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盗む、騒ぐ、破壊する「ギャングよりたちが悪い」やりたい放題の10代

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盗む、騒ぐ、破壊する 「ギャングよりたちが悪い」やりたい放題の10代の画像1
店のドアに入場規制についての貼り紙=ニューヨーク・ブルックリンで筆者撮影

 見知らぬ若者が後ろからいきなり肩を組んできた。

「お前、俺をからかっているのか?」

 予期せぬことで少し驚いたが、笑って返すとすぐに腕を解いた。

 ニューヨーク・ブルックリンのマクドナルドの店舗でのことだ。中学生ぐらいだろうか、若者はマクドナルドの商品ではないピザを持ち込んで食べながら、仲間と共に店内で騒ぎ始めた。気にせずハンバーガーをほおばったが、落ち着かないのですぐに店を出た。

 米国のハンバーガーチェーンでは、店内でのトラブルや迷惑行為を頻繁に目にする。この日のこともさほど気に留めていなかったが、それから1カ月ほどたった2月下旬、この店がニューヨークのニュースの主役になっていたので驚いた。20歳未満の若者は親と一緒でないと入店できない、という独自のルールを店が決めたというのだ。

簡単に地下鉄「盗む」ニューヨークの若者たち

「毎日、店をめちゃくちゃにしていく」

 この店はブルックリン中部のミッドウッド地区にある。幹線道路のフラットブッシュアベニューとノストランドアベニューが交差する地点で、地下鉄の2と5のラインの終着駅が目の前にある。

 ミッドウッド地区の交通の要衝であることから、周辺の路上には露店が並び、人であふれている。多くがジャマイカやハイチなどカリブ海地域から移り住んだ移民だ。

 ニューヨーク市立の総合大学であるブルックリンカレッジや公立中学、高校など学校も多く、若者の姿が目立つ。このため、このマクドナルドはティーンエージャーのたまり場になっていた。

 この店のマネージャーによると毎日、放課後の時間になると15~20人のティーンエージャーがやってきて、客に氷を投げつけたり、Uber Eatsなどの配達員から配達されるはずのハンバーガーなどを奪い取って食べたりするという。さらに店内で大麻を吸うなどやりたい放題で、マネージャーは地元メディアに「彼らは毎日、店を荒らし、めちゃくちゃにしていく」と話している。

店舗オーナー決断 若者に大人同伴課す

 2月上旬、スキーマスクで顔を隠したティーンエージャーが店のセキュリティ担当者に危害を加え、店の内側にあるガラスドアをたたき壊した。この店のオーナーは退役軍人の男性で、この事件をきっかけにティーンエージャーの入場規制を決断したという。

 ニューヨーク市警察本部(NYPD)によると、この3年間、この店の中や目の前の路上からの警察への通報は年間約100件にのぼっていた。今年は2月上旬まで29件とハイペースだった。

 ティーンエージャーはマクドナルドにとっては重要な顧客である。しかし他の客と店の従業員が危険にさらされるとなると話は変わってくる。マクドナルドの本部はオーナーの判断を尊重した。

 6月7日、再びこの店を訪れた。ティーンエージャーに絡まれてからほぼ半年がたったが、放課後の時間にもかかわらず、店内は静かだった。騒いだり、暴れたりするティーンエージャーの姿は見られなかった。緊張感に包まれていた店の雰囲気は一変していた。

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18未満の若者は大人と一緒でないと入店できなくなった、マクドナルドの店内
=ニューヨーク・ブルックリンで筆者撮影

 入り口のドアには依然として入場制限を知らせる紙が貼ってある。規制対象は当初20歳未満だったが、現在は18歳未満に絞られた。入場規制への反発の声も多くあったため、規制年齢を見直し、学校のある日の午前8時半から午後5時半の間は、大人と一緒でないと入店できないとしている。

 マクドナルドでは5月、バージニア州フランコニアの店舗でも21歳以下の若者の入店を禁じた。付近にある高校の生徒が連日店内で暴れるからだ。店内で殴り合いのけんかをしたり、顧客が食事をしているテーブルにのぼってダンスをするなどの行為が繰り返されていた。

卒業シーズンでビーチも大荒れ 警察はヘリで高校生追い散らす

 ティーンエージャーに悩まされているのはマクドナルドだけではない。ニューヨークに隣接するロングアイランドは、長い砂浜が続く夏の観光地として市民に親しまれているが、ティーンエージャーのビーチへの立ち入りを禁止する自治体、地域が相次いだ。

 米国は6月が卒業式シーズンである上に、「シニア・カット・デイ」と呼ばれる高校をさぼれる日が伝統的にある。

 この季節は昼夜を問わず高校生らがビーチに集まり、大騒ぎをする。場所によって群衆は数千人規模となり、周辺住民に迷惑をかける。

 昨年は発砲事件が起きており、警察や行政当局が大規模な規制に乗り出した。それでもニューヨーク市から近いジョーンズ・ビーチには6月5日、ニューヨーク市内の高校生が押し寄せ、警察がヘリコプターを使って高校生を追い散らした。

 米国では若年層の犯罪増加が問題となっている。米連邦捜査局(FBI)の最新データによると、未成年者が暴力犯罪で告発されたケースは2023年で前年より約10%、窃盗は約30%増えている。

 ニューヨーク・タイムズ紙の分析では、2024年の18歳未満の重大犯罪の発生件数は2018年より約25%増加しているという。

 ティーンエージャーが暴れることが、それだけで犯罪の増加を表しているわけではないが、ニューヨーク市内では「大人のギャングよりティーンエージャーの方がたち悪い」という声がしばしば聞こえる。

(文=言問通)

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言問通

フリージャーナリスト。大手新聞社を経て独立。長年の米国駐在経験を活かして、米国や中南米を中心に国内外の政治、経済、社会ネタを幅広く執筆。

最終更新:2025/06/23 09:00