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「昔の音楽だと思って聴いてない」――Z世代のHiiT FACTORYがZARDもマッドチェスターも“懐メロ”にしない理由

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(写真左から)Reyuna(ラップ/ダンス)、Airu(ボーカル)、Yuzuka(DJ/ダンス)のHiit Factory(写真:矢島泰輔)

 90年代から2000年代初頭のダンスミュージックやカルチャーをベースに活動する3人組ガールズグループ「HiiT FACTORY」。

 シンセサイザーを多用したサウンドや、90~00年代のカルチャーを意識したビジュアルから、一見すると「Z世代による90年代リバイバル」の象徴のようにも映る。

 しかし、メンバーたちと話していると、どうもそれだけではない。ZARDやSPEEDからハイエナジーにユーロダンス、そしてファクトリー・レコードとマッドチェスターまで。21~23歳の彼女たちの口から飛び出す音楽やカルチャーの名前は、驚くほど幅広い。しかも、それらを「昔の音楽」として聴いているわけでもないという。

 サブスクリプションサービスを開けば、数十年前の作品も最新の楽曲も同じ画面に並ぶ時代。若者にとって、「懐メロ」と「新譜」の境界は果たしてあるのか?

 HiiT FACTORYが求めるサウンドとカルチャーへのリスペクトについて聞いた。

春ねむりが声を上げる理由

「昔の音楽を聴いている」という意識はない

――HiiT FACTORYはオーディションによって結成されたんですね。

Reyuna もともと、プロデュースチームに「90〜00年代初期の美学やダンスミュージック、ビジュアルなどを提示していこう」というコンセプトがあって、そこからわたしたちのグループが生まれました。

――みなさん21~23歳のZ世代。90年代は生まれる前ですが、どうやって当時の音楽に触れたのでしょうか?

Reyuna わたしはSPEEDのPVを見たことがきっかけです。ただ、それが90年代の音楽だと意識していたわけではなくて、単純に「かっこいい。わたしもこういうことをやってみたい」と思ったんです。

Airu わたしはZARDさんをはじめ、ビーイング系の音楽をよく聴いていました。親が好きだったので、小さい頃から家でよく流れていたんです。

Yuzuka 今はいろいろな時代の音楽をフラットに聴ける時代。わたしも「昔の音楽だから」という意識はなくて、いろいろ聴いているうちに、気づいたらディスコのサウンドにハマっていました。

Reyuna もちろん最近の曲も普通に聴きます。「音楽」というカテゴリーで幅広く勉強したり、掘ったりしていますね。

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Airu(あいる)/2005年2月11日生まれ、21歳。小学2年から芸能活動を志し、アクターズスタジオ北海道でレッスンを重ねる。大阪でダンス&ボーカルグループのメンバーとして約3年間活動したのち、2024年にHiiT FACTORYへ加入。(写真:矢島泰輔)

――そんな3人が今、特にヘビーリスニングしている音楽は?

Airu わたし、マジでZARDさんしか聴かないんです(笑)。プロデューサー(デザイナー・スタイリスト)とSpotifyのプレイリストを共有して、「この曲のここのフレーズがいい」とか、LINEでずっと話しています。もちろん、小松未歩さんや三枝夕夏さんも聴きますけど、坂井泉水さんの佇まいや生き方を知れば知るほど、「カッコいいな」と思うんです。

Yuzuka わたしはハイエナジー(Hi-NRG/ディスコから派生したダンスミュージック)からユーロダンス(90年代にヨーロッパを忠臣に流行したダンスミュージック)、ハウス(80年代にシカゴで生まれたダンスミュージック)あたりを聴いています。ディスコで流れている曲から興味を持つことが多くて、ロニー・ゴードン(90年代にハウスなどで活躍した女性歌手)のアルバムとか、運転中に聴くとテンションが上がります。

――Yuzukaさんの回答、めちゃくちゃ注釈が入ってます。

Yuzuka DJなので、音の良さや気持ちよさで選ぶことが多いです。そして、わたしにとってディーバボーカル(力強く存在感のある女性ボーカル)は特に重要。ドラムの鳴り具合や女性ボーカル、コーラスの気持ちよさは大事ですね。

Reyuna わたしはファクトリー・レコード(78年に英マンチェスターで設立されたレコードレーベル)や、マッドチェスター(80年代後半から90年代初頭に英マンチェスターで盛り上がった音楽ムーブメント)について調べています。

――ロックも聴くんですね。

Reyuna 8月にも「HAÇIENDA(ファクトリー・レコードが開業し、マッドチェスターの中心地となったクラブ)」という名前のイベントを開催しました。ダンスミュージックとロックの融合が気になっていて、映画を見たり、本を読んだりしていますね。

――21~23歳のみなさんからZARD、ハイエナジー、ハシエンダと普通に出てくるのは、なかなかすごいですよ。

Reyuna いずれ自分たちのアルバムにも「FAC〇〇番(ファクトリー・レコードが作品などに付けていた独自の管理番号)」みたいな感じで付けたいですね(笑)。

新譜から何十年前のものまで音楽は「全部」から探す

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Reyuna(れゆな)/2003年10月13日生まれ、23歳。HiiT FACTORYの結成時からのメンバーで、ラップ、ダンスを担当。SPEEDをきっかけに90年代の音楽やカルチャーに興味を持つ。グループでは作詞も数多く手がけ、2026年には「Introduction」で作曲にも挑戦した。(写真:矢島泰輔)

――普段、どうやって音楽を「ディグる(音楽などを掘り下げて探し、新しい作品やアーティストを発見すること)」んですか?

Airu うちらの会話のなかに「ディグる」という言葉が普通に出てくるので、自然とやってるよね。

Reyuna わたしは全部ですね。Xも見るし、インスタグラムでは海外のアーティストをチェックする。Spotifyでは新譜から何十年前のものまで聴きますし、90年代当時の雑誌やCD、レコードも買います。

Yuzuka 歩いていたり、イベントに行ったりしたときに、BGMが気になってShazam(音楽認識アプリを使うこと)することもよくあります。日常的にやっているから、もう特別なことではないですね。

――「昔の音楽を研究しよう」と構えて探しているわけではない。

Reyuna そうですね。普段から「これ知ってる? 面白いよ」みたいな話をして、その延長で気になったものをどんどん掘っていく感じですね。

――3人とも聴いているものはかなり違いますが、「HiiT FACTORYならこのジャンル」という共通認識はありますか?

Reyuna 明確に「これ」というものはなくて、それぞれが好きな音楽ジャンルを詰めていこうという感じです。3人しかいないし、それぞれ好きなものをやっていこうという気持ちです。それが楽曲の幅の広さにつながっているのかなと思います。

――HiiT FACTORYは初期のユーロダンス的なサウンドから、最近はR&Bやジャングル(1990年代初頭にイギリスで生まれたダンスミュージック)まで広がっています。それでも「これがHiiT FACTORY」という軸はありますか?

Reyuna 「自分たちが聴いていて好きな音」あるいは「踊りたくなる音」というところです。それを追求すると、シンセサイザーや当時の機材の音にはこだわるようになる。音そのものや、当時の音へのこだわりはあります。

Yuzuka ライブで使うEOS(ヤマハが80年代末から展開したシンセサイザーシリーズ)はめっちゃいい音が出るんですよ……! EOSとJX(ローランドが80年代を中心に展開したシンセサイザーシリーズ)には、あの頃のダンスミュージックで聴くような音がとても入っていて、めっちゃかっこいい。

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Yuzuka(ゆずか)/2003年12月26日生まれ、22歳。HiiT FACTORYの結成時からのメンバーで、DJ、ダンスを担当。ライブではシンセサイザーも演奏する。ハイエナジーやユーロダンス、ハウスなどを愛聴し、DJとしても活動。「Shinin’ on, Movin’ on」では作詞も手がけた。(写真:矢島泰輔)

Reyuna ふと機材を触って「なんか当時の音っぽいな」と思い、そこから「作曲してみるか」となったりする。囲まれている環境自体がモチベーションになっています。

――そうしたダンスミュージックへのこだわりは、ライブにも表れていますか?

Reyuna 以前よりダンスミュージックの色が強くなっています。最近はステージ上のわたしたちを撮影できるライブも多いですが、「撮ってないで一緒に踊っちゃおうよ!」という思いが強くなっています。お客さんとわたしたちの境目をなくして、ひとつのダンスフロアみたいなところで一緒に踊っていきたいんです。

――踊り方も自由?

Reyuna そうですね。クラブも、ゆったり踊る人もいれば激しく踊る人もいるじゃないですか。何かを強制するのではなく、それぞれ自由に、この音に自分のスタイルで乗ってほしいです。

――そのダンスフロアには、実際に90年代を経験した世代のお客さんもいます。そうした人たちが期待するHiiT FACTORYと、自分たちがやりたいことにズレを感じることはありますか?

Reyuna わたしたち自身が、そういうカルチャーや音楽にリスペクトを持っているところは変わらないので、それが聴いている人にも伝わればいいなと思っています。ファンのリアクションを受けて以前の曲調に戻すことは、きっとないと思います。それをやるとグループの色が変わってしまいます。だから、そういう変化もひとつの幅として楽しんでもらえたら理想ですね。

――元m.o.v.eのMOTSUさんが作った「I.C.Q.」では、みなさんがパラパラを踊っています。リアルタイムで聴いていた世代には、「娘世代の子たちが自分たちの青春時代の音楽をやっている」という感覚もありそうです。

Yuzuka そんなこと、考えたことなかった! わたしたちは「楽しいから」と思って踊っていただけです。

Reyuna わたしたちの最終的な着地点は「楽しかったね」「良かったね」と思ってもらうことです。わたしたちが年代や新しさをそこまで意識していないように、お客さんたちにも世代を意識せずに踊ってほしいです!

(取材・文=千駄木雄大)

「ザ・タイマーズ」と清志郎が残したもの

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(写真:矢島泰輔)

HiiT FACTORY(ひっと・ふぁくとりー)
2022年結成のガールズグループ。90~00年代初頭のダンスミュージックやカルチャーをルーツに、ユーロダンス、ハウス、R&B、ジャングルなどを横断したサウンドを展開する。ヴィンテージシンセサイザーの音色にもこだわり、DJや生演奏を取り入れたライブを展開。近年はよりダンスミュージック色を強め、観客と一体になったダンスフロアを志向している。

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Instagram〈hiit_factory_〉
Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/@hiitfactory

千駄木雄大

1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「東洋経済オンライン」にて「奨学金借りたら人生こうなった」、「ARBAN」にて「ジャムセッション講座」を連載中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)、原作を担当したマンガ『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』(祥伝社)がある。

X:@yudai_sendagi

千駄木雄大
最終更新:2026/10/21 17:37