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三笘薫はケガ人がいても「不起訴」なのに山本太郎は事故なしでも「罰金・90日免停」…著名人の交通違反“処分の分かれ目”

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人にケガをさせた三笘薫のほうが、処分は重くなりそうに思えるが、どうして山本太郎のほうが重い処分となったのか?(写真:Getty Imagesより)

 著名人が交通事故や交通違反を起こすと、「道路上のトラブル」だけでは済まない。刑事処分や免許停止に加え、スポンサー契約や広告出演など、仕事への影響まで注目が集まるからだ。

 実際、昨今も著名人による交通トラブルはたびたび報じられている。サッカー日本代表の三笘薫氏は、自転車との衝突事故で女性にケガを負わせ、過失運転致傷の疑いで書類送検されたものの、不起訴となった。

 一方、元・れいわ新選組代表の山本太郎氏は、事故を起こしていないにもかかわらず、時速149km(69kmオーバー)の速度違反で罰金9万円と90日間の免許停止処分を受けている。

「人をケガさせた事故」と「事故には至らなかった速度違反」。結果だけを並べると、なぜこれほど処分に差があるのか、不思議に感じる人もいるだろう。

 一見すると不公平にも思えるこの結果だが、そもそも2人の事案は「同じ物差し」で判断されたわけではない。

 そこで今回は、交通事故や保険実務に詳しい専門家への取材をもとに、それぞれの処分が何を意味するのかを見ていく。

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人身事故を起こした三笘薫はなぜ「不起訴」に?

 三笘氏の事故が起きたのは今年7月8日。東京都板橋区の交差点で、同氏が運転する乗用車と自転車が衝突し、自転車に乗っていた48歳の女性が全治2週間のケガを負った。その後、三笘氏は過失運転致傷の疑いで書類送検された。

 人身事故を起こして相手が負傷し、さらに書類送検——。ここまで聞くと、相応に重い刑事処分が下されるようにも思える。ところが、東京地検は7月31日付で三笘氏を不起訴とした。

 東京地検は、不起訴の理由について「双方とも赤信号だったことなど、関係証拠の内容を踏まえた」としている。報道によれば、三笘氏は歩行者用信号の青を車両用信号と勘違いして交差点に進入したと説明していたという。

 ここで押さえておきたいのは、「人身事故を起こした=必ず起訴され、罰金刑などを受ける」という仕組みではないことだ。

 検察官は事件について必要な捜査を行い、集めた証拠を検討した上で起訴するか、不起訴にするかを判断する。つまり、事故によって相手がケガをしたという結果だけで、自動的に刑事罰が決まるわけではない。

事故ゼロでも「罰金と90日免停」のワケ

 では、負傷者すらいなかった山本氏のケースで、なぜ罰金と免許停止という処分が下されたのか?

 山本氏が速度違反で検挙されたのは、昨年10月9日のこと。れいわ新選組の発表によると、山本氏はレンタカーで大分市内の東九州自動車道を走行中、最高速度80km/hの区間を時速149kmで走っていた。実に69km/hの速度超過である。

 この違反を受け、2026年4月20日付で略式命令による罰金9万円の刑事処分が科された。さらに5月15日付で、90日間の運転免許停止という行政処分も下されている。

 ここで重要なのが、「罰金」と「免停」は同じ処分ではないということだ。

 罰金は刑事手続きの中で科される刑事処分。一方、運転免許の点数や免許停止・取消しは、交通違反や交通事故に応じて行われる行政処分である。不起訴も含めた刑事手続きと、免許の点数制度は分けて考える必要がある。

 警視庁の点数表では、速度超過が50km/h以上の場合の基礎点数は12点。行政処分の前歴がない場合でも、累積12〜14点は90日間の免許停止となる。

 人身事故などではなかったとしても、大幅な速度超過そのものによって重い行政処分の対象になり得るのだ。

判断基準は「事故の有無」ではなかった

 結論からいえば、「三笘氏は不起訴、山本氏は90日免停」という結果だけを横並びにして、「どちらが重いか」を比べること自体が正確ではない。

 三笘氏について東京地検が判断した「不起訴」は、過失運転致傷の疑いについて公訴を提起しないという刑事手続き上の判断だ。一方、山本氏の場合は、速度違反そのものに対して罰金9万円が科され、さらに免許も90日間停止された。

 三笘氏のケースでは、歩行者用信号を見て車両用信号と勘違いしたと報じられている。対して山本氏の場合は、最高速度80km/hの区間を149km/hで走行したという、大幅な速度超過そのものが道路交通法違反として問われた。

 交通事故や保険実務に詳しい専門家・片山美典氏は、交通事故と大幅な速度超過を考える際の違いについて、こう話す。

「信号無視は、一瞬の判断ミスによって起こることもあります。そのため、そこに故意性があったかどうかについては、事故の状況を踏まえて慎重に判断する必要があります。一方で、極端な速度超過は、私たちの実務上の感覚では『少し注意がそれていた間に、気づけば時速180kmまで出ていた』ということは通常考えにくいです」

 つまり、大幅な速度超過は、単純な不注意による事故とは性質が異なるというわけだ。

 もちろん、山本氏について法的な意味での「故意」が認定された、と断定することはできない。山本氏に科された処分は、実際に認定された速度違反に基づくものだ。

 交通事件では、結果の大きさだけでなく、どんな違反行為が認定され、それに対して刑事・行政のどの処分が下されたのかを分けて見る必要があるのだ。

「事故を起こした=即降板」にならない意外な理由

 さらに、著名人の場合は、刑事処分や行政処分だけでは話が終わらない。仕事上では、その後にスポンサー企業や広告代理店、テレビ局などが「今回の行為をどう評価するか」という、別の判断が待っているのだ。

 一般のドライバーであれば、交通事故や違反による影響は、罰金や免許停止、保険料の変化などにとどまる場合が多い。しかし、企業の「顔」としてCMや広告に出演している芸能人やスポーツ選手の場合、一件の交通トラブルが数多くの契約へ波及する可能性がある。

 だからといって、交通事故を起こしただけで、即座にCM降板やスポンサー契約解除が決まるわけではない。重要になるのは、事故や違反に至った経緯、本人の責任の程度、違反の悪質性、その後の対応などだ。

 例えば、十分に注意して運転していても避けることが難しかった事故と、自ら危険性の高い運転を選択したと評価されるケースとでは、企業側が受ける印象は大きく異なる。事故後に救護や通報を適切に行ったか、事実関係について誠実に説明しているかといった対応も、企業イメージを考える上では無関係ではない。

「交通事故の場合は、意図して事故を起こしたわけではないケースが多いでしょう。一方で、暴走行為など、自ら危険な運転を選択したとみられる場合は、スポンサー側からもより厳しく受け止められる可能性があります」(片山氏)

 スポンサー契約では、企業や商品の信用を損なう行為があった場合について、契約解除や損害賠償などを定めているケースも考えられる。そのため、同じ「交通トラブル」であっても、企業ごと、契約ごとに判断が変わり得るのである。

 特にスポーツ選手やタレントは、本人の知名度や好感度そのものが広告価値につながっている。法的には不起訴だったとしても、それだけで企業側が「問題なし」と判断するとは限らない。一方で、事故の状況や本人の対応などを踏まえ、契約を継続するという判断もあり得る。刑事処分の結果と、企業による契約判断は別物なのである。

法律上はセーフでも「CM降板」は別問題

 そして、もうひとつ分けて考える必要があるのが「保険」である。自動車保険に加入していれば、事故によって生じた損害が何でも補償される、と考えている人もいるかもしれない。

 しかし、保険が主に担うのは事故によって生じた一定の損害への補償であり、著名人の仕事上の損失まで一律にカバーするものではない。

「故意、あるいは故意に近い行為によって本人側に生じた損失については、一般的な保険で補償することは難しいと考えられます。被害者への補償とは分けて考える必要があります」

 仮に、交通トラブルをきっかけに広告契約が終了したとしても、「失った出演料を自動車保険が補ってくれる」という話にはならない。また、スポンサー企業側に何らかの損害が発生した場合についても、どこまで責任が及ぶのかは契約内容などによって異なる。

 著名人にとっては、「道路交通法上どのような処分を受けるか」だけでなく、「スポンサーや取引先からどう評価されるか」という二重のリスクがある。場合によっては、法律上の処分以上に、仕事上のダメージのほうが大きくなることさえ考えられる。

 だからこそ、「不起訴だったから影響は軽い」「事故を起こしていないから仕事には響かない」と単純には言えない。法的責任、行政上の処分、企業との契約、社会的な評価は、それぞれ異なる基準で動いている。

「事故を起こした人が重く罰せられ、起こさなかった人は軽い」——。今回の三笘氏と山本氏のケースは、交通ルールがそんな単純なひとつの物差しでは動いていないことを示しているのだ。

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(取材・文=西脇章太/にげば企画)

西脇章太(にげば企画)

1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、心理学、ゲームなど。
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西脇章太(にげば企画)
最終更新:2026/09/21 22:00