CYZO ONLINE > 芸能の記事一覧 > 森七菜、濡れ場にも挑んだ『国宝』で再評価の波

森七菜、移籍トラブルでの失速から完全復活へ 濡れ場にも挑んだ『国宝』で再評価の波

森七菜、再評価の画像1
森七菜(写真:Getty Imagesより)

 吉沢亮が主演する映画『国宝』が観客動員数398万人、興行収入56億円(6月6日の公開から7月13日までの38日間)を突破する大ヒットを記録し、早くも「日本アカデミー賞の大本命」の声が上がるなど社会現象級の話題となっている。そんな同作をきっかけに再評価の波が湧き起こっているのが女優の森七菜だ。

 『国宝』は、芥川賞作家・吉田修一氏の同名小説の実写化。任侠の家に生まれながら、数奇な運命によって歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げる主人公・喜久雄(吉沢)と、彼を引き取った家の息子・俊介(横浜流星)のそれぞれの壮大な生涯を描いている。

 吉沢と横浜は歌舞伎などの所作を一から学び、吹き替えなしで複数の演目に挑んでおり、その見事さは本職の歌舞伎役者が絶賛するほど。「イケメン」イメージが先行する両者の俳優としての評価を大きく高めたという意味でも、絶大なインパクトがあった。

 脇を固める共演陣の熱演も称賛を集めているが、そのなかでもとりわけ評価が急上昇しているのが、一時期落ちぶれる喜久雄を支える歌舞伎俳優の娘を演じた森だ。

 森というと「清純派ヒロイン」のイメージが強いが、今作ではバイプレイヤーの立場で、親に反対されても喜久雄に寄り添う女心を見事に表現。さらに吉沢との大胆な濡れ場にも挑戦しており、SNS上では「森七菜ちゃんがあんな濡れ場を披露するとは……女優魂を感じたわ」といった驚きの声が上がっている。

 業界事情に詳しい芸能記者も森の演技を絶賛する。

「森は大御所歌舞伎役者の娘で、主演の吉沢亮演じる喜久雄のことを慕う彰子を力強く演じており、出番は後半からで、それほど出演シーンが多いわけではないが、しっかりと印象を残しているのは、喜久雄に寄り添う彰子の気持ちを深く理解して演じているからだろう。惜しむらくは、長大な小説を約3時間にまとめているため、彰子の描かれ方が中途半端になっているところ。しかし、そんなことを忘れさせるぐらい森の演技は素晴らしかった」

森川葵、ついにGP帯連ドラ初主演! 「ワイルドスピード」から女優として本格ブレイクへ

移籍トラブルで失速も…大きな成長を遂げていた演技力

 森といえば、2019年に菅田将暉の主演ドラマ『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)の生徒役で注目され、同年に新海誠監督のアニメ映画『天気の子』のヒロイン役として声優にも挑戦。2020年には、NHK朝の連続テレビ小説『エール』で二階堂ふみ演じるヒロインの妹役を好演し、全国区の知名度となった。

 若手トップ女優の座へと順調に進んでいるように見えたが、2021年に所属事務所との移籍トラブルが発生。結果、小規模な事務所から大手のソニー・ミュージックアーティスツに事実上の移籍(エージェント業務提携)となったが、以降は目に見えて勢いが落ちてしまった。

 その原因としては、移籍をめぐるゴタゴタのせいで「清純イメージに傷がついてしまった」などといった点が業界内で挙げられている。移籍トラブルが起きたのは「周囲の暴走」が原因だったといわれるが、本人と関係ないところでイメージダウンし、人気や評価にもマイナスな影響が生まれてしまったようだ。

 しかし、その間にも彼女はもともと定評のあった演技力にさらなる磨きをかけていたようだ。前出の記者は森の演技の成長についてこう評する。

「森は徹底的に脚本を読み込み、共演者の出演作をできる限り観ておくなど、事前準備をしっかりとするタイプで、役柄への理解度の深さは10代の頃から非凡だった。『3年A組』や『エール』などでの好演はもちろん、連ドラ初主演となった2020年のTBS系ドラマ『この恋あたためますか』や、松村北斗(SixTONES)とダブル主演した映画『ライアー×ライアー』(2021年)などで同年代の若者を等身大に演じ、恋愛ドラマでも抜群の演技力を見せた。

 だが個人的に森の成長を強く感じたのは、事務所移籍問題のゴタゴタがあった後の作品。その中でも、2023年に出口夏希とダブル主演したNetflixドラマ『舞妓さんちのまかないさん』と、奥平大兼とダブル主演した映画『君は放課後インソムニア』(2023年)の演技は絶品。自由奔放でありながら、絶妙なタイミングで情感を込めるなど、メリハリの効いた演技に大きな成長を感じた」

 結果、その演技力の成長によって再評価を勝ち取り、勢いを取り戻しつつある状況だ。

助演女優か、主演女優か…再浮上した森七菜が選ぶべき道は

 以前の森は主演級の扱いが大半だったが、ここ最近は『国宝』をはじめ、松たか子が主演した映画『ファーストキス 1ST KISS』や小栗旬の主演映画『フロントライン』など、三番手以降のキャスティングでの熱演が目立つ。

 一部では「このまま助演女優の道を極めたほうがいい」という声もあるが、持って生まれた「ヒロイン感」が強烈な彼女は主演でこそ最も輝くという見方もある。前出の記者は森の才能を絶賛したうえで、このような見方を示す。

「森と仕事をした監督や共演者が口をそろえて言うのが、どんな役やシチュエーションでも見事に溶け込む柔軟性と、表情や立ち居振る舞いにちょっとした変化をつけたり、小道具を効果的に使ったりと、台本にはない表現をさりげなく織り交ぜるアドリブ力の高さ。監督の意図を汲みながらも、それを超えた演技をするので、どんどん役に厚みが出てくるし、それに共演者も触発されて、リアルな反応が生み出される。

 『国宝』や『フロントライン』で助演女優としても優秀であることを証明した森だが、そういう意味では、やはり彼女の真価が発揮されるのは、自分主導で共演者やスタッフを巻き込んでいく『主演女優』の道ではないだろうか。助演として評価されたことで勢いを取り戻し、再び主演女優として輝くことを期待したい」

(文=佐藤勇馬)

池脇千鶴、激変した姿とド迫力演技に反響…転換点となった「女優魂」炸裂の作品とは

北香那インタビュー「今の時代に桐島聡が青春を過ごしていたら、もう少し救えた部分もあったのではないか」

佐藤勇馬

1978年生まれ。新潟県出身。SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。著書に『ケータイ廃人』『新潟あるある』がある。

X:@rollingcradle

最終更新:2025/07/16 09:00