毎月およそ1000件の滞納が発生、孤独死も……元・家賃保証会社社員が語る壮絶な現場

1月16日、東京都杉並区で住宅明け渡しの強制執行手続き中だった執行官ら2人が刺され、家賃保証会社社員の小栗寿晃さんが死亡する事件が起きた。
逮捕された職業不詳の山本宏容疑者は、2人を刺した後、「死のうと思って、ベッドの上に置いたトイレットペーパーにライターで火を付けたが、耐え切れず外に出た」と供述している。
この事件をきっかけに、世間の注目を集めたのが「家賃保証会社」という仕事の実態だ。彼らは、常に危険と隣り合わせの業務に従事しているのだろうか?
そこで、大手消費者金融会社から家賃保証会社へ転職し、長年にわたり管理・回収業務を担当してきた0207(にがつなのか)氏に話を聞いた。
サラ金よりも家賃保証会社のほうが取り立ては厳しい
家賃保証会社における「管理」や「回収」の仕事とは、家賃を滞納した入居者に対して督促を行い、家賃保証会社が立て替えた(代位弁済した)家賃を回収する業務を指す。
「私は14年くらい前に消費者金融を退職しました。私が勤めていた会社では、その頃にはすでに、債務者宅への訪問督促はあまり行わなくなっていました。そして、私は現在、信販会社で働いていますが、訪問による督促は基本的に行いません。そういう、ある種の『放置』が選択できるのは、延滞客には追加で貸し出しを行わないため、それ以上の『元金』が増えないからです」(0207氏、以下同)
当然ながら、消費者金融においても回収に充てられる人員には限りがある。わざわざ訪問してまで督促を行うのは、費用対効果の面であまりにも非効率だという。
「一方で、家賃保証会社の場合、延滞客が部屋を使用し続けている限りは新たな家賃が発生します。つまり『元金』が増え続けます。これは許容できません。だから、訪問しての退去交渉や、いわゆる『夜逃げ』のケースでは、室内残置物を撤去して部屋の明け渡しを完了させることも必要になります」
管理・回収の業務は、単なる督促にとどまらず、安否確認の意味合いも強い。「家賃滞納し一定期間、部屋の出入りがない」といったケースでは、警察官とともに室内へ立ち入ることもある。
最悪の場合、孤独死もあり得る。通常、遺体の第一発見者となった場合は、対応に半日ほど要する。しかし、警察官が先導する形で同行していれば、拘束時間はおよそ1時間半程度で済む。そのため、警察の同行は業務上の“レギュレーション”として定着していたという。
「毎月5日くらいから、家賃の滞納状況が判明します。ある時期の私の担当エリアでは、毎月およそ1000件の家賃滞納が発生していました。ほとんどは電話・SMS(ショートメッセージサービス)と通知送付だけで対応が終わります。ただ、月の下旬まで支払いや連絡もない延滞客宅には訪問します。3日間で70件ほど回ります。それが通常業務の流れでした」
入居者は居留守を使うこともあれば、支払いの目処が立たずに部屋に帰ってこないこともある。中でも印象的だったのが、在留外国人による夜逃げだという。
「特に卒業シーズンの前後は、無断でいなくなってしまうケースがよくありました」
夜逃げされた部屋の残置物を撤去し、明け渡しを行うには、本来であれば裁判手続きが必要となる。しかし、裁判手続きを経ない明け渡し作業は、ほかの家賃保証会社でも珍しくないという。0207氏は、もっとも多いときは1カ月間で10数件のそうした明け渡し作業を行っていた。
「私は毎月たいてい2~5件ほど、夜逃げされた部屋の残置物を撤去していました。どこの弁護士に聞いても『夜逃げですか? それなら残置物は撤去していいですよ』とは言わないと思います。『泥棒とどこが違うのか?』と問われたら、契約書に残置物を撤去しておくという項目が一応あるくらいかもしれません。そして、それが本当に夜逃げなのか、実のところ分かりません。延滞客本人にだってわからないかもしれませんね。部屋の状態や、それまでの経緯、延滞客の人柄などから、後々トラブルにならないと判断した場合に、明け渡し作業を実行していました。後から訴えられたことは、私は一度もありません」
くれぐれも、家賃の滞納には注意したい。
(文=伊藤綾、取材・編集=サイゾーオンライン編集部)