【やっぱり】就活生の8割超が生成AIを利用! 誰でも「立派なES」が書ける時代に求められる“真のガクチカ”

いま、就職活動で生成AIの存在感が急速に高まっているのをご存じだろうか?
「キャリタス」が2027年卒の学生1098人を対象に行った調査では、就職活動で生成AIを「よく使っている」「使ったことがある」と答えた学生は計84.3%。用途では「エントリーシート対策」が75.9%で最も多かった。
かつては時間をかけて考え、書き、調べていた作業も、いまや生成AIを使うことで大幅に効率化できる。就活生にとっては、すでに珍しいツールではなくなりつつある。
その広がりは、採用する企業側にも新たな課題を突きつけている。生成AIのビジネス活用支援を手がける株式会社SHIFT AIが、全国の採用・人事担当者503人を対象に行った2026年の調査では、採用活動でAIを活用している割合は53.9%。新卒採用担当者では72.0%に達した。
生成AIが当たり前になった就活では、これまで評価されてきた能力の意味さえ変わる可能性がある。では、学生たちは実際にどのようにAIを使い、企業はその変化をどう見ているのか。取材から見えてきたのは、便利さだけでは語れない、“新しい就活の姿”だった。
採用担当の76%が「AIで書いた」と感じる
就活生側だけでなく、採用担当者も生成AIの利用を実感している。SHIFT AIが新卒採用担当者を対象に行った別の調査では、76.0%が応募書類について「生成AIを使っていると感じる」と回答した。
AIで作成されたと感じる理由としてもっとも多かったのは、「表現は洗練されているのに、具体的なエピソードや数字が伴っていない」だった。
採用活動そのものにもAIは入り込んでいる。AI活用者に利用工程を聞くと、最も多かったのは「応募書類の一次スクリーニング・自動評価」だった。
以前なら、読みやすく整理されたエントリーシート(ES)を書くこと自体がひとつの評価材料になった。だが生成AIを使えば、ある程度整った文章は短時間で作れる。
株式会社SHIFT AI代表取締役の木内翔大氏は、採用側にも見方の変化が必要になると話す。
「生成AIを使えば、一定水準のESを作ること自体は難しくありません。そうなると、文章がきれいかどうかだけで候補者を見るのは難しくなります。採用する企業も、書類の完成度だけではなく、その内容について本人がどこまで自分の言葉で説明できるのか、面接で経験を掘り下げたときに何が出てくるのかを見る必要性が高まっていくと思います」
AIを禁止すれば解決するわけでもなさそうだ。SHIFT AIが生成AIを利用した経験のある学生280人を対象に行った別の調査では、志望企業がAIの使用禁止を明言した場合でも、64.6%が「一部活用」または「フル活用」すると回答している。
すでに採用現場では、「AIを使ったか」を見抜くことよりも、その先をどう評価するかが問われ始めているのだそう。
「全部AI任せ」ではない東大生の使い方
実際、学生はどのように生成AIを使っているのか? 東京大学文学部に通うHさんは、就職活動中、ほぼ毎日のようにChatGPTを開いていた。
「最初から全部書かせるというより、一度自分でラフを作っていました。それをChatGPTに入れて、『興味をそそられる文章になっているか、厳しく添削してください』と頼むんです。すると、すぐに文章が変わります」
なかでも助かったのが、長い文章を求められるESだったそうだ。
「300文字くらい自分で書いて、あとは『これを900〜1000文字に増やして』とお願いしていました。10秒くらいでできるので、めちゃくちゃラクでした」(Hさん)
使い道は文章の水増しだけではない。マスコミや広告業界などで見られる、正解の決まっていない企画型の設問では、自分で考えた案を入力し、弱い部分を指摘させた。
「企画書を見せて『足りないところを教えてください』と聞いたら、『ターゲット設定が甘いです』と指摘されたこともありました。自分では気づかなかったので、そこを直しました」(同)
面接前には想定質問の洗い出しや模擬面接にも使った。人間のOB・OG訪問とは違い、時間を選ばず何度でも壁打ちできるのも利点だったという。
Hさんは最終的に、複数の大手企業やメディア企業から内定を得た。もちろん、生成AIを使えば必ず内定が得られるわけではないが、ESを書く、企画を練る、面接の準備をするといった作業にかかる時間は大きく変わっているわけだ。
IR資料は読まない! AIに「読ませる」就活術
生成AIの使い道は、ESや面接対策だけではない。金融業界を志望していた実践女子大学4年のNさんが重宝したのは、企業研究だった。上場企業を受けるとなれば、決算資料や中期経営計画、ニュースリリースなど、目を通したい資料はいくらでもある。Nさんは、それらを生成AIに読み込ませて整理していた。
「長期計画や中期計画のホームページを全部読んでいられないので、AIにまとめてもらいました。ただ、『この会社について教えて』だけだと適当な答えが出ることもあります。IRやM&Aのリリースを入れてから聞くようにしていました」
証券会社を研究する際には、競合他社との違いも生成AIに尋ねた。その内容をそのまま暗記するのではなく、自分なりの志望理由に落とし込んでいった。
実際の面接でも、企業研究を踏まえて話したところ、担当者から「うちの会社をわかってるね」と反応されたことがあったという。ESでも、まず自分の経験を箇条書きにして入力するのだそう。
「ガクチカで話したい出来事を箇条書きにして、『この会社にアピールするならどうまとめればいい?』と聞くと、面接の台本まで作ってくれます。自分の大学や志望企業まで細かく設定したほうが、回答はかなり良くなりました」(同)
同じ生成AIを開いても、何も情報を与えずに「志望動機を書いて」と頼む学生と、企業のIR資料や自分の経験を細かく入力する学生とでは、当然、返ってくる答えも変わる。AIが誰にでも使えるようになったからといって、全員が同じ結果を得られるわけではないのだ。
AI時代、かつての弱みが強みに変わる可能性
Hさんには、もうひとつ興味深い使い方があった。自己分析をする際、自分の経歴をChatGPTに細かく入力したのだ。
「小説を書いている」「高校を中退した経験がある」——。本人は当初、高校中退について選考では弱みになる可能性があると考えていた。ところが生成AIからは、むしろ他の学生にはない経験として、伝え方次第で強みにできるのではないかと提案されたという。
「自分では、高校中退をそんなふうに使おうと思っていませんでした。AIに自分のことをいろいろ伝えたら、『そこはアピールできますよ』と教えてくれた。それはAIのおかげだと思います」(Hさん)
ただ、生成AIがHさんに「高校中退」という経験を与えたわけではない。本人がすでに持っていた材料を見つけ、その意味を別の角度から整理したにすぎない。ここに、AI時代の就活で生まれる新しい差があるのかもしれない。
文章が不得意でも、AIに整えてもらえる。コピーが思いつかなければ何十案でも出してもらえる。企業研究の時間が足りなければ、大量の資料を要約させることもできる。
ただし、「自分は何をしてきたのか」「そこから何を考えたのか」という材料まで、AIに用意してもらうことは難しい。これについて、木内氏はこう指摘する。
「AIによって文章力の差はかなり埋められると思います。一方、AIに何を入力できるかは、その人が持っている経験や知識によって変わります。同じツールを使っても、具体的な経験を材料として渡せる人と、そうでない人では出力にも差が出ます。さらに、AIの回答をそのまま受け取らず、必要な情報を追加したり、自分の言葉へ戻したりできるかも重要です」
かつては、同じ経験をしていても「文章にするのがうまい学生」が有利だった。生成AIは、その差をかなり小さくしている。
代わって浮かび上がってくるのが、AIに渡せる具体的な経験や知識をどれだけ持っているか。そして、出てきた答えを自分なりに判断し、自分の言葉に使い直せるかという差である。
誰もが「立派なES」を作れるようになった先で、企業が見るものも変わる。「何を書けるか」より、「あなた自身に何があるのか」。生成AIの普及によって、就活はむしろそこを以前より厳しく問うようになるのかもしれない。
(取材・文=西脇章太/にげば企画)
