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米・合法化で拡大する未成年の大麻摂取 「大人の事情」が命の危険生む

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イメージ画像(写真:Getty Imagesより)

 大麻の娯楽目的での使用が広がる米国で、未成年による大麻の摂取が大きな問題になっている。高校生らティーンエージャーが興味本位で摂取するほか、小中学生が大麻入りグミを菓子だと勘違いして食べてしまうケースが増えている。呼吸困難など深刻な健康被害に見舞われるケースもあり、対策は急務だ。しかし、子どもの気を引くようなパッケージの大麻商品は町にあふれ、規制の動きは鈍い。子どもたちが大麻摂取で病院に運ばれるのが日常的な光景になっている地域もある。

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学校や卒業パーティーで中毒症状 見た目は菓子、気軽に口に

 テキサス州ダラスの北にあるプロスパーで5月17日未明、高校の卒業パーティーに参加した複数の生徒が体調の悪化を訴えた。幻覚など異常な行動を見せたほか、嘔吐してのどを詰まらせる生徒もいて、パーティー会場はパニックに陥った。警察官と救急隊が駆けつけたところ、9人が体調不良を訴え、うち7人は症状が深刻だったため、病院に搬送された。

 パーティーは地域の3つの高校の生徒が集まり、徹夜で行われる予定だった。その後の調べで、パーティーに参加していた男子高校生2人が、大麻の精神活性成分「テトラヒドロカンナビノール(THC)」が含まれるグミを地域の店で購入し、参加者に配っていたことがわかった。体調を崩した生徒は、そのグミを食べていた。テキサス州では大麻の娯楽使用は禁止されており、男子生徒2人は規制薬物の配布などの容疑で逮捕・起訴された。

 大麻の娯楽使用が合法化されているニューヨーク州では、中学校で生徒が大麻中毒の症状を訴えた。3月3日午前、ニューヨーク市から車で2時間ほどのモリチェスの中学校で、13〜14歳の生徒12人に嘔吐などの症状が見られた。救急隊がかけつけ、このうち11人を病院に搬送した。

 いずれもクラスメートから大麻の成分が含まれるグミをもらい、食べたという。学校側は生徒のプライバシー保護を理由に詳しい状況を明らかにしていない。

児童、幼児は自宅で入手 病院搬送「日常茶飯事」の地域も

 米国では、より幼い子どもが大麻成分入りの菓子を摂取するケースが増加している。米国小児科学会の会報「Pediatrics」に掲載された2023年の研究によると、6歳未満の子どもが誤って大麻成分入りの製品を摂取した件数は、2017年で207件だったが、2021年には3,014件に増えた。健康被害を訴えた子どもの半数以上は2歳と3歳の幼児で、ほとんどが自宅で大麻食品を口にしてしまっていた。

 カリフォルニア州では2023年10月、ハロウィンの行事に参加していた少なくとも2人の児童に、人気のチューインキャンディー「スターバースト」に似た包装の大麻成分入りキャンディが配られた。それを食べた児童のうち1人が体調を崩し、病院で医療処置が施された。

 2023年11月には、アイオワ州で4歳児が大麻成分入りのチョコレートバーを食べて病院で治療を受けた。翌月、子どもを危険にさらした容疑などで父親が逮捕・起訴されている。

 ミシシッピ大学メディカルセンターの毒物専門の救急医であるデイビッド・ヴェアリエ博士はUSAトゥデイの取材に対し、大麻成分の入った食品を子どもが摂取した場合の症状について「精神の抑うつと眠気、呼吸数の低下がみられる」と話している。

 呼吸障害は生命の危機に直結する。ニューヨーク・タイムズが8月10日に報じた記事によると、呼吸困難など生命を脅かす結果につながる中毒症状の報告事例は、2009年にはわずか10件だったが、2024年は620件を超え、その大半は子どもやティーンエージャーだったという。このうち人工呼吸器を必要とした症例は100件を超えた。

 ニューヨーク・タイムズはペンシルベニア州フィラデルフィアの毒物管理センターを取材しているが、同センターの担当者は、幼い子どもたちがマリファナを摂取して病院に運ばれるケースが「ほぼ日常茶飯事になっている」と話している。

連邦は「違法」、州は「合法」 規制の動き鈍く

 大麻の成分が含まれる食用にはグミのほか、チョコレート、ドリンク、チップス、クッキーなどがあり、子どもたちの手が届くところで販売されている。

 米連邦取引委員会(FTC)と米食品医薬品局(FDA)は2023年7月に、市販のスナック菓子に似た包装で大麻食品を販売した6社に対し、販売停止命令書を送付した。

 しかし、強制力はなく、マーケティングと製品パッケージの見直しを強く推奨することしかできないのが実態だ。

 米国では、大麻は連邦レベルでは違法だ。合法化は州レベルでのことで、連邦政府は事実上、州の決定を見逃している。このため、連邦政府として強い規制には踏み込めない。

 米国で大麻が合法化されているのは24の州と2地域にのぼる。大麻の取り締まりをしなくすることで、凶悪事件に警察の力を集中させることができることと税収アップが合法化の主な狙いだ。

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(文=言問通)

 

言問通

フリージャーナリスト。大手新聞社を経て独立。長年の米国駐在経験を活かして、米国や中南米を中心に国内外の政治、経済、社会ネタを幅広く執筆。

最終更新:2025/08/27 09:00