デジタル・ハードコアユニット・BIJŪとしての活動も並行して行うなど、何足もの草鞋を履き、アグレッシブに活躍している。
前編では、関西アイドルの楽曲を裏で支える作曲家・星ひできの異端ぶりに迫りつつ、「AIでは出せない歌唱」を生み出すためのこだわりと情熱を語りあった。後半では、星ひできの音楽人生から、シンパシーを感じ合う二人の共通点が明らかに。音楽の高みを追求するコンポーザー&歌唱指導者が考える、アイドルにとって“いい曲”とは何なのか。壮大な問題に真摯に向き合い、語り尽くした。
きっかけはバイト先閉店?明日を生きるためのコンポーザー道
———お二人がご一緒した作品だと、タレントの矯正ちゃんの音楽名義・kottyの最新楽曲「Yummy!」が一番最新ですね。これまでもさまざまなアーティスト、楽曲を通してご一緒される機会もあったと思いますが、中でも印象的だった出来事などはありますか?
純子 いっぱいあるんですけど、特に私の中で思い出深いのはSTRANGE L∞Pですね。電撃デビュー・電撃解散したアイドルグループなんですが、彼女たちの楽曲は毎回想像を超えてくるんですよね。星さんも楽曲提供されてらっしゃったんですが、アメリカのiTunesランキングのオルテナティブ部門で1位も取ったんですよ。星さんの楽曲はやっぱりアメリカの人たちにも刺さるんや、私やっぱりセンス良いやんって思いました。
星 そんなことなってたんですね。なんとなく聞いた気はするんですが、ちゃんとわかってなかったです。
——星曲、関西を盛り上げてますね
純子 ほんまにそう! あと星さんの歌詞もまた素敵で、文学的でドラマチックな歌詞を書かれるんですよ。なのに、裏側には皮肉やトゲがあって、でも安定した優しさもあって…みたいな。楽曲と同じくらい、歌詞の面でもいろんな色を持ってはる方なんやなと思います。
星 ありがとうございます。
純子 私の想像ですけど、星さんの楽曲は、運営さんの要望を叶えて、さらには増し増しで返してらっしゃるんじゃないかなと思います。例えば「てりやきバーガーお願いします」ってオーダーしたら、金額はそのままやのに、メロンソーダもポテトもついて、さらにはチーズも倍増、みたいな。実際にどうやって作られてるんですか?
星 基本的に、先方には「何かリファレンス(※)はありますか」って聞くようにしてますね。
——— 星さんは個人活動、バンド活動を通して唯一無二のオリジナル楽曲の制作を追求されていらっしゃると思うのですが、リファレンスを出されてそれに寄せていく…というのが嫌に感じることはないんですか?
星 うーん、特に嫌っていうのはないですね。リファレンスはもらったほうが、イメージのすり合わせがうまく行きやすいです。
※楽曲制作やミックスの際に、完成イメージを共有するために挙げられる既存楽曲のこと。
———その方が制作がしやすいと。
星 そもそも、今やってるような作詞作曲・編曲から歌の収録、ミックスもまるごとやりますよっていうスタイルも、9年前くらいにやむにやまれず生まれたものなんです。当時、フリーターのバンドマンだったんですが、バイト先が突然閉店してしまって、これからどうやって生きていったらいいんだ…っていう状況から始まったことなので。
———その経緯、ぜひ詳しく聞かせてください。
星 バイト先がなくなるタイミングで音楽の仕事にシフトしようと思って、最初はクリエイターチームを作ろうとしたのですが、それもうまく機能しなくて。でも仕事はもう辞めちゃってるからどうにかして生きていかなければいけない…。ちょうどその頃、日本橋(大阪市中央区)を中心にソロアイドルが盛り上がってた時期で、当時やっていたバンドを好きだと言ってくれた人に「曲を書いてみない?」と誘ってもらいました。それをきっかけに、お金をいただいて曲を提供する、ということを始めるようになりましたね。
純子 ほんまに一から、しかもアイドルから楽曲提供を始められたんですね。
星 そうなんですよ。だから、暮らしていくには「こんな音楽ができます。だからお金をくださいっていう活動を繰り返していくしかない。むしろ音楽以外のことをここで始めたら負けだ」って思っていたので、とにかくリファレンスを通してどんな要望にも対応したり、当時は経験があまりなかったのですが「レコーディングやミックスも得意です!」ってハッタリかましたり。当時は自分のカラーなんてなかったし、とにかく何でも作るっていう姿勢でした。
あとは、バンドでレコ発とかの経験があったので、CDを作って、そのためにいくらかかって何枚制作して、何枚売ったらペイできるかっていうコンサル的なこともしてましたね。
———コンサルまでしてくれるコンポーザーって斬新なアイデアですね
星 個人活動しているアイドルさんとか、相手は限定されますけどね。バイトしたお金を制作費に当てるのって、本当は良くないじゃないですか。芸術の対価としていただいたお金を次の作品の制作費に充てるほうが絶対に健全なので、そういうのをアドバイスさせてもらうことはありました。
———なるほど。星さんが手がける幅広い楽曲や多様な活動は、「明日を生きるために是が非でもやらなきゃいけない」という試練から養われた知識や対応力から生まれたものだったとは。
星 リアルで仕事が取れない時は、ココナラやクラウドワークスからメールを送りまくったり、ノンクレジットでオケを作りまくったり…今の生活の原体験ですね。
それなので、今でこそ「星さんのテイストで」と言ってもらえるケースもありますが、基本的にはリファレンスがあるかを聞くようにしてますし、後々のイメージのズレやストレスをなくすためにも、なるべく対面で話を伺うようにしています。
純子 星さんってカメレオンみたいで、「こういう曲調の楽曲が欲しい」って言われたら要望通りのものを提供されてますし、グループによって楽曲の色も全然違いますからね。ほんまにすごいと思います。
星 わー、ありがたいですね。それが当時培ったものなのかもしれないです。
共通点は「ビートマニア」 ゲームで培う音楽知識と作曲術
———純子先生も絶賛するように、星曲といえば幅広いジャンルやバリエーションの多さが印象的です。そんな星さんの音楽的ルーツはどこにあるんでしょう?
星 小学生の時にラルク・アン・シエルが好きで、そこからテクノや打ち込み系の音楽が好きになって、中学2〜3年生の頃にスーパーカーやナンバーガールの流行りに合わせてロックや、レディオヘッドとかアンダーワールド、ケミカル・ブラザーズ、プロディジーとか洋楽を聴くようになって、限られたお小遣いでTSUTAYAで借りまくったりHMVで輸入版を買ったりしてました。
純子 私らは借りる時代でしたもんね。
星 ですね。あとは同じ時期にギターを買ってもらって、その時からもう曲を作りたくて仕方がなくて、コピーが全然できないっていう…。
純子 もうそこから!?
星 両親がギターと一緒に教則本をくれたんですけど、そこに「パワーコードを覚えたら曲が作れるよ」って書いてあったので、パワーコードを覚えて、父親の友達からリズムマシンやサンプラーを借りて、使い方がイマイチわからない中で友達とずっと曲を作ってました。高校生になってバンドを組んで自分で曲を作って、そこからバンドマンをやってますね。
———そうなんですね。「バンドで売れたい」みたいな思いは今もありますか?
星 ここ数年「自分は何がやりたいんかな」って思い返したところ、「曲を作りたい」っていうのが一番なんだなって気づきました。昔はバンドで売れたいって思ってずっとフリーターでしたけど、めちゃめちゃ売れたいかと言われるとそうでもないし、売れているバンドもそこまで好きじゃないし。じゃあ何が楽しいのかを考えると、とにかく誰かのため、自分のために曲を作ることが一番楽しいんですよね。なので、売れるというよりも、いろんな人たちとのコラボにチャレンジしてみたいなって思ってます。
あと、ルーツとしては小学校高学年ぐらいから、ゲームセンターの音ゲー「ダンスダンスレボリューション」や「ビートマニア」をめっちゃやってたことも大きいですかね。
純子 ビートマニア、私も鬼やってた!! 私ファースト派なんですよ。
星 僕もめっちゃやりました。 ビートマニアでブレイクビーツやドラムンベースを覚えて、ミニマルテクノを学ぶみたいな。
純子 めっちゃわかるねんけど!裏拍とかもそれで覚えましたよね。コナミ、マジありがとうって感じ。 他にも私はプレイステーションソフトの「パラッパラッパー」が好きすぎて、GREATの上まで上り詰めました。
星 わー、懐かしいですね。 パラッパラッパーの次作に「ウンジャマラミー」っていうのがあるんですけど、「パワーコード覚えたら曲が作れるよ」って書いてあった教則本こそがウンジャマラミーの教則本だったんですよ。
———ウンジャマラミーの教則本があったとは
星 あるんですよ。教則本の最後にウンジャマラミーのゲームの曲の着メロの作り方が書かれていて、それもやりましたね。ゲームはやったことないけど…。
純子:ウンジャマラミーの教則本を選ぶという、まさに親御さんあっての星さんあり、ですね。
星 あはは。今思い返すと面白いですよね。でも今、音楽で飯食ってますけど、教則本はこれしか読んだことがないです。僕は学がないから、純子先生の理論的なところがすごいなって思います。
純子 クラシックって基本を習う学問で、そのベースがあるからどんな楽曲でも教えられるっていうのはあるなと思います。私は21歳の時に音大に入ったんですけど、その時師事していた先生音大の先生にはめちゃめちゃ感謝してます。音大って師弟関係強いから、精神版・戸塚ヨットスクールみたいな感じで、今も震えるくらい怖いんですけどね。
同世代音楽界隈だからこそ生まれるシンパシーが秘訣
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———星さんの楽曲は、勢いがあってキャッチーなハイパーポップ感と、人で歌うことを考えて作られた味わい深いメロディ、そこにロック要素もちゃんと入っている…と感じていたので、ルーツにとても納得しました。
星 あとは、僕は大阪芸大出身なんですけど、大学生時代は周りにアニメ好きが多くて、周囲の勧めで観るようになったのも大きいかもしれません。高校生まではアニメに無縁で、アニメソングのようなポップでキャッチーみたいなものよりも、オルタナティブなものやアンダーグラウンドなものが好きだったんですけど、アニメソングとか電波ソング(2000年代初頭からインターネットを中心に広まった音楽ジャンル。萌え要素と独特な歌詞が特徴)に触れるようになって、今まで聞いたことがない新しい体験ができて、音楽的にも好きだなって思ました。こういう部分は、アイドル楽曲にアウトプットできてるんじゃないかなと思います。
———確かに、まさにアニメのオープニング映像を見ているかのような情緒の揺らぎとか高揚感とかを煽る緩急みたいなものが、星さんの楽曲にはありますよね。この楽曲や歌を色鮮やかにするための「緩急」の付け方というのは、純子先生の指導にもリンクするんじゃないかと思うのですが、指導において意識されていますか?
純子 もちろん意識してますよ。例えば同じ言葉が続く場合、片方はめちゃめちゃ強く歌ったら、もう片方は0.00000001の力で歌って、という指導をすることもあります。これって論理的に捉えて感覚的に出す必要があるので結構難しくて、こういう指導に対してすぐに反応できる子には高学歴な子が多い印象ですが、私は誰にでもわかりやすく、一人ひとりに合わせた説明で伝えるようにしています。
———音楽的素養もマインド面でも自然と似通う部分があって、そこが一緒だからこそ、自然とお互いを理解できたり、楽しめたりする理由だったんでしょうね。
純子 星さんと同じ曲を聴いてきて、年齢的には私よりもお若いですが、同世代音楽界隈みたいな繋がりがあったからでしょうね。ほんまに今回の話にウンジャマラミーなんか出てくると思わんかった。
星 あはは。でも、上の人とのほうが音楽の趣味や話は合うっていうのは昔からありますね。果たして関西で星曲が求められているかは定かではないですけど、僕が書いた曲を好きと言ってくださる方たちも多分、同じような音楽を聴いて育った方やと思います。
純子 そうでしょうね。自然と共通性が生まれてるからこそ、惹かれ合うんやと思います。
アイドルに“いい曲”は必要じゃない? 後世に蓄積される本物の音楽とは
———お二人はたくさんのアイドルを見ていく中で、華々しく成長する姿を見届けることもできれば、どれほど良い楽曲があっても報われず解散するグループも見てきたかと思います。良い曲を作るために頑張っている星さん、そしてより良い曲するために取り組んでいる純子先生ですが、アイドルにとって、生き残るために“いい曲”って必要だと思いますか?
星 僕としては、“いい曲”は別に必要じゃないと思いますね。そもそも、“生き残る”っていうのは何を指すのか、っていうところから考えなきゃいけないですよね。大々的に売れることなのか、それとも細々とでもアイドル人生を続けていくことができることなのか、それによっても変わってくるはずです。
かつ、アイドルに限っていうと、楽曲そのものの良さというよりも、アイドルたちの活動やステップアップしていく姿やそのストーリーの方が重視されると思います。バズった曲があればまた別かもしれませんが、多くの場合は「絶対にその曲が必要であったか」というとそうでもないんじゃないかなと思いますね。
———確かに、アイドルやグループが経験したであろう葛藤や苦悩、思いみたいなストーリーと曲が合致すると、ファンもそこに感情移入できて、その曲が必要とされるようになる、というのもありますよね。純子先生はどうですか?
純子 私は”いい音楽=本物の音楽”やと思ってます。ただ、“いい音楽”は主観的なものであって、“本物の音楽”は構造的・精神的本質に根差しているものだと思うので、いい音楽は必ずしも全てが本物の音楽ではないです。それでも、ジャンルや聞き手によって本物の音楽になりえるっていうのが、いろんな勉強や経験を通してたどり着いた結論です。
そもそも“いい音楽”を考えるためには、「商業的成功」と「芸術的価値」を別軸で考えた方が良いなと思います。
———「商業的成功」と「芸術的価値」ですか。
純子 「商業的成功」という目線で見た“いい曲”とは、時代やジャンルに関わらず、いつどこで誰が聞いてもインパクトを与えるようなもので、ある人にとってはTikTokでバズったキャッチーな8小節が、作品全体として深みや完成度が高くないとしても、“いい音楽”になり得るわけです。
ただ、芸術的目線における“いい音楽”は、音楽的構成、作り手の意図、解釈の深さ、精神性が伴って初めて成立するものやと思います。誠実で、歌詞やメロディに嘘がなく、魂が届く体験がそこにある。でも、シューベルトの「冬の旅」全24曲を、表現・歌詞の読解・技術の三位一体で歌いきる声楽家の芸術行為は間違いなく本物ですが、万人が“いい”と思うとは限らないと思います。
———なるほど。わかりやすいですね。
純子 数年間から突如降って沸いたような、SNSでの数字とメディアが決めたものは芸術制作とは直接関係がないものやと考えてます。商業音楽で世間が注目するのは物語や肩書きであって、実際の中身=音楽そのものではないことが多いと思うので。逆に「売れた」ことで評価がねじれ本質よりも見た目、話題性が先行するものは商業的価値として成功したともいえますけどね。
———その二つが交わることはないものでしょうか?
純子 ありますよ。“いい音楽”と“本物の音楽”は必ずしも一致はしませんが、交わる瞬間があって、その瞬間を教え子たちのステージで何回も体験してきましたから。
そして、いい商業音楽は消費されていき、いい芸術音楽は蓄積されていきます。カラスの「Casta Diva」、ピンク・フロイドの「The Wall」、坂本龍一の「energy flow」のように、音楽として深く作り込まれた“本物”としての重みを持ちつつ、同時に人々の心に“いい音楽”として浸透したものがあるように。
星 「いい音楽」は主観的ってところ、確かにそうですよね。売れるために必要な要素としての楽曲自体は必ずしも要るわけではないと思ってましたが、教え子さんたちそれぞれの環境やストーリー、お客さんの雰囲気やライブ自体の完成度とかいろんな要素が絡み合って見える純子先生ならでは視点ですね。
人それぞれにある“生き残る”のゴールを求めて
———先ほど星さんがおっしゃった「“生き残る”とは何なのか」というのは、かなり大切なキーワードだなと思いました。その捉え方で生き残る手段も大きく変わりますね。
星 みんながずっと芸能界で生き残っているかというと、そうではないじゃないですか。でも表舞台にいなくても、細々と地下で続けている子もいます。そこである程度お金が回って、暮らせるだけのお給料があれば、生き残ってることになりますよね。メンバーそれぞれのゴールによっても、生き残るっていう意味合いは変わると思います。
純子 運営側の資金的な問題も関わってくるでしょうね。ファンとのコミュニケーションの深さを押し出す48グループが登場して、カウンターのようにWACKみたいなキワモノ系が出てきて、それらが飽和しつつあるところでコロナ禍に入って配信での活動が始まって…と続いてきたわけですが、その中でずっと活動を続けているアイドル運営ほど、資金的な疲労が深刻なんじゃないかなと思います。
星:そうですね。お金を回していく、というためにも大きな存在になりすぎていないほうがいいのかなとも思いますけど。精神的にも良い環境かもしれないですよね。
———メンタルの不調でアイドルを辞めてしまう子も少なくないですもんね。
星 そうですね。僕はコロナ後に1型糖尿病になったのですが、病気になるまでは自分はメンタルがめちゃめちゃ強い人間やと思ってたし、バンドマンや芸能関係の人でよく波があって休んだりする人がいますけど、そういう人たちの気持ちが全然わからなかったです。
純子 ほんまにそう。 無遅刻・無欠勤で「休むなんて甘えやんけ!」って思いながら生きてきたけど、40歳になって不調が出るようになってたことで、ようやく今レッスンとか休む子の気持ちがわかるようになりました。
私も潰瘍性大腸炎になってから体の調子が悪くなることが増えて、それまでフットワーク軽く色んなところに行ってたんですけど、それが急にしんどくなりはじめて、ドンキ歩いてるだけで涙が止まらんくなる、みたいなことも。
星 ドンキで涙が止まらないっていうの、めっちゃわかります。
純子 病気になって良かったとは思いませんが、今だからこそ“病む”をわかってあげられる部分も大きいので、病気という経験から得たことで何か支えたり助けてあげられることがあるのであれば、全力を尽くしたいですね。
———アイドルたちが生き残るために、「音楽」は力になれないでしょうか。
純子 運が巡ってきて、そこにいい音楽が合わさればかなり強いと思います。運って、何年、何十年と続けていないと巡ってこないし、逆にそれだけ続けていれば必ず何かしらのチャンスには出会えるのではないかと思います。東京で人気に火がついた子たちの中にも紆余曲折ある中でも負けじと続けて、その結果成功した子もいます。
ただ、それを関東ではなく大阪で、そして星曲でやってほしいなっていうのが理想です!
星 僕自身もそうなってほしいなって思います。
———星さん自身は大阪でやってやるんだ、みたいなこだわりってお持ちですか?
星:いや、特に関西を限定しているわけではないですし、音楽の仕事もアイドルさんのみに絞っているわけじゃないので、声をかけていただければぜひぜひ、というところです。ただ、PCがあればどこでもできる仕事だからこそ、上京してやってやろうという考えではないです。
———本当に真摯にものづくりをしていらっしゃるんですね。
純子 星さんは本物なんですよ。やってるものにしかわからない本気度というものがあって、それは星さんを筆頭に、活躍されている作曲者の方々に感じています。星さんには関東のアイドルグループにも楽曲提供してほしいなって思います。それか清竜人25みたいなグループ作るのもありでは…!?
———それも面白いですね。あとはSTRANGE L∞Pの楽曲もアメリカでランクインしましたし、海外でヒットしたガチャポップ(近年の日本ポップミュージックを表す名称としてSpotifyが提唱)とも親和性があると思うので、星さんの楽曲も海外でヒットしそうな気がします。
純子 ぜひ海外にも打ち出してほしいです。めっちゃ受けると思います。
星 何でもやって行きたいと思っているので、今やっていることを持続させて、頑張っていきたいですね。
純子 ほんまに持続するって大事なこと。我々も今やってる活動を細く長く続けていきたいですね。そしてゆくゆくは美輪明宏、マツコデラックス、コシノジュンコが混ざったようなババアになりたいです。
星 えー、めっちゃいいなそれ。僕もそんなジジイになりたいです。
(構成=宮谷行美)
■星ひでき(ほし・ひでき)
大阪在住のコンポーザー。大阪芸術大学芸術計画学科卒業。フリーランスで関西を中心に様々なアーティストの作詞・作曲・編曲を手がける。自身のバンド”RobotMeetRobo”、”コスメティックラヴァーズではギター、デジタルハードコアユニットBIJU”ではプログラミングとヴォーカルを担当。総フォロワー数100万人超えのインフルエンサー「矯正ちゃん」の楽曲制作や、関西の楽曲派地下アイドルのサウンドをプロデュース。癖のある楽曲やオルタナティブなギタープレイ、キャッチーで親しみやすいメロディが持ち味。また、IDM、プレイクコア、ガバ、ドラムンベースなどクラブミュージックの影響を受けたトラックメイクも特徴としている。
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