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ソフトバンクとブルワーズはなぜ頂点に立てたのか? 日米王者に共通する「スター不在でも勝てる組織」の秘密

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ブルワーズは、「ブルワリー(醸造所)」という言葉からも想像できるように、「ビールの醸造者」を意味する。すごい名前。(写真:Getty Imagesより)

 2026年、日本ではソフトバンクがDeNAを4連勝で退け、2年連続13度目の日本一に輝いた。

 米国ではブルワーズがレイズを4勝1敗で破り、球団史上初のワールドチャンピオンになった。

 日米の頂点に立った2球団を見比べると、現代野球の勝利を支える組織づくりの重要性が浮かび上がる。

 両球団の強さを考えるうえで、中心に置きたいのは「チーム全体の総量と構造」である。優れた選手をどれだけそろえるか。そして、その能力をどう組み合わせ、誰かが不調でも勝つ可能性を残せるか。

 スターの活躍と、周囲が果たす仕事を一体として捉えることで、今回の日本一と世界一はより立体的に見えてくる。

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スターがいてもいなくても勝てる組織をつくる

 拙著『マネジメント術で読むプロ野球監督論』でも記したが、いまのプロ野球で継続して勝つために必要なのは、「大谷翔平クラスが1人いればなんとかなる」という発想から進み、「スターがいてもいなくても勝てる組織」をどうつくるかという構想である。

 スーパースターは確かにゲームチェンジャーになる。1本の本塁打や圧倒的な投球によって、試合の行方を変えられる。しかし、その選手がすべての打席に立ち、毎試合の全イニングを投げられるわけではない。故障や疲労、相手の対策によって、期待した働きができない日もある。そこでチーム全体の機能まで失われてしまえば、長いシーズンを安定して戦うことは難しい。

 著書で示したのは、例えば打率.270〜.280前後と2桁本塁打を期待できる打者が複数おり、6〜7番まで長打の脅威が続く打線だ。全員が20〜30本塁打を放つ必要はない。出塁する力、走者を進める力、長打で返す力を各所に配置し、そこに強力な主砲が加われば、攻撃はさらに厚みを増す。

 同時に、複数ポジションを守れる選手を育て、守備位置や打順を固定しすぎない。先発には2桁勝利を期待できる投手を複数置き、その後ろにも6〜7回を任せられる候補を用意する。救援陣にも必要人数より1〜2人の余裕を持たせ、勝ち試合の継投を3〜4通り組める状態を目指す。

 その余力は、主力の休養や不調時の入れ替えにも使える。これは編成の理想像であり、すべての選手に同じ数字を求めるものではない。重要なのは、欠けた仕事を別の選手や組み合わせで補えることだ。9人とベンチメンバー全員で勝つモデルを、日常の起用と育成によって形にしていくのである。

戦力の厚さと役割分担による接戦を取り切る力

 2026年のソフトバンクには、もちろん突出した個の力があった。近藤健介は打率.309、32本塁打、108打点、101四球。栗原陵矢は40本塁打、118打点を記録し、正木智也も28本塁打を放った。柳田悠岐は打率.302、19本塁打。周東佑京は30盗塁を積み上げている。

 この顔ぶれから読み取れるのは、攻撃の仕事を複数の選手で分担できる強みだ。近藤が四球で出れば、後続が長打で返す。長打が出ない試合にも、走者の足によって単打を得点へつなぐ余地がある。相手は特定の1人を避けるだけでは、打線全体を抑えられない。

 投手陣にも同じ特徴が表れた。モイネロのレギュラーシーズン登板が7試合にとどまる中、大津亮介、前田悠伍、松本晴がそれぞれ12勝、上沢直之が10勝を挙げた。 勝利数には打線の援護も反映されるが、エース1人の稼働に依存せず、複数の先発が勝ち星を重ねた事実には意味がある。

 選手層の厚さは、単に有名選手が多いことでは測れない。必要な日に先発を任せられる投手がいて、試合終盤に走者や守備を入れ替えられる。主力の状態に合わせて、チームとしての出力を調整できることに価値がある。小久保裕紀監督のマネジメントを評価する際にも、この戦力を使える形に保った点を見たい。

 日本シリーズの4連勝も、毎試合を大差で押し切った結果ではなかった。第1戦から第3戦まではいずれも延長戦。最終スコアは3対1、4対3、2対1、4対2で、すべて2点差以内だった。

 象徴的なのが第3戦である。0対1で迎えた9回、栗原が二塁打で出塁。2死となった後、小久保監督は代走にイヒネ・イツアを送り、牧原大成の右前打で同点のホームを踏ませた。延長10回には正木の本塁打でサヨナラ勝ちを収めた。

 最後を決めた正木の一発には、もちろん大きな価値がある。その打席へ試合をつないだのは、栗原の長打、イヒネの走塁、牧原の適時打だった。主力と控えが異なる能力を持ち寄り、1つの勝利を完成させたのである。

 とりわけ、栗原を代走と交代させた判断は示唆に富む。その時点で必要なのは、次の打席での長打力より、二塁から生還する可能性を高めることだった。選手の序列だけで起用を決めず、局面に必要な能力を選ぶ。こうした判断ができるのも、ベンチに準備された選手がいるからだ。

 4試合の勝利投手も、オスナ、ヘルナンデス、杉山一樹、ヘルナンデスと、すべてリリーフ投手だった。先発が試合をつくり、救援陣が勝負を延長し、その間に打線が突破口を開く。ソフトバンクの日本一は、戦力の厚さが接戦の勝ち方に結びついた結果と捉えられる。

ブルワーズに見られる総合力とデータを現場の判断へ変える力

 一方、ブルワーズは異なる戦力構成で頂点に立った。今季の本塁打は154本でメジャーでは下から2番目。それでも832得点を挙げ、メジャー最多の103勝を記録した。チーム出塁率は.341でメジャートップだった。

 ここから導くべきなのは、本塁打の価値が低下したという結論ではない。長打力で優位に立てないチームが、出塁、走塁、守備、投手力を組み合わせることで、得点と失点の収支を改善できるということだ。

 本塁打は、走者を一気に本塁へ返せる。安打を何本も続ける必要がなく、短期決戦でも強力な武器になる。それだけに、本塁打で得られない得点をほかの方法で補うには、複数のプレーを高い精度で実行しなければならない。

 四球で出た走者が次の塁を狙い、打者が守備の間を抜けば、1本の安打の価値が変わる。守備で長打を単打にとどめられれば、投手が背負う失点リスクも変わる。個々の能力が前後のプレーへ影響し、チーム全体の得失点を動かす。この関係を整えることが、総合力の中身である。

「つなぐ野球」という言葉だけでは、その難しさは伝わらない。つなぐ前に塁へ出る必要があり、つないだ後には走者を返す打球が必要になる。ブルワーズの成功を考える際には、それぞれの過程を支えた能力まで見る必要がある。

 ブルワーズの戦い方は、現代のデータ分析とも結びついている。今季はスイング率が43.8%とメジャーで最も低く、四球率は10.6%でトップだった。積極的に振ることだけが、攻撃の積極性を意味するわけではない。打者にとって大切なのは、どの球なら自分の長所を発揮できるかを把握することだ。

 ボール球を見送るだけでなく、ストライクでも打ちにくい球を無理に仕留めようとしない。反対に、狙った球が来れば初球でも打つ。待つことと攻めることを、打席の中で使い分ける必要がある。

 ここでデータの役割は、選手の判断材料を増やすことにある。相手投手の球種、配球の傾向、守備位置を知ったうえで、実際の球の見え方や試合展開と照らし合わせる。事前の情報と、その日に起きていることを結びつけられて初めて、分析は勝利へ近づく。

 新しい戦い方を探るとは、流行している方法を全員に当てはめることではない。例えば、強振で長打を狙う方法と、逆方向も使って出塁機会を増やす方法のどちらが、その選手と対戦相手の組み合わせに適しているか。数字を根拠に試し、結果と内容を見て修正する。その繰り返しから、チーム独自の優位性が生まれる。

局面に応じて得点の取り方を変える力

 ブルワーズの柔軟性を示すのが、ドジャースとのリーグ優勝決定シリーズでの戦い方だ。このシリーズでは、本塁打数で7対1と上回った。

 年間を通じた特徴が、すべての対戦で同じ形になるとは限らない。長打力を補って勝ってきたチームでも、本塁打を狙える球が来れば打ち込む。自分たちを「足と単打のチーム」と狭く定義してしまえば、得点できる機会を自ら減らすことになる。

 世界一を決めたレイズとの第5戦では、ルーキーのクーパー・プラットが先制打を放ち、5回には下位打線が連打で加点。6回にはウィリアム・コントレラスの適時二塁打とプラットの犠飛でリードを広げた。長打、単打、犠飛を組み合わせ、試合を進めるごとに得点を積み上げた。

 投手陣も、先発のジェイコブ・ミジオロウスキーが6回途中に足のアクシデントで降板した後、救援陣がリードを守った。エースが予定どおり投げ切れなくても、残りのアウトを取る手段がある。ここにも、個の強さを支える組織の備えが表れている。

 自分たちの型は必要だが、型だけでは相手を上回れない。点差、残りイニング、相手投手、使える控え選手によって、必要なプレーは変わる。勝ち方の選択肢を持ち、試合の中で選び直せることが、短期決戦では大きな強みになる。

 パット・マーフィー監督は、選手が自分の役割を理解することを重視している。その姿勢を、私は「考える野球」を組織として機能させるための土台と捉える。

 例えば、同じ外野への打球でも、走者には次の塁を狙う判断が必要になり、打者には送球の間に進む判断が求められる。守備側にも、どの走者を止め、どの塁でアウトを取るかという選択がある。ベンチの指示だけで、こうした瞬間のすべてを処理することはできない。

 だからこそ、選手は自分のプレーが前後の選手に与える影響を理解しておく必要がある。個人として目立つ結果だけを追えば、チームに必要な判断を見落とすことがある。

 反対に、状況を読み、自分にできる仕事を選べれば、打順や出場時間にかかわらず勝利へ貢献できる。イチロー氏も、ブルワーズの戦い方を「考える」野球として評価していた。

 そこから学べるのは、選手の判断力を育てる余地を残すことだろう。データによって準備を深め、試合では選手が相手の変化に気づく。試合後には判断の理由を確かめ、次の機会に生かす。組織の基準と個人の思考がかみ合えば、チームは試合を重ねながら賢くなっていく。

スターの力をチーム全体の勝利へつなぐ

 ソフトバンクとブルワーズの頂点を、スターの必要性を否定する材料にするべきではない。近藤や栗原の打力、ミジオロウスキーの球威のように、相手の対応を上回る能力は、優勝を目指すうえで大きな価値を持つ。

 そのうえで、スターがつくった優位を周囲が得点やアウトへ結びつけ、スターが力を発揮できない場面では周囲が支える。両者の関係が整っているほど、突出した才能も年間を通じたチームの価値へ変わる。

 ソフトバンクの日本一には、主力の長打と代走の生還が同じ勝利の中にあった。ブルワーズの世界一にも、エースの好投と下位打線の加点、救援陣の対応があった。主役が入れ替わっても、勝利へ向かう仕事は途切れなかった。

 これからのチームづくりで問われるのは、最も優れた選手の能力に加え、その選手が働けないときに残る力である。属人的な力への依存を減らし、9人とベンチメンバー全員が役割を果たす。

 スターの輝きを生かしながら、スターの不在にも耐えられる組織をつくる。その構想を、日米の王者はそれぞれの戦力と方法で形にしたのである。

ブルワーズの「考える野球」

(文=ゴジキ)

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ゴジキ

野球評論家・著作家。著書に『巨人軍解体新書』(光文社新書)、(集英社新書)、『システムで読む甲子園』(カンゼン)などがある。『データで読む甲子園の怪物たち』(集英社新書)と『マネジメント術で読むプロ野球監督論』(光文社新書)は発売前重版を記録。連載実績として「ゴジキの巨人軍解体新書」「データで読む高校野球2022」「ゴジキの新・野球論」などを担当し、現在はサイゾーオンラインにて「ゴジキの野球戦術ちゃんねる」を連載中。週刊プレイボーイ、スポーツ報知、女性セブン、日刊SPA!、集英社オンライン、現代ビジネスなど各種メディアでの寄稿・取材も多数。Yahoo!ニュース エキスパートにも選出されている。
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ゴジキ
最終更新:2026/11/05 22:00