CYZO ONLINE > 社会の記事一覧 > 日進月歩のAI、教育現場でどう使う?
教育ジャーナリスト・後藤健夫の「Fランクから消滅大学になる日」教育ビジネス論#13

日進月歩のAI、教育現場でどう使う? 「 音声」「探究」「虎ノ門文学」で試す実装のヒント

日進月歩のAI、教育現場でどう使う? 「 音声」「探究」「虎ノ門文学」で試す実装のヒントの画像1
イメージ(写真:Getty Imagesより)

 Googleが開発した、データ解析AIアシスタント「NotebookLM」が話題となっている。

 このNotebookLMは、アップロードしたデータに基づいて、AIが質疑応答機能、要約、アイデア出しを支援するものだ。そこに「音声概要」という機能が新たに装備された。これまでは英語のみの対応であったが、先日、日本語にも対応するようになった。男女の掛け合いでポッドキャスト風にデータの概要をまとめてくれる。なかなか親しみやすい解説だ。

 私は、このサイゾーオンラインの連載記事や過去の講演などを「音声概要」にして楽しんでいる。


 たまたまかもしれないが、私の「音声概要」では、最後にリスナーへ「問い」を投げかけてくれることが多い。この問いのセンスがなかなか良く、大変気に入っている。

「AI社会に文系はいらない?」

 しかし、まだまだ誤認識も多い。主語を明確に把握できないことで、間違った展開になることもある。そこで、私は、この誤認識をする特性を活用して、書いた原稿を「音声概要」にして、原稿の内容がうまく訴求しているかを確認するようになった。うまく認識してもらえないところに言葉を補ったり置き換えたりするのだ。

 こうしたAI技術は日進月歩だ。これらにどう付き合っていくか。そして、社会システムや生活にどう「実装」していくかを考えていきたい。


 そのためには、まず、自分で使ってみることだ。使い始めると、いろいろな場面で活用できそうなアイディアが浮かぶ。前述のように、原稿の推敲に使うことは、まさにそうだ。

 では、教育現場ではどんな活用が考えられるだろうか。

 かつて話題となった「反転授業」には、大いに活用できるだろう。授業内容を事前に音声でわかりやすく、しかも親しみやすく伝えることで、生徒に概要をあらかじめ把握してもらう。こうした準備を前提にすれば、授業本番ではディスカッションを中心とした展開にも効果的に活用できるのではないか。


 文部科学省には、あの長くてわかりにくく読む気にならない「虎ノ門文学」のような学習指導要領を、音声概要にまとめてもらいたい。教科科目の単元を、教員用、学習者用、それぞれに音声概要を用意してくれれば、教員は教える内容が明確になるし、学習者はなにを学ぶべきかがわかり、学びやすくなるのではないか。

 高校では「総合的な探究の時間」で課題解決を扱うことが多くなっているが、「探究学習」への取り組みは教員の理解度によってさまざまであり、それにより高校の「探究格差」が生まれている。


 こうした状況の打開に、この音声概要が大いに役立つはずだ。いくつものアイディアがあるが、書き始めると長くなるので、回をあらためて詳述したい。

 大学のオープンキャンパスでもいろいろと使えるだろう。オープンキャンパスのアピールはもちろん、模擬講義などの催しについても、その概要を魅力的に伝える手段として活用できるだろう。

 話は少し逸れるが、前述のとおり、学校によっては「探究格差」があるにもかかわらず、模擬講義で「問いを立てましょう」などと展開してしまうと、大きくすべるリスクがある。高校生の現状を把握していない大学教員が、ついやってしまいがちなミスだ。もっとも、こうした点は音声概要の中では修正が難しいため、事務局や学部長といった関係者が、事前に“怪しそうな教員”へ丁寧に説明し、認識を共有しておく必要がある。

 大学のオープンキャンパスは、受験生に直接語りかけて大学を理解してもらう場だ。どう展開するかで募集に大きく差が出るものだ。特に、この少子化による「全入化」時代には、大学選びの大きな鍵になる。うまくAIを活用したいところだ。


 そうして大学が積極的に使うようになれば、学生は安易なレポート作成などにAIを使うのではなく、学びを深めるための手段として定着していくだろう。

(文=後藤健夫/教育ジャーナリスト)

米国では高校生がハマるオンラインカジノ
ケジョベンチャー代表「科学✕アート」

後藤 健夫

コラムニスト/教育ジャーナリスト/大学コンサルタント
南山大学を卒業後、学校法人河合塾、早稲田大学、東京工科大学等に勤務。現在、大学の募集戦略支援や高校の大学進学支援、「探究学習」のカリキュラム・教材開発、授業改善等に従事。日本経済新聞に「受験のリアル<大学編>」を連載するなど、コラムや記事を執筆。

FACEBOOK gototakeo
mixi2 OKETA
Instagram oketa

後藤 健夫
最終更新:2025/05/12 16:20