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『金ロー』を独自視点からチェックする!【98】

宮崎駿ワールド誕生『風の谷のナウシカ』 ジブリの未来を背負う美少女ヒロイン

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映画『風の谷のナウシカ』(スタジオジブリ公式HPより)

 宮崎駿監督の劇場監督デビュー作は『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)ですが、宮崎監督自身の原作による初の劇場アニメが『風の谷のナウシカ』(1984年)になります。卓越したビジュアルセンスと独自の世界観で、公開当時から話題となりました。興収14.8億円のヒット作となっています。

“縮小”された宮崎駿ワールド

 デビュー作『カリオストロの城』は今でこそ名作アニメ扱いされていますが、興収的には振るわずに終わっています。しかし、『金曜ロードショー』の前身『水曜ロードショー』(日本テレビ系)で公開翌年に放送したところ、20%超えの高視聴率を記録。ここから、宮崎監督に「いい風」が吹き始めます。

 宮崎監督は月刊誌「アニメージュ」(徳間書店)で連載中だった『風の谷のナウシカ』を劇場アニメ化。さらには「スタジオジブリ」の設立へとつながり、宮崎駿の時代が始まることになりました。ジブリの興隆に、『金ロー』は大きく貢献しています。

 8月14日(金)の『金ロー』は『風の谷のナウシカ』の20回目、テレビ放送は21回目のオンエアとなります。今なおナウシカが熱い注目を集めている要因を探ってみましょう。

文明滅亡後の世界を生きる最強ヒロイン

 美少女ヒロインぞろいの宮崎アニメですが、なかでもナウシカは行動力にすぐれ、慈愛に満ち、豊かな胸元も印象的な最強ヒロインと言っていいでしょう。そんなナウシカが活躍するストーリーはこんな感じです。

 最終戦争となった「火の七日間」から1000年後の地球が舞台です。大地のほとんどは砂漠化してしまい、有毒性の瘴気を発する菌類の森「腐海」が広がりつつあります。「王蟲」と呼ばれる超巨大な甲殻生物が君臨するディストピアとなっています。

 ナウシカ(CV:島本須美)は「風の谷」で暮らす一族の族長の娘です。ある日、風の谷の近くに大国トルメキアの大型輸送機が墜落します。輸送機には世界を滅亡に追い込んだ「巨神兵」の胚が積まれていました。

 クシャナ皇女(CV:榊原良子)率いるトルメキア軍が、巨神兵を回収するために風の谷に押し寄せます。圧倒的な兵力を誇るトルメキア軍によって、風の谷は占拠されます。クシャナは巨神兵を甦らせ、王蟲もろとも腐海を焼き払うことを計画していたのです。

 一方、トルメキアによって苦しめられていた近隣の都市国家「ペジテ市」は、王蟲の大群をトルメキア軍にけしかけようとします。風の谷を救うため、さらには地球の生態系を守るために、歴戦の剣士・ユパ(CV:納谷悟朗)、ペジテ市の王子・アスベル(CV:松田洋治)らと共に、ナウシカは戦いの中に身を投じるのでした。

漫画家としても超一流な宮崎駿

 ナウシカが乗るグライダー型の飛行艇「メーヴェ」に、『デューン 砂の惑星』(1984年)のサンドワームを思わせる「王蟲」、そしてクライマックスに登場する「巨神兵」……。宮崎監督のSFマインドが炸裂したビジュアルの数々に圧倒されます。

 原作のコミック版『風の谷のナウシカ』全7巻は、1982年~1994年に「アニメージュ」で連載されました。宮崎監督はアニメ制作と並行して、漫画も連載していたわけです。休載期間が長かったとはいえ、驚異的な創作エネルギーです。

 劇場アニメ『ナウシカ』の成功を受け、1985年に「スタジオジブリ」が設立されますが、もしも「ジブリ」が設立されなかったら、宮崎監督はどんなクリエイターになっていたのかを考えると想像が膨らみます。

 劇場アニメは企画段階からヒット性が求められるため、必ずしも監督自身が撮りたいと思っていた作品ばかりになるとは限りません。また、宮崎監督はスタジオ運営という重責も担っていました。

 制約のある環境ではなく、自由度の高い、個人での漫画制作にエネルギーを注いでいれば、さらに先鋭的な作品をいくつも残していたかもしれません。宮崎監督が「天才」「超人」と称されるのも、うなずけます。宮崎監督のようなクリエイターは、今後はもう現れないでしょう。

宮崎ワールドが古びない理由

 日本だけでなく、ハリウッドや世界中のクリエイターたちに、宮崎監督は多大な影響を与え続けています。アニメーターとしての卓越した技量に加え、独自の世界観によって宮崎ワールドは支えられています。

 人間は地球の支配者ではなく、地球という大きな生態系の中で他の生き物たちと共生する関係にあるという考えが宮崎ワールドの根底にはあります。互いに影響を与え合っているわけです。同じように人間同士も、単純に善と悪に二分することはできません。

 トルメキア軍を率いるクシャナは単なる悪役ではなく、現実的な判断を下すリーダーとしての魅力を持っています。清純な少女に見えるナウシカですが、父親を殺された怒りを抑えきれずに暴力衝動に走る一面も見せています。自然界だけでなく、ひとりの人間も多面的に宮崎監督は捉えていることが分かります。

 宮崎駿アニメが世界中で広く愛され、繰り返し観ても飽きることがない要因になっているのではないでしょうか。

気になる宮崎監督と庵野監督の関係性

 クライマックスの巨神兵が復活するシーンは、新人アニメーターだった庵野秀明監督が担当していたことがよく知られています。その後も2人の交流は続き、宮崎監督の自伝的な要素を感じさせる『風立ちぬ』(2013年)の声優に庵野監督は起用されています。2人の間には「師弟関係」に近い、クリエイター同士ならではの強い結びつきがあるようです。

 ファンが気になるのは、『ナウシカ』の原作コミック全7巻をベースにした完全版『風の谷のナウシカ』の映像化が、庵野監督によって実現されるのかどうかではないでしょうか。

 庵野監督は『シン・エヴァンゲリオン 劇場版』(2021年)を完成させ、自身のオリジナル企画はやり切った感があります。近年は『シン・ゴジラ』(2016年)や『シン・仮面ライダー』(2023年)など自身に強い影響を与えた作品のリブートに励んでいるところです。

 もし、『ナウシカ』完全版の企画が具体的に動き出すとなれば、シリーズ化が想定されるはずです。そうなれば、日本テレビのグループ会社である「Hulu」だけでなく、NetflixやAmazonも黙って指をくわえてはいられません。

 日テレの子会社となった現在の「ジブリ」は、宮崎監督や高畑勲監督らの過去の作品の著作権管理を担っていますが、『ナウシカ』完全版のプロジェクトが始まれば、再び世界が注目する最前線のアニメスタジオになるでしょう。

 ナウシカこそが、ジブリの未来を担う救世主ヒロインになるー。そんな想像が膨らみます。今夜の『ナウシカ』放送時のSNSの反響に注目している業界関係者は、少なくないと思いますよ。

恐竜より怖い研究者

(文=映画ゾンビ・バブ/映画ウォッチャー)

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映画ゾンビ・バブ(映画ウォッチャー)。映画館やレンタルビデオ店の処分DVDコーナーを徘徊する映画依存症のアンデッド。

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最終更新:2026/08/14 12:00