「辞める理由がない」— Gargoyle/KIBA × Ethereal Sin/Yama、バンドを続けること【後編】

※本記事は【前編】の続きです。
前編では、GargoyleとKIBAの歌声がYamaの音楽観を変えた馴れ初めを振り返った。後編では、視点をさらに広げる。YamaがEVPを立ち上げて海外バンドの招聘を始めた原点――2015年に体験したドイツ・Wacken Open Airの衝撃と、赤字覚悟で踏み出した最初の一歩について語られる。
さらに話題は、約40年Gargoyleを一人で背負い続けるKIBAと、結成30年を迎えるEthereal Sinを率いるYama、それぞれのバンド継続論へ。正式メンバーを持たない孤高の活動スタイルと、複数プロジェクトを掛け持ちながらもバンド形式にこだわるスタイル。対照的な二人が、「なぜ続けられるのか」という問いに向き合う。
KIBA:そういえば、Yamaさんが海外バンドを日本へ呼ぶようになった経緯が知りたいかもです。
Yama:きっかけは、2015年にドイツのWacken Open Airへ出演したことです。
会場の至るところにステージがあり、大きなバンドから地元のバンドまで、常にどこかで誰かが演奏している。グッズを売るだけではなく、ペイガン・フォークメタルや中世音楽のエリアでは鍛冶屋がいて、鎧や剣が売られている。
単にライブを見るフェスではなく、その土地全体でメタルを楽しめる空間でした。日本にも大型フェスはありますが、方向性がまったく違う。その光景に衝撃を受けて、これを日本へ持って帰りたいと思ったんです。
現地でいろいろなバンドを見ていると、名前は知っていても日本へ来たことのないバンドがたくさんいました。
私は、音源も大事ですが、やはりライブこそがバンドの本物の姿だと思っています。実際に見て、「このバンドは音源よりもライブの方が絶対にいい。日本へ連れていきたい」と思ったバンドが何組かいた。それがプロモーターを始めたきっかけです。
KIBA:「日本へ連れていきたい」と思うところまでは分かる。でも、普通はそこから本当に呼ぶとこまでいかないでしょ(笑) 実際にやるまでの部分が、一番大変なんじゃないの?
Yama:当時はほとんど素人でしたが、ほかのプロモーターの仕事を手伝ったりして、何となく流れだけは理解していました。
それで自分なりに計算して、「赤字になっても50万円くらいだろう。それならやってみよう」と考えたんです。実際には、最初の招聘で総額200万円ほどの赤字になりました。
ただ、初来日したバンドが日本を本当に楽しんでくれたんです。帰国してからも周囲のバンドへ日本の良さを話してくれて、「自分たちも日本へ呼んでほしい」という連絡が来るようになりました。
その依頼に一つずつ応えているうちに、いつの間にかプロモーターと呼ばれるようになったという流れです。
KIBA:赤字になるだろうと分かっていても、やりたくてやったかのが良かったんだろうね。だから、次につながる人たちも出て来た。

――現在のGargoyleは、KIBAさんが唯一の正式メンバーで、固定に近いサポートメンバーと活動しています。Ethereal SinやRakshasa、Thyendeなど様々なプロジェクトを抱えつつも必ずバンド形式をとるYamaさんからみてどう思いますか?
Yama:自分には、正直、同じ形は取れないと思います。実際のところ、上記の中には、ほぼ自分のワンマンに近いバンドもあります。
それでも正式メンバーがいれば、何かあったときに頼ったり、自分の負担を渡したりできる。自分には足りない発想を出してもらうこともできます。
自分以外を全員サポートメンバーにして活動するのは、相当な心の強さがなければできませんし、それを行っているKIBAさんにはリスペクトしかありませんね。
KIBA:今のメンバーとの関係は、一般的に想像されるサポートよりも一歩踏み込んでいるとは思います。
一人になった直後は、いろいろな人に入れ替わりで参加してもらってて。でも今は、ほぼ固定されていて、感覚的には正式メンバーとサポートメンバーの間くらいの関係ですかね。
今の状況には、今の状況だからこそできるバンド活動があると思ってて。嫌なことや無理なことを続けるんじゃなく、この形でできることを楽しんでやっていこうって。
完璧な状況じゃないとバンドはやれないって人もいるかもだけど、実はすべて完璧なバンドなんて無いんじゃないかとも思うし、どういう状況かはあまり関係ない気がしてます。
――Yamaさんのメインバンド、Ethereal Sinもまもなく結成30年です。バンドを長く続けるためには、何が必要だと思いますか。
Yama:私は、核となる人間の心が折れなければ、バンドはいつまでも続けられると思っています。
バンドを組むこと自体は難しくありません。でも、続けることは難しい。だが、メンバーがどれだけ替わったとしても、中心にいる人間が諦めなければ続けられると思っています。そういう意味では、KIBAさんがGargoyleを約40年続けてこられた理由は何ですかね?

KIBA:よく聞かれるんですけど、「これだ」と言える一つの理由が、自分でも分からないんですよね。
ただ、今いる場所できちんとやるというのが、自分のやり方なのだろうとは思います。もう一つは、自分がやりたいことを楽しくやるという姿勢が、Gargoyleを始めた頃から変わっていなくて。
やっている方が楽しい。だから辞める理由がない。それが一番大きいんだと思います。
僕は音楽について、すごく詳しいわけじゃないし、自分を音楽家だとも思ってないんです。でも、自分で何かを表現したいという衝動は、ずっと持ち続けてて。
バンドという形って、音楽を中心に置きながらも、衣装やジャケット、活動の仕方、MCまで、いろいろな方法を使って表現できるでしょ。だからバンドをやってる人でいたい。
それだけ多くのことを使って自分を表現できる場所が目の前にあって、今も楽しくやれている。だから手放したくないですよね。むしろ、正直に言うと、他の人がなぜ辞めるのかが分からないくらい。
――今後、海外で演奏したい国はありますか。
KIBA:どこでもやりたいですよ。逆に、やりたくない国は思い付かない。
以前、ロンドンのマーキーでヘッドライナーとして演奏したことがあるんですよね。そのときは、4曲目くらいにバラードを入れたら、半分くらいのお客さんが帰ってしまって。
あとで現地の関係者の人に聞いたら、激しい曲を続けたあとに急にバラードを演奏したんで、「このバンドはどちらをやりたいのか分からない」と思われたらしいんです。分からないから帰る判断が早いなって(笑)
そういうのも含めて、知らない人や文化の違う人の前で演奏するのは刺激的で、自分の中で新しいものも生まれます。
ワンマンとかホームの状況は、自分たちでも作ることができるでしょ。でも海外公演みたいなのは、外から話をもらわなければ、滅多に無い。面白そうな話なら、チャンスを逃さず、できる限りやってみたいですよ。

Yama:GargoyleとEthereal Sinの組み合わせも、もう一度実現させたいと思っています(※2025年6月15日にYamaの招聘にて韓国ライブが実現)。韓国に限らず、日本でも台湾でもいい。
客層は同じではありませんが、だからこそ、お互いのファンに新しい音楽を知ってもらえる。そういうクロスオーバーには大きな意味があると思います。
KIBA:台湾もいいですね。屋台へ行きたいです。
Yama:やっぱり最後は食べ物なんですね(笑)
(文・構成=編集部/写真=石川真魚)
