大谷翔平、山本由伸、スクバルでも勝てなかった…ドジャースを4連敗に追い込んだブルワーズの「考える野球」とは

大谷翔平の3ランも、ドジャースを救うには届かなかったーー。
2026年のナ・リーグ優勝決定シリーズ。ドジャースは前年に4連勝で退けたブルワーズに、今度は4連敗を喫し、ワールドシリーズ3連覇への道を断たれた。
スクバルを加えた先発陣と実績豊富な打線を擁しながら、なぜ勝ち切れなかったのか。第4戦で失った4点のリードには、このシリーズの課題が凝縮されている。主力の状態が落ち、相手の対策が機能するなかで、勝ち方をどう変えるか。
個々の能力を得点とアウトにつなげる力の差から、王者の敗退を読み解く。
大谷の失速が変えた打線の前提
大谷は左膝や右上腕二頭筋の問題を抱え、レギュラーシーズン最後の18試合では打率.157、0本塁打、1打点にとどまった。ポストシーズンにも万全の状態で入れず、第3戦では6番に打順を下げている。
大谷の不調が重いのは、主砲1人の安打が減るだけでは済まないからだ。先頭から長打を警戒させられれば、相手投手は立ち上がりから慎重な配球を求められる。そこで出塁すれば、後続のベッツらは走者を置いて打席に入れる。大谷がつくる圧力は、打線全体の攻撃条件を変える。
一方、長打が出ない状態では、相手には以前よりストライクゾーンで勝負する余地が生まれる。大谷への対応に必要だった球数や注意を、後続打者へ振り向けられる可能性もある。名前だけで相手を恐れさせ続けることは難しい。故障を抱えた本人の努力と、実戦で発揮できる能力は分けて評価する必要がある。
第4戦の本塁打は、残された力の大きさを示した。しかし、その一振りだけでシリーズの流れを変えられなかった事実こそ、今回のドジャースを象徴している。
しかし、ドジャースがシーズンを通じて大谷だけに頼っていたとするのは正確ではない。9月は18勝7敗。ベッツは月間打率.337、7本塁打を記録し、テオスカー・ヘルナンデスやタッカー、復帰したスミスにも好材料があった。大谷が十分に働けなくても勝つ形は、存在していた。
問題は、その形をポストシーズンで維持できなかったことだ。チームの得点圏成績は、優勝決定シリーズで27打数4安打、ポストシーズン全体では43打数5安打だった。少ない打数の結果には偶然も含まれるが、好機を得点に変えられなかった事実は動かない。
野手に必要だったのは、大谷の代わりに誰か1人が爆発することに加え、それぞれの打席を次へつなぐ働きだった。打てる球を絞り、際どい球を見極め、走者やアウト数に応じて狙いを変える。長打を捨てる必要はないが、長打が出ない時間にも点を取る準備は必要になる。
大谷が打てない日に、周囲がどう勝たせるか。さらに、大谷が打った日に、その得点をどう勝利まで運ぶか。第4戦の敗戦は、両方の課題を突きつけた。主力を支えるとは、励ますことと同時に、プレーによって主力への要求を小さくすることでもある。
スクバル獲得は正しかったが勝利の保証にはならない
夏にタイガースからスクバルを獲得した判断は、短期決戦を見据えた戦力強化として評価できる。実際、ブレーブスとの地区シリーズ初戦では6回1失点と役割を果たした。
山本、スネル、グラスノーにスクバルが加われば、どの試合にも高水準の先発を送り込める。特定の投手に無理な登板を求めず、相手打線との組み合わせも考えられる。投手の能力だけでなく、起用の選択肢を増やした補強だった。
優勝決定シリーズ第1戦でも、スクバルは5回2失点。長い回を投げ切れなかった課題は残るものの、試合は1対2の敗戦であり、打線の援護によって結果を変えられる内容だった。
エース級を加えることは、接戦に勝てる可能性を高める。しかし、接戦そのものをなくしてくれるわけではない。好投を勝利へ変える追加点と、後を引き継ぐ救援陣が必要になる。スクバルの獲得で先発の厚みが増した一方、攻守に残る課題まで解決したわけではなかった。
先発を早く交代させれば、救援陣に任せるアウトは増える。続投させれば、同じ打者との対戦が重なり、相手にも対応する機会を与える。どちらを選んでも負担は残るため、攻撃が追加点を生み、投手起用の余裕をつくることが重要になる。投手陣の強化と打線の働きは、別々の問題として完結しない。
シリーズの分岐点として大きかったのが、山本を立てた第2戦も落としたことだ。山本は今季ポストシーズン初登板の地区シリーズ第3戦では、7回1失点、10奪三振。ところが2度目の登板となったブルワーズ戦では、2回2/3で75球を要し、3失点で降板した。
象徴的だったのは、3回のバウアーズとの対戦である。2死から12球粘られて四球を与え、続くイエリッチに逆転の2点適時打を浴びた。捕手のスミスも、山本の精度が普段ほどではなかったことに加え、相手がボール球を見送り、甘い球を捉えた点を挙げている。
ブルワーズは、山本の球種をすべて打ち返す必要はなかった。難しい球で簡単に打席を終えず、打てる球が来るまで勝負を続ける。その積み重ねが球数を増やし、早い回での交代につながった。対策の実行と山本自身の精度低下が重なった結果と見るべきだろう。
第1戦の敗戦だけなら、山本で取り返して本拠地へ戻る展開を描けた。ところが第2戦では、その期待に応える投手を相手打線が崩した。0勝2敗になっただけでなく、ドジャースが頼りにしていた勝ち方の1つが通用しなかった意味は大きい。
昨年の快投を今年の標準にしてはいけない
山本の早期降板を受け、ベッツは「彼も人間ですからね」と語り、周囲が完璧な投球を当然視しすぎているという趣旨の発言を残した。昨年のポストシーズンで生まれた強い信頼は、チームの財産である。
しかし、信頼が「今回もすべてを解決してくれる」という期待へ変われば、他の選手が担うべき仕事までエースへ集まってしまう。
山本を頼ること自体は自然だ。問われるのは、山本が早く降板した試合でも勝てる準備があるかである。打線が追加点を取り、救援陣が試合を落ち着かせれば、先発の不調はチーム全体の敗戦に直結しない。今回は第2戦を4対7で落とし、その支えが十分に機能しなかった。
短期決戦では、次の登板で修正すればよいという時間も保証されない。4連敗すれば、強力な先発陣に2度目の機会は訪れない。選手層の厚さを生かすにも、目の前の試合を拾ってシリーズを延ばす必要がある。
ドジャースの戦い方を考えるうえで、10月に向けた状態管理は欠かせない。連覇の過程でも、故障や不調に対処しながら主力を大舞台へ送り込んできた。ただし、終盤に落ち込むこと自体を予定された調整と捉えるのは危うい。
2024年9月は16勝10敗で、打線は1試合平均6.23得点を挙げていた。今季も9月は大きく勝ち越している。チーム全体が終盤に失速し、ポストシーズンで一斉に復活するという単純な経過ではない。
重要なのは、チームの勝率と個々の身体状態を分けて見ることだ。周囲が好調なら、故障者を抱えていても勝てる。しかし、相手投手の水準が上がり、弱点を繰り返し攻められる短期決戦では、隠れていた問題が表面化する。
休養で疲労が抜けることはあっても、故障の影響や打撃のずれが必ず解消されるわけではない。実績ある選手の回復を待つ判断と、その日の状態に合わせて打順や役割を変える判断。その切り替えまで含めて、ポストシーズンへの準備なのである。
「考える野球」の実行力と雪辱への思い
ブルワーズの魅力は、選手の能力を打席と走塁の連係へ落とし込むところにある。イチロー氏は2025年7月、殿堂入り式典前日の会見で、考えてプレーする野球の例として同球団を評価した。
マーフィー監督も、まず出塁し、その後に走塁や相手への圧力という選択肢を生み出す考えを示している。その具体例が、第2戦の8回だった。一塁走者ハミルトンの盗塁を助けるため、チョーリオはストライクの直球を見送った。その後はゴロで走者を進め、追加点につなげている。
自分が打てそうな球でも、走者を進めるほうが局面に合うと判断する。そうして得点の条件を整え、後ろの打者へ渡す。この連係には、自分の能力だけでなく、走者と次打者の能力を理解する力が必要になる。
もちろん、すべての打者に同じ見送りや進塁打を求めればよいわけではない。長打を狙うべき打者、走るべき場面、アウトを使う価値がある局面は異なる。その違いを踏まえて選べることに、考える野球の実質がある。
また、この野球は長打力とも両立する。第4戦ではミッチェルが勝ち越し本塁打を放った。出塁と走塁で相手を動かしながら、仕留められる球は強く打つ。小さなプレーを重ねることと、一振りで試合を変えることを同じ攻撃の中に持てるから、相手は対応を絞りにくい。ブルワーズの強さは、得点までの選択肢を複数持っていた点にもあった。
ドジャースにも判断力と献身性を備えた選手はいる。両軍を個人主義と組織力に二分するより、このシリーズではブルワーズのほうが、個々の判断を次のプレーへつなげられたと評価したい。
前年の4連敗は、ブルワーズにとって強い動機になったはずだ。ただ、悔しさの大きさだけで勝敗を説明すれば、今年積み重ねた技術や準備を見落としてしまう。
山本に球数を投げさせる。走者と打者が連係する。得たリードを救援陣が守る。第2戦ではブルワーズの救援陣が打者15人をすべて退け、第4戦でも序盤の4失点後は追加点を許さなかった。雪辱への思いを支えたのは、こうした具体的な実行力だった。
ドジャースは、3連覇を逃したからといって、強打者と好投手を集める方針まで否定する必要はない。必要なのは、主力が本来の力を出せない状況でも、手元にある戦力で勝ち方を組み直せることだ。
大谷の復調を待つ間に誰が得点を生み、山本が苦しむ日に誰が試合を引き受けるのか。その役割を日常から共有し、相手の対策に応じて変えていく。3連覇への挑戦で突きつけられた課題は、次のスターの獲得とともに、すでにいる選手の力をどう結びつけるかにある。
(文=ゴジキ)

