生稲晃子参院議員、靖国神社参拝の大誤報を配信した共同通信と“オールドメディア”の問題点

共同通信社が12月5日、自民党の生稲晃子参院議員が2022年の終戦の日に靖国神社を参拝したと誤って報道した問題で、編集局長ら関係者6人を同月4日付で懲戒処分にしたことを発表した。
同社は22年8月15日、他社の情報の裏付けを取らないままうのみにし、生稲氏が靖国神社を参拝したと配信。当時、まったく問題視されていなかったが、今年11月に生稲氏が日本政府代表として出席した新潟・佐渡市の「佐渡島の金山」の労働者追悼式に韓国政府が参加しなかったことをきっかけに大誤報だったことが発覚してしまった。
「まさか共同通信も2年以上も経過して、当該記事を蒸し返されるとは思わなかっただろう。しかし、誤報により国際問題にまで発展。いくら生稲氏本人に謝罪したところで決して許される問題ではなくなってしまった」(全国紙社会部記者)
同社は処分理由について、《取材協力していた他社の記者の情報を「裏付けを取らないまま記事化していた」》、《先月行われた世界文化遺産「佐渡島の金山」の労働者追悼式に生稲氏が出席した際に韓国政府関係者が参加を見送るなど「日韓外交に影響した」》としている。
同社によると、22年当時のニュースセンター長は減給、政治部長は出勤停止3日、記事を確認した当時の政治部次長ら2人をけん責、記事を書いた記者ら2人に戒告処分を下したというが、誤報が配信されたのにはそれなりの理由があったようだ。
「当時、人出が足りず、現場にはほとんど政治取材をしたことがない年配の記者が派遣されたそうです。さらに、コロナ禍で参拝した議員たちはマスクをしており、ハッキリと顔を確認することができなかった。結果、靖国神社を参拝したのは生稲氏ではなくほかの自民党の女性議員だったにもかかわらず、その記者は『あれは生稲議員だ!』と他社の情報をうのみにして記事を配信するに至ってしまったとか」(同全国紙社会部記者)
昨今ではテレビ局や新聞社、出版社など既存のメディアはまとめて“オールドメディア”と呼ばれ揶揄されるようになってしまった。最近ではスポーツ紙の「東京中日スポーツ」が来年1月31日付けで紙印刷を休止し2月1日から電子版へ全面移行、夕刊紙「夕刊フジ」は1月31日(2月1日付)の発行をもって、電子新聞を含めて休刊することをそれぞれ発表している。
“オールドメディア”の苦境が叫ばれて久しいが、スポーツ紙の記者は明かす。
「それでもテレビ各局の社員は相変わらず高給ですし、部署異動はあるものの、地方への異動はほとんどないからね。他方、共同通信や時事通信、全国紙やスポーツ紙なんかは若いうちは地方の支局や通信局からキャリアをスタートさせるのが一般的。それが嫌で最近は20代で辞めてしまう者も多く、現場でバリバリと仕事をこなす若い有能な記者は不足傾向にあります。実際に今回の共同通信社の誤報の件も、政治関係の取材経験がほとんどない記者を現場に派遣したのが原因で、まさに人材不足のしわ寄せと言ってもいいでしょう」(スポーツ紙記者)
メディア事情に詳しい芸能ジャーナリストの竹下光氏もこう語る。
「2021年にはインターネット広告費が新聞、雑誌、ラジオ、テレビのマスコミ4媒体の広告費を上回るなど、“オールドメディア”を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。業界が斜陽となり人気がなくなれば新たに入って来る人材の質も落ちるでしょうし、優秀な人材が他業種に移るのも自然の流れです。こうした問題は今後ますます顕在化するのではないでしょうか」
“オールドメディア”が時代の流れに抗い復活を果たすことはできるのだろうか。
(取材・文=編集部)