CYZO ONLINE > 社会の記事一覧 > にわかコンサルの栄枯盛衰

補助金3000万円で報酬は数百万円? 倒産寸前の会社を支援してきた専門家が明かす“にわかコンサル”急増のワケ

  • X(Twitter)
補助金3000万円で報酬は数百万円? 倒産寸前の会社を支援してきた専門家が明かす“にわかコンサル”急増のワケの画像1
「コンサル栄えて、国滅ぶ」とも言われるが、いま苦境に立たされているのは「補助金申請代行」を主力とするコンサルだ。(写真:Getty Imagesより/写真はイメージ)

「経営のプロ」であるはずのコンサルタントが、相次いで市場から姿を消している。

 帝国データバンクによると、2026年1〜5月に発生した経営コンサルティング事業者の倒産・休廃業・解散は累計242件。前年を約1割上回るペースで推移しており、年間では2000年以降最多となる600件超が市場から退出する可能性もある。国内市場は4兆円を超えているにもかかわらず、足元では明暗がくっきり分かれ始めた。

 コンサルの倒産と聞けば、戦略系やIT系の競争激化を思い浮かべる人もいるだろう。だが、調査で目立つとされたのは、行政向け書類の作成など「代行業」に依存してきた事業者だ。

 コロナ禍に広がった補助金申請支援も、審査の厳格化や参入増、需要の一巡によって曲がり角を迎えている。

 倒産や借金、資金繰りに悩む経営者を17年間で2000社超支援してきた経営コンサルタント・高橋健一朗氏は、淘汰されている事業者の多くを「補助金申請代行をメインとするコンサル」と見る。

 ただし、危ういのは彼らの経営だけではない。甘い営業文句に乗り、「補助金が取れるなら」と新規事業へ踏み出した中小企業にも、そのしわ寄せが及んでいるという。

3.5兆円「リユース市場」の現在地

数百万円の報酬が生んだ“にわかコンサル”

 補助金コンサルが一気に増えた背景には、コロナ禍で打ち出された大規模な企業支援策がある。事業再構築補助金など、投資額が数千万円に及ぶ制度も登場し、申請を支える業者に大量の案件が流れ込んだ。

 高橋氏によれば、報酬は着手金に加え、採択額の10〜20%ほどを成功報酬として受け取る形が広く見られたという。仮に3000万円が採択されれば、報酬は数百万円になる。案件を数多く抱えれば、短期間で売り上げを伸ばせる計算だ。

「コロナ禍では、数千万円から億円単位の補助金まで用意されました。専門資格を持たず、経営支援の経験が乏しくても、申請書作成の型を覚えて参入する事業者が増えたのです。異業種や独立直後のフリーランスも、『稼げる仕事』として集まってきました」(以下、「」内コメントは高橋氏)

 もちろん、補助金申請の支援そのものに問題があるわけではない。複雑な制度を読み解き、事業者の負担を軽くする専門家は必要だ。

 ところが、採択される書類を作る能力と、事業を軌道に乗せる能力は同じではない。採択後の交付申請までで仕事が終わる業者が増えた結果、「経営コンサル」の看板と実際の支援内容に大きな隔たりが生まれた。

生成AIが暴いた「代筆コンサル」の限界

 補助金申請の支援は、採択された場合に支払われる成功報酬が売り上げの大きな割合を占める。裏を返せば、審査に通らなければ予定していた収入は得られない。

 コロナ禍の補助金バブルを追い風に、従業員を増やしたり、広いオフィスへ移転したりした会社も多かった。ところが、案件数や採択件数が減っても、人件費や家賃といった固定費はすぐには減らせない。急拡大した会社ほど、売り上げが落ち込んだ際の負担は重くなる。

「補助金バブル期には、大量の案件を処理するため、積極的に人を採用した会社が少なくありません。しかし、補助金の予算や需要が縮小し、審査も厳しくなると、見込んでいた成功報酬が入らなくなります。それでも、人件費や家賃は毎月発生するため、やがて手元資金が尽きてしまうのです」

 そこへ、生成AIの普及も重なった。もっとも、「AIがコンサル会社を倒産させている」と考えるのは早計だ。帝国データバンクも、生成AIによる業務の代替が直接の倒産理由となった事例は、現時点では確認されていないとしている。

 とはいえ、資料の整理や申請書のたたき台は、生成AIを使えば短時間で作れるようになった。文章を整えることだけを強みにしてきた業者にとっては、高額な報酬を得る根拠が弱くなっている。

 一方、顧客の経営課題を把握し、事業計画の実行まで支援できるコンサルタントの価値は残る。生成AIの登場によって、経営支援まで担える人と、書類作成にとどまる人との差が、より明確になったともいえる。

「申請書を作るだけでは、代筆業の域を出ません。事業の中身を磨き、実行まで支援できなければ、コンサルタントとしての価値は示せないでしょう。生成AIは倒産の主因ではなく、もともと脆弱だったビジネスモデルを浮き彫りにした存在だと思います」

「採択されたから安心」が会社を壊す納得の理由

 補助金コンサルの苦境以上に深刻なのが、支援を受けた企業側に残る傷だ。

 補助金が使えると聞けば、「国が認めた事業だから安心だ」「自己負担が減るなら、失敗しても痛手は小さい」と感じる経営者もいる。採択通知を、事業の将来性に対する合格証のように受け止めてしまうのだ。

 しかし、審査を通ったからといって、顧客が集まるとは限らない。売り上げや利益が約束されるわけでもない。確認されるのは制度の目的や審査基準に沿った計画かどうかであり、実際の商売を成功させる責任は企業側に残る。

 資金繰りにも落とし穴がある。補助金は原則として事業終了後の後払いで、事業者はいったん補助対象となる経費を全額立て替える必要がある。採択後に設備を発注できても、入金までの現金が足りなければ会社は持たない。

「補助金を受け取れることと、会社に今すぐ現金が入ることは別です。先に設備代を払い、運転資金も用意しなければなりません。売り上げが立つ前に資金が尽きれば、採択されていても経営は行き詰まります」

 コロナ禍には、本業が苦しくなった企業が、グランピング施設や無人販売所、飲食店などへ参入する例もあったという。建物や機械は補助金で整えられても、集客方法や現場の人材、リピーターづくりまでは付いてこない。開業後には家賃や人件費、広告費、修繕費が容赦なく発生し続ける。

 初期費用の一部が補助されるなら、挑戦のハードルは下がる。それ自体は制度の意義でもある。ただ、経験も顧客基盤もない業種へ飛び込み、赤字が続けば、最後に残るのは立派な設備と借金、毎月の維持費だ。

「補助金が取れますよ」から話を始める事業者に要注意

 それでは、経営者は補助金コンサルをどう見極めればいいのか? 高橋氏が警戒するのは、会社の財務や本業との相性を精査もせずに、「この制度が使えます」「採択されたら、この事業を始めましょう」と勧めてくる業者だ。補助金が営業商品の中心に置かれ、事業は申請するために後から選ばれている。

 本来、先に確かめるべきなのは、その事業を補助金なしでも実行したいかどうかである。不採択でも資金を用意できるのか、入金まで立て替えられるのか、開業後の固定費を何カ月負担できるのか。売り上げが計画を下回った場合の撤退基準まで話せる相手なら、少なくとも採択だけをゴールにはしていない。

「悪い使い方は、『補助金がもらえるから、この事業をやる』と目的と手段が逆転することです。自己資金だけなら絶対にやらない事業へ手を出せば、現金を失うだけでなく、不要な借金や発生し続ける維持費まで背負います」

 よい使い方は、その逆だ。すでに必要性と勝算を見いだしている投資に対し、実行を早めたり、資金繰りに余裕を持たせたりする。その手段として補助金を組み込むのである。

「万が一、不採択でも銀行融資や自己資金でやり遂げる。そのくらい必要と判断した事業に使うのが本来の姿です。『補助金が取れたら始める事業』ではなく、『補助金がなくてもやる事業』なのか。申請する前に、まずそこを考えてほしいです」

 補助金は決して、弱い事業を強い事業へ変える魔法のカネではない。申請書より先に問われるのは、その投資を自社の責任で続けられるかどうかである。

1000万円層が感じる“睡眠と仕事”のリアル

(取材・文=西脇章太/にげば企画)

西脇章太(にげば企画)

1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、心理学、ゲームなど。
公式noteはこちら

西脇章太(にげば企画)
最終更新:2026/08/08 18:00