【サイゾーPremium】分断の時代に問われる 大阪万博の楽しみ方

4月13日の開幕が迫る大阪・関西万博だが、工期の遅れや展示内容のわかりづらさなど、ネガティブなニュースが目立つ。2350億円もかけたのだから、期待できる話題もあるはずだ。
どうせなら、万博を楽しんでみようではないか! そう考え、大阪・関西万博催事検討会議の共同座長を務める大﨑洋氏に直撃してみると……。
「太陽の塔みたいなレガシーになるんちゃう?」
2月28日に完成した大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」の屋上に上ったときの心境を、大﨑洋氏はそう振り返る。
「思わず『おぉ、やば!』と言っちゃいました。会場がある『夢洲』は大阪湾に突き出すように造られた人工島。大阪、兵庫、和歌山と関西の街をぐるりと一望できて、海の香りがする風が気持ちいい。世界中の人が集まる活気の中で、あの風景を眺めたら、関西、いや日本のイメージも新しいものになるんじゃないかな」
伝統的な「貫」という木組みで造られた大屋根リングは全周約2025メートル。会場を一周する円の形には「多様でありながら、ひとつ」という理念が込められ、3月4日には世界最大の木造建築物としてギネス世界記録に認定された。
大﨑氏が共同座長を務める万博催事検討会議は、万博を彩るイベントの案や編成方針を話し合うためのもの。吉本興業会長の退任と前後する2023年5月から大﨑氏は万博の顔役として情報発信に注力してきた。取材を行ったのは3月初旬。開催まで約1カ月となり、着々と準備が整いつつあるが、「万博のよくない評判ばかりが目立っていてね」と大﨑氏はこぼす。いわく、その要因のひとつは「目玉となるパビリオンの展示内容が、現時点でも一般の人にはわからないこと」だという。
「情報発信が遅れているのは、催しとしてよくないね。何を見られるかわからなければ、お客さんは期待しようもないですから。ただ、出展者側の気持ちも理解できます。国や地域を背負っているから、情報を出すにしても万全を期したいという気概が強い。だから、いざ始まれば、そうした気概に引けを取らないものを見てもらえます」
確かに現状では具体的な展示内容は把握しづらい。ネットで世界中の情報が得られる時代に、大金をかけて万博を開催する意義はあるのか?という疑問が市井から発されるのは無理もない。
だが開催の意義を語るとき、大﨑氏が描くビジョンは明確だ。個人主義の尊重や価値観の多様化、SNSによる情報の断片化とフィルターバブル||20世紀末からのこうした変容によって、「豊かさ」や「未来」という言葉から思い浮かべる風景が人それぞれ異なるのが当たり前になった現代。そこで一度立ち止まり、共に生きるために分かち合える地盤を模索すること、これが万博にかける大﨑氏の願いだという。
大﨑 洋(おおさき・ひろし)
1978年吉本興業(現・吉本興業ホールディングス株式会社)に入社、お笑いコンビ「ダウンタウン」の初代マネージャーを務める。2009年代表取締役社長就任、19年代表取締役会長就任。23年の取締役退任後、日本国際博覧会協会の『大阪・関西万博催事検討会議』の共同座長に就任。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局 「わくわく地方生活実現会議」委員。内閣府知的財産戦略本部構想委員会委員。
続きはサイゾーpremiumへ