在留資格制度の運用厳格化にビザ手数料の値上げ……夜の湯島で働く在留外国人の高市首相へのリアルな声

衆議院選挙で自民党が316議席という戦後最大の勝利を収め、2月に発足した第2次高市内閣。
近年の選挙やSNSで論点になりやすい外国人政策では、在留資格の取得や更新を厳格化する一方、共生施策を充実させながら、資格外で日本に滞在する事態を未然に防ぐ方針を打ち出している。
国民から比較的高い支持を維持し、長期政権も現実味を帯びる高市政権だが、当事者である在留外国人たちは不満や不安を感じていないのだろうか?
在留外国人の現状と在留資格の概要
在留外国人数は2025年6月末時点で約396万人。外国人が就労・留学などの目的で日本に滞在・居住するための在留資格は、現在およそ30種類に分類されるが、ここでは大きく5つに分けて整理する。
まず1つ目は、身分・地位に基づく在留資格だ。「永住者」は在留外国人全体の23.6%を占め、約93万人ともっとも多い。配偶者が日本人の「配偶者ビザ」も、職種・業種に制限なく自由に働ける。この在留資格を得るための偽装結婚には重い罰則があり、金銭を受け取った日本人や仲介したブローカーなども逮捕・処罰の対象となる。
出入国在留管理庁(入管庁)のガイドラインでは、永住許可には10年以上の居住が必要であることなどが定められているが、日本語能力を求める規定はない。政府は永住資格の条件を厳格化し、日本語能力の要件を追加することを検討している。
2つ目は、就労系在留資格(専門的・技術的分野)。働ける職種が在留資格ごとに定められており、学歴や実務経験が必要なケースが多い。「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」「教育」「芸術・報道」などが代表的で、技術・人文知識・国際業務(通称・技人国)の資格者は永住者に次ぐ規模を占める。エンジニアや通訳、語学教師といった専門性の高い職種が想定されるが、入管庁は一部が単純労働に従事しているとし、資格外就労を防ぐ方策を検討している。
3つ目は、特定産業分野の人手不足解消のため2019年に導入された「特定技能」。1号と2号に分かれ、受け入れ対象業種は1号が19分野、2号が11分野となっている。即戦力の外国人労働者を受け入れる制度で、在留期間は1号が原則5年。熟練技能が求められる2号は更新すれば無期限で、「家族滞在」の在留資格を取得すれば家族帯同も可能、受け入れ人数の上限は設けられていない。
一方、介護や農業、自動車整備など幅広い分野で人材を受け入れる1号の取得には、技能試験と日本語試験の合格が必要で、家族帯同は不可。また、受け入れ人数も1号は19分野で計80万5000人の上限があり(※2029年3月末まで)、外食業については4月13日から新規受け入れが停止されている。
在留資格制度の運用を厳格化・ビザ手数料も引き上げへ
4つ目が「技能実習」だ。発展途上国への技術移転を目的に設計された制度だが、実態としては安価で人手不足を補う労働力の確保に利用されているとの指摘もあった。2027年には「育成就労」制度へ移行し、人材育成と労働者保護を両立させる方針だ。受け入れは組合などの監理団体を通じるのが原則で、期間は原則3年。育成就労では、3年で特定技能1号への移行が想定されている。
最後に、留学・家族滞在など本来は就労目的ではない在留資格者が、許可を得てアルバイトできる「資格外活動許可」という仕組みがある。留学生の生活費補填や、外国人労働者の配偶者・子どもの就労などが該当し、週28時間以内などの制限が設けられている。
東京で週28時間働いた場合のアルバイト収入は月15万円程度とされるが、仕送りなしで生活するには厳しく、複数の職場を掛け持ちして制限を超えて働くケースもあるとされる。こうした不法就労を防ぐため、入国時に原則許可していた仕組みを見直し、就学状況などを個別に審査する方式への切り替えが検討されている。
また政府は、入管法改正により2026年度中にはビザ発行・更新手数料の引き上げも予定している。1978年以来の改定で、欧米諸国と比べて格安だったことから、主要国とのバランスが考慮されたことに加え、虚偽申請の抑制も狙いとされる。
さらに、日本国籍を取得する「帰化」についても、居住要件を現行の「5年以上」から「10年以上」へ移行する方向で検討が進められている。
多国籍な女性が集まる店で政治トークを振る
国際色豊かな女性キャストが接客する飲食店やクラブなどが集まる「湯島」。東南アジア、東アジア、アフリカ、南米など、多国籍なスタッフと客で夜ごと賑わいを見せるカオスな歓楽街だ。
そんなエリアのガールズバーで働くフィリピン出身のYさん(29)は、両親が幼い頃に離婚。4年前に母親が日本人と再婚したことを機に来日し、「技人国ビザ」ではなく「家族ビザ」を持ち、平日は英語教師として働いている。
「フィリピンでは看護師として働いていたけど、日本で看護師免許を取るには漢字が難しすぎて覚えられない。そこで、英会話塾の先生の仕事は正社員で、月に数回、週末に湯島で働いているの。もともとお酒が好きで、このお店は飲みながら働ける趣味・副業という感じかな」
来日当初は母親の再婚相手の日本人男性と3人で暮らしていたが、現在は豊島区でひとり暮らしをしている。新しい父親が保証人になってくれたこともあり、マンションはスムーズに借りられたという。
「日本はフィリピンよりも安全で暮らしやすいけど、最近は物価高で生活費が高くて大変。家族ビザも必要書類が多くて、とても面倒。外国人のなかには真面目な人もいるけど、悪い人がいるのも理解できる。日本の政治に思うこともあるけど、(ロドリゴ・)ドゥテルテ(前)大統領よりは全然マシだよ」(同)
続いて訪れたスナックで、「ちゃんとしたビザがないと、この店では働けないから、ビザで苦労している人は周りにはいないかな。もちろん学生もいないし、けっこうちゃんとしている店なのよ」と話すのは、ブラジルから日本に来て20年近くになるというRさん(40代)。日本人男性と結婚した過去があり、永住ビザを持つ。
もっとも、「この半年くらいは新しいスタッフが入ってこなくなっていて、キャストが全然足りていないよ!」とのことで、政府方針の影響をまったく感じていないわけではないようだ。
「悪いガイジンは母国に帰らせればいいね。真面目に働いて税金を払っている私たちも、そのほうがいい。自分の国じゃないし、日本で守るべきルールには従わなきゃ。当たり前よ。何でも値上がりしているから、個人的にはそっちの問題をどうにかしてほしい。最近、赤羽のマンションの家賃が2万円も上がってびっくりしたわ」(同)
外国人政策の焦点となる「厳格化」と「共生策」
最後に多国籍パブで話を聞いたのは、タンザニア出身で来日5年目のHさん。名古屋市にいる親族に誘われて家族ビザを取得し、1年ほど同市に住んだ後、東京で2年間ひとり暮らしを経験。現在は友人2人と埼玉でルームシェアしている。
Yさんの店もそうだが、この店でも昨年秋頃、外国人従業員の在留カードの立入検査があり、問題なしと判断されたという。入国管理局の入国警備官や警察官によって行われる立入検査は、外国人従業員が多い深夜酒類提供飲食店などが対象になることが多い。
「今の首相は外国人が好きじゃないかもしれないけど、日本人だから自分の国を大事にしているのはわかるよ。でも、日本が嫌になって母国に帰るとか、別の国に行くとか、私の周りでは聞かないから、まだ大丈夫かな。それに、日本の男性は優しいからね」
在留資格制度の運用の厳格化を掲げる一方、外国人への日本語教育が自治体や地域のボランティアに依存している現状などを踏まえ、政府は外国人が日本語や社会のルールを学びやすい環境整備も進めるとしている。
在留資格の厳格化は、真面目に働いてきた長期在留者ほど影響を受けるリスクも指摘されているが、「厳格化」と「共生策」のバランスは、今後も外国人政策の大きな焦点となりそうだ。
(取材・文=伊藤綾、編集=サイゾーオンライン編集部)