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「ボーナスが少ないから辞める」は半分本当…正社員6人に1人が転職した“説明不足”の代償

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「これだけしか評価されていないのか」――賞与への不満から転職した人は、正社員の約6人に1人。転職の理由は、金額だけではないというが……。(写真:Getty Imagesより)

「夏のボーナス、これだけか……」。賞与明細に記された金額を見て、会社からの評価まで低く感じた人もいるのではないか。

 マイナビが全国20〜50代の正社員1万8464人と、企業の中途採用担当者823人を対象に実施した調査によると、2026年夏の賞与予想額は平均55.2万円。自分の働きに見合う理想額は80.2万円で、25万円もの差が開いた。

 さらに、42.9%が賞与の少なさを理由に転職を考えた経験を持ち、調査回答者全体で見ると、およそ6人に1人が実際に転職している。

 ボーナスは臨時収入であると同時に、社員にとっては自分の仕事がいくらで評価されたのかを示す数字でもある。

 では、社員を引き留めるには、賞与を増やすしかないのか。調査から見えてきたのは、会社側の「評価している」と、社員側の「評価されていない」という深刻なすれ違いだった。

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賞与38.5万円差が分けた「転職」と「残留」

 賞与の少なさをきっかけに転職した人が、当時受け取っていた賞与額は平均29.5万円だった。一方、予想より高い賞与を受け取り、転職を思いとどまった人の平均は68.0万円。両者には38.5万円の開きがある。

 では、29.5万円が転職を決める境目で、68万円を支給すれば社員を引き留められるのだろうか。調査を担当したマイナビキャリアリサーチLab研究員の朝比奈あかり氏は、数字の見方について次のように説明する。

「29.5万円は、賞与の少なさをきっかけに転職した人が、当時受け取っていた金額の平均です。高い金額や低い金額の回答に左右されるため、明確な分岐点とはいえません。ただ、一つの目安にはなる数字だと思います」(以下、「」内は同氏のコメント)

 社員が会社を辞める理由は、賞与の少なさだけではない。前年の調査では、賞与以外の転職理由として「月給が低かった」が最も多かった。

 基本給が上がらない。仕事量や責任に待遇が見合っていない。そうした不満が積み重なったところに、期待を下回る賞与が支給され、転職を決断するケースもあるようだ。

 賞与は、それだけで退職を決める原因というより、以前から抱えていた待遇への不満を表面化させるきっかけになっているのかもしれない。

最も賞与が低い20代が、最も納得したワケ

 年代別に見ると、意外な傾向が浮かび上がる。2025年夏に支給された賞与額は、20代の40.7万円から50代の68.6万円まで、年代が上がるにつれて増えていた。

 ところが、賞与に「納得している」と答えた割合は、20代が61.3%で最も高く、30代は52.6%、40代は47.8%、50代は45.7%だった。20代と50代では15.6ポイントもの差がある。

 受け取る金額は増えているのに、納得感は下がっていく。40代、50代は住宅費や教育費など家計の負担が重くなりやすいうえ、職場では管理職や中堅社員として責任も増える。人手不足によって業務量が膨らむ一方、若手の初任給引き上げほど自分たちの待遇は改善していない。そうした状況に、割り切れなさを感じる人もいるだろう。

「物価や生活費が上がるにつれて、『これだけあれば安心できる』と感じる金額も大きくなっています。加えて、人手不足で業務負担が増し、『これだけ会社に貢献している』といった実感と支給額に差があると、十分ではないと感じやすくなるのではないでしょうか」

 年代による納得感の差には、もう一つ理由がありそうだ。朝比奈氏によると、賞与について会社からフィードバックを受けている割合は20代で高く、年代が上がるほど低くなる傾向が見られたという。

 最も賞与額が低い20代が、最も高い納得感を示していた。この結果は、賞与への納得感が金額だけで決まるわけではないことを表している。

納得する人の61%が受けていた“説明”

 調査から分かったのは、賞与への納得感を左右するのは、金額だけではないということだ。納得感と前年の賞与額との相関係数は0.166だったのに対し、会社からフィードバックを受けたかどうかとの相関は0.416。数値上では、後者のほうが関連性が強かった。

 実際、賞与に納得している人の61.0%は、会社から何らかの説明を受けていた。一方、納得していない人では27.3%にとどまる。さらに、不満を抱く人の45.6%が「フィードバックも、結果の共有もなかった」と回答した。

「賞与は、会社からの評価として受け止められやすいものです。理由の説明がなければ、本人は金額だけを見て、『会社から見た自分の評価はこの程度なのだ』と判断してしまう可能性があります」

 会社側は、厳しい業績のなかでも本人を高く評価したつもりかもしれない。ところが、社員に伝わるのが支給額だけなら、「これだけ働いて、この金額なのか」と受け止められてしまう。評価していた人材が、自分は評価されていないと感じて会社を去る。賞与をめぐる不満には、こうした認識のずれも影響しているようだ。

 説明のために、必ずしも長時間の面談が必要なわけではない。会社の業績が賞与にどう反映されたのか、本人のどの仕事を評価したのか、今後何を期待しているのか。最低限の情報を共有するだけでも、受け止め方は変わり得る。

 企業側も、その重要性は理解している。採用担当者の76.7%が賞与のフィードバックを重視していたが、社内でルール化している割合は48.7%にとどまった。36.7%は、重要だと考えながらも、ルール化はされず実施を上司個人の裁量に任せている。

「ルールがなければ、管理職ごとに対応が変わり、運用にも差が生まれます。人材の流動化が進むなか、会社として評価基準や説明方法を整える必要性は、ますます高まっています」

50代男性の3人にひとりが、転職で年収アップ

 かつては「転職は35歳まで」といわれ、中高年は待遇に不満があっても、今の会社にとどまるものと考えられてきた。だが、その常識は崩れつつある。

 マイナビの別調査によると、2025年の正社員転職率は7.6%と、調査開始以来の最高水準を記録した。なかでも、40代、50代男性の転職が増えているそうだ。

 転職後に年収が上がった人は39.7%で、下がった人の20.6%を大きく上回る。50代男性に限っても、年収が上がった人は34.8%、下がった人は27.0%だった。年齢を重ねてからの転職が、必ずしも収入減につながるわけではない。

 人手不足を背景に、経験やスキルを持つ人材を求める企業は増えている。40代、50代にとって、長く勤めた会社に残ることだけが選択肢ではなくなった。「この年齢なら辞めないだろう」と考える企業ほど、職場を支えてきた人材を失うおそれがある。

「賞与には、最低限必要な金額の水準があります。ただ、賞与を増やす、フィードバックを行うといった一つの施策だけで解決する問題ではありません。働く人の満足度をどう高めるかが、企業に問われています」

 賞与を際限なく増やすことは難しい。それでも、支給額の根拠や本人への評価を伝えることはできる。企業が説明不足によって失うのは、1人あたり数十万円の賞与原資ではなく、本来なら会社に残っていたはずの人材である。

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(文=西脇章太/にげば企画)

西脇章太(にげば企画)

1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、心理学、ゲームなど。
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西脇章太(にげば企画)
最終更新:2026/08/15 18:00