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KIBA×マコト インタビュー対談後編 ~「やればできる」は、できた人の言葉だ

マコト x KIBA
マコト x KIBA 撮影:石川真魚
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 GARGOYLEのKIBAと、怪人二十面奏のマコト。前編では、二人の出会いから、互いに受けた影響、そしてバンドという場所をどう背負ってきたのかを語ってもらった。

 後編で二人が向き合うのは、より根源的な問いだ。歌が上手いボーカリストと、ライブで心を刺すボーカリストは何が違うのか。音源は、もはやCDが売れる時代ではない今、どんな役割を持つのか。そして、長く活動を続けることは、表現者に何を残すのか。

 それぞれの場所で第一線に立ち続けてきた二人の言葉から浮かび上がるのは、技術や成功だけでは語れない、ライブハウスの表現者たちの現在地だった。

――「歌唱力がすごく高いボーカリスト」と、「ステージで見てかっこいい、刺さるボーカリスト」には、どんな違いがあると思いますか?

マコト:僕自身、ここ数年でようやく「歌」というものを理解してきたのかなと思っているんです。出会った頃なんて、本当に自分が歌えていなかったので。

もちろん、自分がやっていることや、自分が出しているものには今も自信があります。ただ、歌唱力という部分だけで見たときに、自分の歌をそこまで好きだったわけではないし、過去の音源も正直あまり聴けないんです。

だから、歌が上手い人を見ても「ああ、上手いな」としか思えないところがある。でもそれって、多分みんなそうなんじゃないかなと。ステージを見ていて歌が上手い人はいっぱいいるけれど、「また見たい」と思うかどうかは別ですよね。歌だけならCDを聴いていればいい、という話にもなる。

僕はライブがすべてだと思っているんです。ライブに来てもらわないと話にならない。もちろん最低限、歌えないといけないのは当然です。でも、ライブで「また見たい」と思ってもらえるかどうかは、歌唱力だけではない。人を引きつける何かがあるかどうかだと思います。

――KIBAさんも近い考え方ですか。歌が上手いことと、パフォーマンスとして刺さることは別物だと。

KIBA:別物だと思います。スポーツやオリンピックのような世界なら、上手いに越したことはない。勝ち負けという絶対的な基準もありますから。

でも、僕らがやっているのは芸術です。絵でも、こういう絵が好きな人もいれば、別の絵が好きな人もいる。だから、誰かにちゃんと伝わる「自分だけのもの」を出せるかどうかの方が重要だと思います。そのために最低限の技術は必要でしょうけどね。

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マコト

マコト:そもそも、自分たちがやっている音楽はかなりマニアックなんです。万人受けする世界観の音楽ではない。怪人二十面奏もそうです。

もし僕にものすごい歌唱力があったら、万人受けする歌を歌っていたと思うんです。でも、僕はそこじゃないと思っている。少し偏っているかもしれないけれど、そういうバンドに刺さる人は必ずいる。だから、すごくピンポイントに、そういう人に向けてやっている感覚です。

過去には「もっと万人受けする曲を作りなさい」と言われたこともありました。でも今のバンドになってからは、自分がやりたいことだけをやるようになった。好きな人はめちゃくちゃ好きで、引っかからなかった人は一生聴くことがないかもしれない。でも、一度刺されば、もっと深く好きになってくれる。そういうバンドを目指しています。

KIBA:十代や二十代から一般受けするものだけを一生懸命やってきた人たちと、今さら僕らが戦えるわけではないですしね。僕らは、今やっていることをずっとやってきた。それには自信がある。でも、そっちばかりをやってきた人も世の中には山ほどいる。その人たちと戦おうとは思わない。自分ができることをきっちりやるだけです。

――お二人ともライブを重視されていると思います。一方で、音源はライブに来てもらうためのフックにもなりますよね。音源を作るときに意識していることはありますか?

マコト:音源を作るときも、新しい曲を出すときも、絶対にライブのことを考えています。ライブのノリのために編曲することもあります。

正直、時代もあるかもしれませんが、音源そのものはそこまで重要ではないと思っています。結局、ライブやツアーをするためのものなんです。だからメンバーや作曲者には、常に「ライブの絵を浮かべて作ろう」と言っています。ライブのノリはものすごく考えていますね。

KIBA:僕も、コーラスワークなどはライブの感じを想像して作っています。お客さんに「わーっ」と言ってほしいとか。

音源はライブのガイドだと思っています。テキストというか、これを聴いて来てくれたらライブを楽しめますよ、というもの。新しい曲を何も知らずに来ても楽しみにくいじゃないですか。音源を聴けば「ここで盛り上がるんだな」とわかる。あとは、ライブでは伝わりづらい歌詞をじっくり読んでほしい、というところですね。

――音源を出すタイミングには、ビジネス的な意識もありますか?

マコト:どうしてもそうなってしまう部分はあります。ただ最近は、音源を出したからツアーをするというより、ツアーを決めてから「ツアー会場でグッズとして音源を売ろうか」という感覚に近いです。

会場限定で売ろうか、とか。アルバムはちゃんとコンスタントに出したいですが、シングルに関しては、僕はもうグッズだと思っています。

――KIBAさんは、現在の体制になってから正式な音源はまだ出していないですよね。

KIBA:何回か作ろうとはしたんです。歌詞を書いて、ギターの子が曲を作ってくれたりもしました。でも一人になったから頑張らなきゃ、という気持ちで肩に力が入りすぎていた。後から見て「この歌詞、嫌だな」と思ってしまったんです。

ようやく今年、ちゃんと作ろうかなと思って、今また歌詞を書いているところです。そこそこ書きました。

――アルバムですか?

KIBA:そうでしょうね。もしかしたら、これが人生最後かもしれない。わからないですけど。

マコト:アルバムを作るのって、ものすごく体力というか、カロリーを使うんです。僕も毎回、アルバムに関しては「多分これが最後かもしれない」と思って作っています。

KIBA:一人になって最初、という意識が強すぎたんでしょうね。もっとすごいものを書きたい、もっと驚かせるものを書きたい、という気持ちばかりになっていた。後で読み直すと「これ、俺の歌詞かな?」と思ってしまう。ちょっと違うな、と。

――作詞をするときは、どんなことをイメージしていますか?

マコト:多分、KIBAさんもそうだと思うんですけど、普段から歌詞を書きためたりはしていないですよね。

KIBA:何も書いていないですね。

マコト:僕もそうです。アルバムを作るタイミングで、締め切りが近づいてきたから書くぞ、と机に向かう。普段から書きためているわけではないので、常に空っぽの状態です。

だから、書けるときはめちゃくちゃ書けるし、書けないときは全然書けない。あとは、楽曲をもらったときにしっくりくると、すぐに書けることがあります。やっぱり曲は大事だと思います。

僕は絶対に曲をもらってから歌詞を書くので、「歌詞をすぐ書きたくなるような曲を書いてくれ」と言っています。曲をもらった瞬間にパッと書ける曲は、ライブでメインになったり、リード曲になったりすることが多いんです。そういう曲は作詞がすごく早い。

KIBA x マコト
KIBA x マコト

――KIBAさんはどうですか?

KIBA:僕はまちまちですね。ただ、曲をもらってから書くパターンの場合、その曲が持っている雰囲気や構成、メロディに合わせた文字数という「不自由さ」がある。それがいいんです。

自由すぎると難しい。不自由な方が、案外、自分の能力が出しやすいことがあるんです。この曲調、この雰囲気なら、自分の中ではこれだな、という書き方をしていたので。その制限が、ものを生み出す原動力になることはありました。

――解散していくバンドや、音楽を辞めてしまうミュージシャンも多い中で、続けられる理由は何だと思いますか?

マコト:僕にはこれしかないんです。他にやることも、やれることもない。

もっと若い頃だったら、辞めて別のことができたのかもしれない。でも今から何ができるだろうと考えると、結局これしかないんだなと思います。自分では器用な方だと思うので、いろいろできそうではあるんです。でも、ずっと続けているということは、これしかないということなんでしょうね。

もちろん、求めてくださる声があるから続けられているのが一番です。でも……やっぱり、他にやりたいことがないんです。

KIBA:僕の場合は、やっていて楽しいからですね。嫌な思いもそんなにしないし、やりたいことしかやっていない。これがある方が自分の人生は楽しい。

ただ、今話を聞いていて思ったのは、もしこれがなくなったら自分は何者なんだろう、ということです。僕は「GargoyleのKIBA」として生きてきた。でも、その冠を取ったときの自分は何者なんだろうと、ふと思いました。

それになるのが怖いのかもしれないですね。ずっとこれで生きてきたから。小心者なので、怖がっているのかもしれません。でも、楽しいというのは大前提にあります。

――CDが売れる時代から、音楽を取り巻く環境は大きく変わりました。バンドや音楽活動、ビジネス面に対する考え方に変化はありましたか?

マコト:やっていることは変わらないです。最近は配信やデジタルシングルがありますけど、パッケージにして出すことには、自己満足の部分もあると思います。

今でもCDを作るときは、パッケージも含めて面白いことをやりたい。これをみんなが喜んでくれているのかな、と思うこともありますけど、自分の原点はそこにあると思っています。

マコト x KIBA
マコト x KIBA

――今でもフィジカルにはかなりこだわりたい?

マコト:こだわっていたいですね。時代が変わっても、自分はそういうものを見てきた世代なので。それを今のリスナーやファンに押し付けているのかなと思うこともあります。

でも、さっきも言ったように、僕らがやっていることは一般受けではなく、一部の人にマニアックに刺さればいいと思っている。だから間違いではないと思っています。そういう人たちはCDも買ってくれるし、手間をかけて作ったものに応えてくれる。

数は減ったかもしれません。でも、このジャンルだからこそ、今の時代でもフィジカルにこだわっていいんじゃないかと思っています。

――KIBAさんも、もしアルバムを作るならデザインなども含めてこだわりたい?

KIBA:こだわりたいというか、自分が作るものは全部、自分でこだわらなきゃいけないと思っています。僕はただのバンドマンかもしれないけれど、自分の中では芸術家なので。

作品を作る以上、自分がいいと思う芸術を作りたい。それはあります。

――長く活動されてきた中で、今の音楽シーンと昔の音楽シーンで「変わったな」と実感する部分はありますか?

マコト:今日も久しぶりに取材を受けていますけど、こういう機会は本当に減りました。雑誌も含めて、そういう環境は変わったのかもしれません。

ただ、ライブハウスのシーン自体は、あまり変わっていない気がします。チケット代が上がったとか、そういう変化はあります。でもライブハウスの中でやっていることは、そんなに変わっていない。

今の時代に合わせたライブをしようと考えたこともないですし、昔からやっていることは変わらない。だから、あまり変わっていないんじゃないかなと思います。

――KIBAさんはどうですか。Gargoyleはライブハウスの帝王のような存在だったと思いますが、変化は感じますか?

KIBA:僕が最初にライブハウスへ行くときは怖かったんです。少し悪いもののようなイメージがあった。入るとどんな世界なんだろう、怖い世界を見てみたい、という気持ちがありました。

僕は神戸の田舎の高校生だったので、自分が見たことのない世界を覗いてみたいという感覚が最初にあったんです。塀の向こう側にあるような、ちょっとビクビクする雰囲気。そういうものは昔より減ったのかなと思います。

今は健全になったというか、チケットを買えばちゃんと行ける場所になった。それがいい悪いという話ではなく、変化としてはそう感じます。ただ僕個人で言えば、もし当時のライブハウスが今みたいに健全だったら、行かなかったかもしれない。怖くて入りづらい世界を見に行く感じが楽しかったんです。

KIBA x マコト
KIBA x マコト

マコト:そうなのかなと思いますね。今はライブハウスのお客さんも、男性の割合が少ない印象があります。だから、もしもっと怖い場所、入りづらい雰囲気が残っていたら、女の子より男の子の方が多かったのかなと思うことはあります。

――女性ファンを意識した動きはあるんですか?

マコト:必然的に、やっていることがそうなっているから女性の方が多いのかなとは思います。でも、たまに男の子がいてくれると嬉しいですね。

――GARGOYLEは音はかなりゴリゴリで、男性受けに近い音楽でもあると思います。それでも女性ファンも多かったのは何か狙っていたんですか?

KIBA:いや、ないです。女性ファンを獲得するために何かをしよう、という考えは特になかったですね。結果としてそうなっただけです。

ただ、ライブハウスにコンスタントに通う人の割合として、女性が多いのかなとは思っていました。僕らの場合、音源や音に近いイベントのときは男性の割合が一気に増えるんです。でも通常のライブでは女性の方が多かった。だから、継続的にライブへ通う人に女性が多いのかなと思っています。

――男性ファンと接すると、聴いているポイントや見ているところの違いは感じますか?

マコト:違うんじゃないですかね。男性の方がしっかり音を聴いているのかなとは思います。

自分がバンドをやっていなかったとしても、怪人二十面奏みたいなバンドは好きだと思うんです。自分もその立場なら、このバンドを見に行くだろうなと思う。だから、好みが近いんだろうなと感じます。勝手に親近感が湧くというか。

男性でもこういうジャンル、こういう世界観のバンドが好きなんだと思うと、自分のセンスに近いから「いいセンスしてるな」と思います。それは女性のファンにも思うことですけどね。

――最後に、今後の活動の展望を聞かせてください。

マコト:景色に関しては、悪いよりいい方がいいな、くらいです。目の前の目標を一つづつクリアしていく中で、いい方向に進めばいいなと思っています。

ただ、自分にはこれしかないので、一人でも多くの人に聴いてもらいたいし、もう少し知ってもらえるように頑張りたいという気持ちはあります。

ありがたいことに、ツアーをやっても新しいCDを出しても、「このCDで初めて聴きました」という人が毎回いるんです。10年やっているのに、と思うんですけど、そういう人がいる。そう考えると、まだまだだなと思います。

もちろん万人受けしたいわけではありません。でも、こういう音楽が好きな人全員には届いてほしい。全国的に見れば、そういう人は結構な数いると思っています。そういう人たちが集まってくれたらいい。アンダーグラウンドな場所でやらせてもらっている以上、その中の一番になりたいです。

KIBA
KIBA

――KIBAさんはいかがですか。

KIBA:やっぱり、自分だから伝えられることはあると思っています。

 最近だと、オリンピックや他にも色々見ていて思うんです。勝った人がいい言葉を言ったり、負けた人が「悔しい」と語ったりするじゃないですか。そういう言葉は、僕の耳にも届くくらい、世の中にたくさん出てくる。「やればできる」という言葉もそうです。心に残る言葉が多いけど、それが僕の耳にまで届いているのは、結局、やってできた人の言葉だからなんです。

 オリンピックに出て「悔しい」と言える人もいる。でも、そのオリンピックにすら出られなかった人もいる。3歳からずっと、24時間その競技に向き合ってきたけれど、それでも出られませんでした、という人がたくさんいると思うんです。その人たちの言葉は、僕らのところにはなかなか届かない。でも、その人たちの言葉にも、本当は届くべきものがあると思うんです。

 だから、僕が言った言葉なんて、そんなに多くの人には届かないと思っています。でも、それでも誰かには伝えたい。「やればできる」なんて、やってできた人が言った言葉です。死ぬほどやったけどできませんでした、という人はたくさんいる。多分、そっちの方が圧倒的に多い。でも、みんなの耳に届くのは、やってできた人の言葉ばかりなんです。

 だから僕は、僕にしか見えていないもの、この立場だからこそ見えているものを、できるだけ伝えたいと思っています。
(文・構成=編集部 写真=石川真魚)

最終更新:2026/06/14 18:00