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世界興収1位奪還『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』 “映像追加商法”は広がるのか?

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 マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の劇場映画最新作『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』が、12月18日に日米同時公開される。その“おさらい&予習”として、2019年公開『アベンジャーズ/エンドゲーム』の再上映版にあたる『アベンジャーズ/エンドゲーム:アンコール』が9月25日(日本では9月23日)から公開。当初は10月8日までという期間限定だったが、オマケの追加映像が背中を押す形で好調、一部劇場で上映延長されている。

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特別映像追加→因縁の『アバター』から1位奪還

 本作は『ドゥームズデイ』へと続く特別映像が追加された内容で、北米では公開3日間で2600万ドル(約40億円)というロケットスタート。10月4日には『エンドゲーム』および『エンドゲーム:アンコール』の合計世界歴代興行収入29億2546万ドルを稼いで『アバター』が持つ同29億2371万ドル(約4590億円)を上回り、No.1に躍り出た。

 もともと2019年公開時、『アバター』を抜いて世界歴代興収1位になっていた『エンドゲーム』。2022年に『アバター』が再上映されたことで2位に転落していたところ、この再上映期間中に『アバター』を抜き返し、1位を「奪還」したことになる。

 ちなみに本作で追加された特別映像の尺は上映館によって異なり、「スタンダード版」が2分、「INFINITY VISION版」が5分、オリジナルの3時間1分にそれぞれ足されている。たった数分のオマケ付き再上映がビジネスとして効果的であることを示すなか、今年7月31日に日米同時公開された『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』も、新規シーン追加で再上映計画があることを海外メディア「THE RIVER」が伝えている。

『スパイダーマン』シリーズとしては、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)が、2022年に約11分の新しい映像を追加した『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム THE MORE FUN STUFF VERSION』として再上映されたことがある。“もっと楽しいバージョン”とは、ものは言いようだと思わざるを得ない……のはさておき、この特典商法ならぬ、特別映像追加商法。まだ見たことのないシーンがあるとなればファンの呼び水とはなるだろうが、これは今後、まんまと映画界のトレンドになってゆくのか。映画批評家の前田有一に見解を求めた。

『エンドゲーム』後の「マーベル離れ」に焦るディズニー

 単純な「再上映」や4Kリマスターではなく、“付加価値”として新たな映像をつける商法について前田氏は、「かなり邪道ですよ」とバッサリ。「ビジネス臭しかない」と冷めた目を向ける。

「よく、DVDにディレクターズカットや特典映像がついている場合がありますが、あれはコレクターズアイテムですよね。あくまでもファンを喜ばせるために、泣く泣くカットしたものや、オフショットを入れたものです。それが、数分でいいから“見せていないもの”を付け足せば客が来るだろうというのは、ファンのためというよりは自分たちのビジネスのためでしかない」(前田氏、以下コメント同)

『アベンジャーズ』に関していえば、“焦り”も透けて見えるという。

「そもそも『エンドゲーム』で、初期『アベンジャーズ』の物語としては一応区切りがついたはずでした。映像を追加したら、そのエンディングが台無しになってしまいます。ファンにしてみれば、終わったんじゃなかったっけ? あれで完成形じゃなかったの? と微妙な気持ちにはなる。

 もちろん、だからこそ(MCUを傘下に持つ)ディズニーは『ドゥームズデイ』への繋ぎとしての役割があることを強調することで、離れかけたファンの心をもう一度取り戻し、収益の最大化を狙っているのでしょうけど、今は受け手の感度も上がっているから、『私たちの財布を当てにしてるな』と見透かされている(笑)。熱心なファンは、それを承知のうえで見に行くということです」

 MCUの『アベンジャーズ』シリーズ自体が完結したわけではないのでややこしいが、実際、『エンドゲーム』後は勢いがない。

「シリーズを牽引してきたメインヒーローがいなくなり、新キャラや新ストーリーを投入して年間何本もの映画やドラマを量産した結果、脚本から映像に至るまで、クオリティの低下が露呈しました。また見る側には、キャラクターの関係値などが複雑すぎて『もういいや』とマーベル疲れが発生。ついにディズニーの社長がペースを落とすと言ったけど、そう言わざるを得ないほどにファンからの反発を招きました」

1本見るのに15話の予習が必要→最低記録

 ディズニーは、「Disney+(ディズニープラス)」の会員数を伸ばすためにコンテンツを乱発していた時期がある。しかしスタジオのキャパシティを超えて粗製濫造状態となり、ファンが離脱。2023年は、評価も散々だった『アントマン&ワスプ:クアントマニア』や『マーベルズ』など、公開映画がことごとく成績不振だった。

 なかでも『マーベルズ』は量産体制が裏目に出た顕著な例だ。同作に登場する主要キャラの背景を完全に理解するためには、「Disney+」独占配信のドラマ『ミズ・マーベル』全6話(1話あたり50分前後)と『ワンダヴィジョン』全9話(1話あたり30〜1時間弱)を追加で見る必要がある。

『エンドゲーム』以前は映画館で上映される作品を追えばよかったのに、配信による何時間もの予習が前提となれば、面倒にもなる。頑張って見たところでクオリティがイマイチとなれば、「もういいや」と諦めの境地に達するのも無理はない。もっとも、『マーベルズ』においては同年7月~11月に及ぶ大規模ストライキで思うようにPRができなかったことも一因とされているが、結果として全世界興収は約2億500万ドルとMCU史上最低を記録した。

 雑な量産が不振を引き寄せたことは明白すぎるほど明白で、さすがの米ディズニーのボブ・アイガーCEO(当時)も、2024年5月7日に行われた四半期決算発表会にて「量より質」の重視を宣言。同時に、「これまで年間4本だったテレビシリーズを年間2本程度に減らし、映画の制作本数は年間4本だったものを2本、多くても3本に減らすつもりだ」とした。『ドゥームズデイ』の制作が発表されたのは、そんなこんながあった同年7月末のことである。

「再上映」ビジネスは定着するのか

 なんとかして『ドゥームズデイ』を盛り上げるべく用意された『エンドゲーム:アンコール』に話を戻そう。前田氏は、ディズニーにとってのメリットを3点挙げる。

1)12月公開予定の新作映画を宣伝できる。
2)コストをかけずに「お得感」をアピールできる。
3)『アバター』を超えるかと話題を活性化できる。

「新作映画の宣伝になるのはもちろん、数分でも特別映像があるというのは気にならざるを得ない。かつ、『アバター』とはこれまでに世界歴代興収を抜く・抜かれるという布石があり、チャンピオンマッチとして話題を振りまける。もちろん、こんなことができるのは限られた巨大IPだけですが」

 ただの「再上映」よりも、「オマケ付き」のほうがアピール力が強いのは言うまでもない。背景には、少数の大作IPばかりが客を集める現状がある。たとえば2026年の夏、アメリカでは映画興行が累計約47.6億ドルを叩き出し、夏興行の歴代記録を13年ぶりに更新した。内訳をみると、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』『オデュッセイア』『トイ・ストーリー5』の3本で約19.9億ドルと全体の4割以上を占めるのだ。

「2024年ぐらいから、アメリカでは再上映が大きなビジネスになっています。というのも映画館で『稼げる』新作がないんですね。コロナ禍で業界が停滞していたところにストライキがあり、かつ配信が普及してきた。映画自体は作られていても、映画館が回すのは手堅く集客できる“つよつよIP”ばかりになり、そのワリを食う中小規模の作品はそれなら配信のほうがいいやという判断をするようになります。

 やむを得ずノスタルジックな映画を上映してみたら、意外と集客することがわかったと。2014年公開の『インターステラー』なんて、公開10周年の2024年12月に全米165館で再上映された時、初週の興収が460万ドル(約6億8000万円)という異例のヒットとなりました。これは予想外に儲かるなと気づいた(笑)。新作を作るのに比べたら、比較にならないぐらい安上がりで稼げますから」

 逆説的だが、動画配信サービスの普及が人びとの足を映画館に向かわせる側面も大きいという。

「(配信で)家でいつでも見られるようになったら、『映画館で観ること』にお金を払う価値が出てきました。つまり、映画館で見るものは新作にこだわらなくて良くなったということです。別に古い映画でもいい。むしろスクリーンで見たことがない映画、もう一度スクリーンで見たいと思えるような映画を上映してくれたら、是非見に行きたいという欲が刺激されるようになります。

 もっと言えば、配信などで“あなたの好み”にカスタマイズされたり、“みんなが見ている”ものがランキング表示されたりと、『押し付けてくるもの』に疲れた人たちにとって、映画館で、その映画館がチョイスした映画を鑑賞するのは合っているともいえます。ただその際、映画館にとっては再上映する建前がほしいし、建前が複数あればなお強い。そういう映画館の思惑に合うように、配給側が『新作前だし、特典もつけたよ、だから上映してね』というビジネスですね」

 大IP時代、映画業界に渦巻く制作・配給側、上映側それぞれの葛藤がうかがえなくもない話だが、「再上映」ビジネスはどこまでゆくのか。

「周年記念とか、何らかイベントにかこつけたものはともかく、ちょっぴり映像を付け足して正規の料金をもう一度払わせる、もしくはパワーアップ感を打ち出すという手法は、やり過ぎたら批判を浴びると思いますよ」

 ビジネスのにおいがギラギラし過ぎると萎えてしまうファンの心を繋ぎ止めるべく、映画業界も必死なのだ。

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(取材・文=町田シブヤ)

町田シブヤ

1994年9月26日生まれ。お笑い芸人のYouTubeチャンネルを回遊するのが日課。現在部屋に本棚がないため、本に埋もれて生活している。家系ラーメンの好みは味ふつう・カタメ・アブラ多め。東京都町田市に住んでいた。

X:@machida_US

最終更新:2026/10/29 16:00