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『ラヴ上等』『ママがもうこの世界にいなくても』…官公庁のタイアップ中止が相次ぐ背景

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NETFLIXリアリティシリーズ『ラヴ上等』

 法務省による『ラヴ上等』とのタイアップポスターに批判の声が上がる中、今度は厚生労働省が10月2日公開予定の川口春奈主演映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』とのタイアップの中止を発表して話題となっている。

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 法務省保護局は更生保護の掲げる「人は変われる。一緒なら」というメッセージに通じるとして、2025年12月からNETFLIXで配信され、今年8月からはシーズン2が配信されている『ラヴ上等』とのタイアップを決定。

 ポスターを作成して全国の更生保護施設などで掲示していたが、シーズン2出演者の「過去に人に火をつけて逮捕されたことがある」といった趣旨の発言がクローズアップされたことなどもあり、一部からタイアップに対して疑問の声が噴出していた。

 法務省保護局は公式サイトで《この作品は、参加者それぞれが過酷な生い立ちや過去の罪など生きづらさを抱えながらも自分と向き合い、葛藤し、他のメンバーや地域の方々との関わり合いの中で少しずつ成長していく姿が描かれており、更生保護が大切にしている『人は変われる。一緒なら』というメッセージとも通じることから、この度タイアップさせていただくことになりました》や《本作品をきっかけに、広く「更生保護」の取組を知っていただき、生きづらさを抱える人々の立ち直りを愛(ラヴ)を持って応援していただけることを願っています》と説明。

 当初は同作とのタイアップを継続する意向を示していたものの、8月21日に「更生保護の意義や役割を広く知って頂き、理解を深める機会になればとの当初のタイアップの意図を全うすることが難しい状況になっている」として取りやめを発表した。番組制作会社のスタッフは語る。

「一部からは『ラヴ上等』の企画、プロデュースを務めるMEGUMIさんや同作の出演者に対する批判の声も上がっていますが、その点に関してはどうかとは思います。『ラヴ上等』はあくまでエンタメ作品であり、作品の好き嫌いはあるにしてもプロデューサーや出演者が誹謗中傷を浴びるのは不憫な気もします。その一方、法務省保護局が『ラヴ上等』をタイアップ相手としてふさわしいと判断したことには大いに疑問ですけどね」

 法務省保護局はタイアップの理由について、同作の内容が更生保護が大切にしている「人は変われる。一緒なら」というメッセージとも通じると説明している。

 社会の中で犯罪や非行から立ち直ろうとする人たちを指導、支援する部局である保護局が「更生保護」を広く世間にアピールしたいといった意図は理解できるが、だからと言ってヤンキーの男女が繰り広げる純愛リアリティショーに、その意義を委ねるのはかなりリスキーにも思える。

 また、生きづらさを抱える人々の立ち直りを愛(ラヴ)を持って応援してほしいというのなら映画にしろ、ドラマにしろ、愛を描いたもっとふさわしい作品が他にもあるはずで、ポスタービジュアルや構成自体も更生保護をアピールするものとしては違和感があり、“NETFLIX 独占配信中”といった宣伝の文言まで掲載されているのも然り。ここまで騒ぎが大きくなった以上、保護局がタイアップを取りやめる結論に至ったのも自然の流れだろう。

 さらにここに来て、今度は厚労省が映画「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」とのタイアップ企画を中止したわけだが、こちらに関しても以前からタイアップに対する疑問の声が相次いでいた。

 同映画は、21歳でステージ4の大腸がんを宣告され、抗がん剤治療を中断して子供を産み、24歳で亡くなった遠藤和さんが亡くなる10日前まで綴っていた日記が原作で、今年10月の公開を控えている。

 厚労省は今年2月に作成したAYA(Adolescent and Young Adult)世代(15~39歳)のがん患者に知ってほしい支援制度やサービスについてまとめたパンフレット「15歳~30歳代でがんと診断されたあなたへ がんの治療と暮らしを支える制度ガイド」の普及を目的として同映画とのタイアップを決定。

 8月19日に制作したポスターを各都道府県、都道府県がん診療連携拠点病院を中心としたがん分野の関係団体等に掲出することを告知したところ、がんと闘っている患者やその家族らから疑問や反発の声があがっていた。

 そんな中、厚労省は同月24日に公式サイトで同映画とのタイアップの中止を発表し、「本タイアップによる情報発信によって、がんと向き合っておられる患者さんやご家族等の皆様に対し、不快な思いをおかけしましたこと、心より深くお詫び申し上げます」と謝罪したが、前出の番組制作会社スタッフはこう話す。

「がんと闘病中の患者やその家族からすると、ポスターを見ることで死や病状の悪化を想起させられる可能性もありますからね。『デリカシーや気遣いがなさすぎる』といった声が上がるのも頷けます。もちろん、タイアップした映画自体に罪はなく、これまで同作や川口さんら出演者に批判の矛先が向くような流れにはなっていませんが、公開前から本意ではない形で注目を集める格好とはなりましたよね」

 法務省、厚労省のタイアップ案件が立て続けに世間の物議を醸しているが、官公庁によるタイアップを巡る騒動は最近だけの話ではない。スポーツ紙の芸能担当デスクは振り返る。

「09年に覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された酒井法子さんが、その1年ほど前に最高裁判所が企画・制作した裁判員制度広報用映画『審理』で主演を務めていたことが注目を集めたこともありました。また、過去に“一日警察署長”を務めていた人気アイドルが約2年後に飲酒運転によるひき逃げ事故を起こして逮捕されたこともありましたよね。後者の事故に関してはさすがに警察当局も予想はできなかったでしょうけど、前者については逮捕からのスパンがわずか1年程ということで『なぜ、数多いる女優の中から彼女を主演に起用したんだ?』や『キャスティングする前に素行調査とかしなかったのかな?』といった疑問の声も当時は聞かれました」

 そもそも、官公庁によるドラマや映画、芸能人とのタイアップはどのような流れで決まるのだろうか?前出の番組制作会社スタッフは明かす。

「タイアップ先を公募したり、直接オファーを出して交渉したり、逆に作品の制作サイドや芸能人サイドから売り込みがあったりと場合によってまちまちですね。一日警察署長に関しては委嘱する警察署の広報や地域課が芸能人や著名人の人選をし、所属事務所などを通じて直接オファーすることが多いです。他方、官公庁のタイアップも基本同様ですが、テレビCMやイベントなんかが絡んだりと大きな予算が動くケースは、大手広告代理店やその関連会社、仲介業者が間に入るパターンもあります」

 一括りにタイアップと言ってもその内容や予算、規模感によって内情はさまざまなようだが、先の番組制作会社スタッフはこう続ける。

「大手広告代理店なんかが仲介に入る際にはリスクヘッジとしてタイアップ先の事前のリサーチなんかはある程度はするでしょうけど、最終的な判断を下すのはあくまで広報などの官公庁の担当部署です。ネットやSNSの普及により今は世間の疑問や批判の声が顕在化しやすくなっています。昭和や平成の頃と同じような感覚で簡単に考えていると、炎上など大きな騒動に発展しかねませんよね」

今回の2つの騒動を教訓として、官公庁によるエンタメ作品や著名人とのタイアップについてはこれまで以上により慎重な判断を求めたいところだ。

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(取材・文=三杉武)

三杉武

早稲田大学を卒業後、スポーツ紙の記者を経てフリーに転身し、記者時代に培った独自のネットワークを活かして芸能評論家として活動。「AKB48選抜総選挙」では“論客”の一人とて約7年間にわたり総選挙の予想および解説を担当する。

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最終更新:2026/08/28 22:00