「内々定が出れば安心」は間違い? 継続組の63.3%が不安を抱える“27卒就活”の実態

大学4年生、6月末時点で内々定保有率は81.2%――。
株式会社マイナビが発表した「2027年卒 大学生キャリア意向調査6月<就職活動・進路決定>」で、2027年卒学生の就職活動の実態が明らかになった。
就職活動を終えてから十数年、あるいは20年ほどたつ世代にとっては、「もう8割も決まっているのか」と驚く数字だろう。売り手市場を追い風に、今の学生は多くの選択肢から企業を選べる。そう受け止める人も少なくないはずだ。
ところが、未内々定者を含めた活動継続率は37.8%に上る。回答者の8割以上が内々定を得ているにもかかわらず、約4割はなお就職活動を継続している。
内々定先を残しながら、より条件のよい企業を探しているのか。それとも、入社先を決めきれない学生が増えているのか。
担当者に話を聞くと、こうした数字から想像する姿とは少し異なる、2027年3月卒業・修了予定者(以下、27卒)の実情が見えてきた。
「3月就活解禁」はすでに形骸化?
まず押さえておきたいのは、81.2%という数字が、近年の就活市場では特別に高い水準ではないことだ。前年同月の内々定保有率は82.8%で、27卒はこれを1.6ポイント下回った。
調査を担当したマイナビキャリアリサーチLab研究員の石田力氏は、こう語る。
「ほぼ例年通りで、今年はほんの少し低いくらいです。この水準になると、年度による差はそれほど大きくありません。近年は学生優位の売り手市場が続いていると見てよいと思います」(以下、「」内は同氏のコメント)
就活を経験した社会人のなかには、「本格的な選考は6月から始まる」と考える人もいるだろう。だが実際には、その時点ですでに学生と企業の接点は積み重なっている。
大学3年生のうちにオープン・カンパニーやインターンシップへ参加し、そこで知った企業から、その後の選考案内を受け取る。こうした流れが定着した今、採用広報の解禁日や選考開始日だけを見ても、就活の実態はつかみにくい。
「3月以前にオープン・カンパニーやインターンシップへ参加すると、その企業からアプローチを受け、早めに結果が出るケースがあります」
表向きのスタートラインは同じでも、実際に動き出す時期は一人ひとり異なる。6月末の81.2%は、学生が一斉に短期間で内々定を得た結果ではない。前年の夏や秋から続けてきた活動が、数字に表れたものなのだ。
内々定後も就活継続……63.3%の学生が不安を抱くワケ
内々定を得ても活動を続ける学生について、「もっと別な企業を狙いたいのだろう」と見る向きもある。
確かに5月までは、現在の内々定先より志望度の高い会社を探す動きが目立っていたという。ただ、6月に入ると状況は大きく変わった。
5月末に50.4%だった活動継続率は、6月末には37.8%まで低下した。1カ月で12.6ポイント減った計算だ。内々定保有率の上昇幅が4.8ポイントだったことを踏まえると、初めて内々定を得た人だけでなく、すでに内々定を持っていた学生も相次いで活動を終えたことが分かる。
「6月には選考が進みます。未内々定の学生が初めて1社目の内々定を得て終えたというより、すでに内々定を持っていた学生が、志望企業や本命企業からも結果を得て活動を終了した動きが大きかったと見ています」
複数社を無期限に比べ続けていたわけではない。先に得た内々定を持ちながら、本命の選考結果を待っていた学生がいたことになる。
それでも、内々定を得れば不安が消えるとは限らない。5月調査では、内々定を持ちながら活動する学生の63.3%が、就活に「不安がある」と答えていた。未内々定者では83.6%に達している。
入社先に決定的な不満がなくても、「この会社でよい」と言い切れる材料が足りない。仕事内容や配属、勤務地が曖昧なままなら、内々定は安心材料にはなっても、就活を終える決め手にはなりにくい。
なぜ「インターン参加者」ほど就活を終えやすいのか
同じように内々定を得ながら、迷わず就活を終える人と、なお次の会社を探し続ける人では何が違うのか。石田氏の分析から見えてきたのは、本格的な選考が始まる前に、実際の仕事に触れる機会を持っていたかどうかである。
「早い段階でインターンシップなどに参加した学生は、入社後にどのような仕事をするのかを理解しています。その企業から内々定を得た場合、納得して活動を終える割合が高い傾向があります」
インターンシップの利点としては、入社後に働く自分を具体的に思い描ける点だろう。
とりわけ5日間以上のプログラムでは、説明を聞くだけでなく、実際の業務に近い経験を積める。仕事内容への適性や職場との相性を確かめやすくなり、入社後に抱く「思っていた仕事と違った」というズレも減らせる。
また、採用側にも利点がある。応募書類や短時間の面接だけではつかみにくい人柄や、仕事への向き合い方まで確認できるためだ。
「学生は企業を、企業は学生を理解したうえで就職活動を始められます。双方の納得度が高まりやすいのだと思います」
文系46.1%、理系24.9%の就活格差
文系と理系の活動状況にも、大きな開きがある。6月末の活動継続率は文系46.1%、理系24.9%で、その差は21.2ポイントに及んだ。
文系は応募できる業界が多く、選択肢を絞りにくいから就活が長引く――。そう語られることもあるが、石田氏が主な要因として挙げるのは、理系人材に対する企業の強い需要である。
「選択肢の広さより、理系学生を求める企業が多いことが大きいと思います。メーカーや専門性の高い商社に加え、金融業界でも数字や情報に強い人材が必要です。学んできた内容と企業側が求める専門性を結びつけやすいため、採用がスムーズに進むケースも考えられます」
ソフトウェア業界でも、AIの普及によって若手技術者が不要になるどころか、情報系の知識を持つ人材を早期に確保しようとする動きが続いているという。
就活を早く終えられるかどうかは、本人が迷わず決断できるかだけで決まるものではない。どの分野の人材を企業が必要としているのか、その時々の採用ニーズにも大きく左右される。
AIで企業を調べ、株価まで見る就活生
企業研究の方法も、大きく変わりつつある。Xでは「27卒」や「NNT(“無い内定”を意味する就活スラング)」といったハッシュタグを通じて情報が集まり、LINEのオープンチャットでは、面接や内々定の進み具合がリアルタイムで共有されている。
名前も顔も知らない学生同士が、同じ企業の選考状況を確認し合うことも珍しくない。他人の内々定報告を目にして焦る学生がいる一方、自分と同じ段階にいる人を知り、気持ちが軽くなるケースもある。
「SNSの情報が焦りにつながる部分もあれば、安心感を得られる面もあります。知らない就活生同士で進捗を交換するのは、今では珍しくありません」
企業を調べる手段には、生成AIも加わった。学生は会社名を入力して概要をつかみ、表示された情報の出典へ移る。待遇や財務状況、過去の評判まで、以前より短い時間で比較できるようになった。
採用サイトで「風通しのよい職場」「若手が活躍できる」と打ち出しても、実態と食い違えば、口コミや過去の報道から見抜かれかねない。企業にとって不都合な情報も、隠し通すことが難しくなっている。
「学生は企業研究にAIを積極的に使っていますが、企業側は採用活動に十分活用できていないところも多いです。AIの影響で、似たようなエントリーシートが増えたという声も出ています」
学生が企業を見る目も、以前より現実的だ。マイナビの調査では、「安定している企業」を望む割合が数年にわたって上昇している。物価高を背景に、初任給や給与への関心も強く、その次に仕事内容や勤務地が重視されている。なかには、自己資本比率や株価まで確認する学生もいるという。
売り手市場のなかで、企業は学生を選ぶ側であると同時に、選ばれる側にもなった。とはいえ、待っていれば「希望する会社から声がかかる」わけではない。採用側も、インターンシップで学生が何を見ていたのか、自社についてどこまで調べてきたのかまで確かめている。
内々定を得た時期よりも、入社後の仕事をどこまで具体的に理解できているか。その差が、納得して就活を終えられるかどうかを左右しているのだろう。
(取材・文=西脇章太/にげば企画)
