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在学中の金利上昇で返済額に80万円差も!? 「高校生に判断させるのは無理」という奨学金の怖さ

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「金利のある世界」に突入した日本。奨学金の選び方も将来を左右する。(写真:Getty Imagesより)

「奨学金は低金利だから、借りてもそれほど負担にはならない」――。そんな常識が崩れ始めている。

 日本学生支援機構(JASSO)の有利子奨学金「第二種奨学金」の金利は、この数年で急上昇。利率固定方式では2026年3月に2.423%となった。

 しかも、適用される金利が決まるのは原則として卒業時。入学時には、将来どれほどの金利を負担することになるのか分からない。

「金利のある時代」が戻るなか、奨学金制度はいま、大きな転換点を迎えている。

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「低金利だから大丈夫」ではなくなった第二種奨学金

 大学や専門学校への進学を支える奨学金。そのなかでも、多くの学生が利用している日本学生支援機構(JASSO)の奨学金をめぐり、いま大きな変化が起きている。

 文部科学省によると、JASSOの奨学金予算は年々拡大し、2004年度には約6600億円だった有利子・無利子奨学金の予算額は、2013年度には約1兆円規模に到達。近年はやや減少したものの、2025年度も有利子奨学金5854億円、無利子奨学金2805億円の計8659億円に上る。

 奨学金は一部の学生だけが利用する制度ではなく、日本の高等教育を支える巨大な教育インフラでもある。

 そのなかで、特に利用者の多い第二種奨学金では、これまで前提となってきた「超低金利」が崩れ始めている。

 第二種奨学金は、利息が付く貸与型の奨学金だ。長らくゼロ金利・マイナス金利の時代が続いたこともあり、返還時の金利負担は比較的小さかった。

 ところが近年、その利率は急速に上昇している。2020年頃には0.2%前後だった利率固定方式の利率は、2026年3月には2.423%まで上昇した。さらに2026年7月にはついに3%の上限金利に達した。

 しかも、この制度には意外と知られていない仕組みがある。第二種奨学金の利率は、大学へ入学した時点では決まらない。原則として、貸与が終了する卒業時点の利率が適用されるのだ。

 そのため、同程度の金額を借りた場合でも、低金利だった時期に卒業した人と、現在の利率で卒業する人とでは、返済総額に約80万円もの差が生じるケースもある。

 奨学金アドバイザーとして20年以上、全国で学生や保護者への講演を続けてきた久米忠史さんは、「これまでとは明らかに状況が変わってきた」と語る。

「2008年のリーマンショック前後には、奨学金返還をめぐる批判がかなり強くなりました。当時はJASSOの案内書に返還額の目安として上限金利3%が記載されていたこともあって、『奨学金の金利は3%で高い』と数字だけがひとり歩きした時期もありました」(以下、「」内は久米氏のコメント)

 ただ、その後はゼロ金利、マイナス金利の時代に突入し、利率は低下していった。

「だから僕自身も講演では、『有利子といっても、実質的には無利子に近いから、そこまで金利を気にしなくてもいいですよ』と説明していたんです。ところが、この2年くらいで目に見えて変わりました。いまは講演でも、『昔とは状況が違います』と必ず伝えるようになっています」

高校3年生が「固定か見直しか」を選ぶ難しさ

 第二種奨学金には、2つの金利方式がある。ひとつは、卒業時など貸与終了時に決まった利率が返還終了まで続く「利率固定方式」。もうひとつは、おおむね5年ごとに利率が見直される「利率見直し方式」だ。

 例えば2026年3月に貸与が終了した場合、利率固定方式は2.423%、利率見直し方式は1.600%。固定方式を選べば、その時点で決まった金利が返還期間中ずっと続く。15年間返済する場合なら、2.423%という利率が15年間適用されることになる。

 一方、見直し方式では、途中で金利が変動する可能性がある。問題は、この選択を学生自身がしなければならないことだ。

「制度上は、固定と見直しという選択肢が用意されています。ただ、現場で高校生や保護者に話していて感じるのは、高校3年生の段階で『4年後の経済状況を予測して、自分で責任を持って選んでください』というのは、かなり無理があるということです。予約採用で申し込む高校生が多いですが、その時点では大学卒業時の金利なんて誰にも分かりません。これから景気がどうなるのか、金利が上がるのか下がるのかも分からない。それなのに、『固定か見直しか選んでください』と言われるのは酷です」

 低金利が続いていた頃には、それほど注目されなかったこの選択。しかし、金利が2%を超える時代になり、その重要性は一気に増している。

 では、固定方式と見直し方式はどちらを選べばいいのだろうか? 久米氏は「正解はない」と強調する。

「例えば借入額が比較的少なく、親子で協力して繰り上げ返済できる家庭であれば、見直し方式も選択肢になると思います。返還期間が15年でも、繰り上げ返済で10年未満、さらに5年未満まで縮められれば、その後の金利変動を受ける期間も短くなります。ただ、これは全員に当てはまる話ではありません。両親の経済状況も違い、卒業後にどんな仕事へ就くかによって返済余力も違う。だからいままで以上に、それぞれの家庭で慎重に考えなければならなくなっています」

奨学金の返済が「就職先」まで左右する時代に

 奨学金は、教育の機会を広げるための制度だ。だからこそ、金利の上昇は単なるローン商品の値上がりでは済まない。数百万円を借りた学生にとって、返済総額が数十万円増えることは、その後の人生設計にも影響する可能性がある。

 20代から30代にかけて返済を続けることになれば、結婚、出産、住宅購入といった大きなライフイベントとも重なる。

「もし男女ともに奨学金の返済中だったら、結婚にも影響する可能性はあると思います。実際、『奨学金の返済があるから結婚をためらう』という話は以前からあります。今後、返済額がさらに大きくなれば、そうした問題ももっと表面化してくるかもしれません」

 そして、その影響は結婚や住宅購入より前の段階、つまり就職活動にも現れ始めている。

 マイナビが2027年卒業予定の全国の大学生・大学院生1239人を対象に実施した「2027年卒 大学生キャリア意向調査7月<奨学金について>」によると、奨学金を利用している学生は38.7%。前年より1.8ポイント増え、およそ4割に達した。

 さらに注目したいのが、「誰が返済するのか」という点だ。奨学金利用者のうち、「自分で全額返済する」と回答した学生は77.6%。前年から10.9ポイント増加した。

 一方、親・保護者が全額または一部を返済すると答えた割合は25.2%で、前年より6.8ポイント減少している。奨学金を利用する学生の多くが、卒業後、自分自身の収入で返済していくことを想定しているのだ。

 実際、「奨学金返済が企業選択に影響した」と回答した学生は30.0%に上り、前年の21.9%から8.1ポイント増えている。企業選択で重視した項目を見ると、「初任給の額」が67.1%で最も多く、次いで「奨学金返済支援制度の有無」が33.3%となっている。

 これは単純に「給料が高い会社が人気」という話ではない。自由回答では、毎月の返済額から必要な収入額を試算した上で、その金額を満たせる企業を探している学生もいたという。

 なかには、「希望していた企業でも初任給が届かなければ応募を諦める」「実家から通える会社を優先するようになった」といった回答も見られた。

教育のための借金「上限3%」は高すぎる!

 大学を卒業したら、自分のやりたい仕事を選ぶ。本来ならそうありたい。しかし現実には、「毎月いくら返済するのか」から逆算して、企業や勤務地、住む場所まで選択肢が変わってしまう学生もいる。

 こうした状況を受け、企業側でも返済支援制度を導入する動きが出ている。しかし、マイナビの企業向け調査では、「奨学金返済支援制度・代理返済制度」を導入している企業は15.4%にとどまる。学生側の関心に対して、制度の普及はまだ十分とは言えない。

 そして久米氏が、今回の金利上昇を機に改めて議論すべきだと考えているのが、第二種奨学金の上限金利だ。

 第二種奨学金には、年3%という上限が設けられている。かつては「実際にはそこまで上がらない」と考えられていた数字だった。しかし現在は、固定方式で2%台半ばまで上昇し、その上限は決して遠い数字ではなくなってきた。

「僕は、3%という上限は重いと思っています。もちろん制度には財政との兼ね合いもありますが、『3%を維持するかどうか』ではなく、むしろ上限金利そのものを引き下げる議論をする時期に来ているのではないでしょうか。教育のために借りるお金ですから、若者が社会に出る前から過度な負担を背負う制度でいいのかという議論は必要だと思います」

 同時に久米氏は、JASSOだけに目を向けるのではなく、ほかの制度も活用できる環境づくりが必要だと指摘する。

「昔から大学独自の無利子貸付制度や、自治体の奨学金、民間財団の制度などがあります。すべての人が利用できるわけではありませんが、併給できるものもあります。例えば第一種奨学金と組み合わせて、不足分だけ別の無利子制度を利用するという方法も考えられます。第二種の金利がここまで上がってきたいまだからこそ、『JASSOしかない』ではなく、もっと選択肢を知ってもらうことも大切だと思います」

 奨学金は、多くの若者に進学の道を開いてきた。一方、そのために借りたお金が、卒業後の仕事や結婚、生活の選択肢を狭めるほどの負担になれば、制度本来の目的との間に矛盾も生じる。

 金利のある時代が戻ってきたいま、進学を望む若者にどこまで将来の負担を背負わせるのか。奨学金制度そのものを、改めて考える時期に来ているのかもしれない。

春ねむりが声を上げる理由

(取材・文=千駄木雄大)

千駄木雄大

1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「東洋経済オンライン」にて「奨学金借りたら人生こうなった」、「ARBAN」にて「ジャムセッション講座」を連載中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)、原作を担当したマンガ『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』(祥伝社)がある。

X:@yudai_sendagi

千駄木雄大
最終更新:2026/10/07 22:00