「首が回らなくなったら自己破産すればいい」――デリヘルを呼びすぎてリボ払い地獄に堕ちた男性の後悔

クレジットカードの毎月の返済額を一定にできる「リボルビング払い」。一見すると便利な仕組みだが、その裏では利息が膨らみ、返済に苦しむケースも少なくない。
近年では、買い物や支払いをスナック感覚でリボ払いへ変更する若者も増えている。
こうした選択をした人々を「愚かだ」と断じるのは容易だ。しかし、その背景には、避けがたい事情やカード会社の巧妙な仕組み、さらには他人につけ込まれているケースも存在する。
なぜ人はリボ払いを選んでしまうのか?
大学に入って知ったダンスの楽しさ
リボ払いとは「リボルビング払い」の略で、クレジットカードの利用金額や件数にかかわらず、毎月の支払金額が一定になる仕組みだ。利用金額は利用残高に組み込まれ、「毎月1万円ずつ」など、月々の支払金額を自分で設定できる。
高額な商品を購入した際や、ひと月の出費が増えたときにリボ払いを利用すれば、毎月の支払金額を抑えられる。支払時にリボ払いを指定できるだけでなく、請求額を見て使いすぎに気づいた場合など、あとからリボ払いに変更することもできる。
一見すると便利な仕組みだが、利用にあたって手数料が発生する。利用しすぎると手数料が増え、支払総額が高額になる場合があるため、無理のない範囲で計画的に利用することが大切だ。
しかし、計画的に利用できなかったため、手数料が「雪だるま式」に膨れ上がり、その返済に苦労している人は大勢いる。
現在、コールセンターで働く森慎太郎さん(仮名・36歳)は、20代の頃から始まったリボ払いの支払いを、いまだに続けている。
森さんは小学校、中学校と親から無理やり勉強させられていた。中学受験もさせられたが失敗し、地元の中学校へ進んだ。
「親の見栄でいい中学、いい高校を目指させられました。高校は男子校で、大学までエスカレーター式の学校で、いい成績を取っていれば大学に進学できます。学校の成績が悪いと親にグチグチ言われるため、ちゃんと勉強をしていましたね。親は大学名しか見ていなかったので、学部などは自分で決めてよかったです。そこで、昔から興味があった芸術系の学部に入りました」
大学に入り、コンテンポラリーダンスにハマった森さんは、真剣にダンサーへの道を模索していく。勉学もきちんとこなしながら、芸術を論じることにも夢中だった。
「舞台に出て踊ったりして、本当に充実した大学生活でした。大学を卒業したら芸術関連の仕事に就いて、コンテンポラリーダンスを続けたいと思っていました。しかし、大学在学中に腰を痛めてしまい、ダンスができなくなったんです……。そこから、舞台演出などをしていたのですが、やはり体を使って何かを表現したいという欲求に勝てず、どんどん心を病んでいってしまいました」
ダンスを忘れるために、就活でまったく関係のない業界を選んだ森さん。大学を卒業し、出版社に入りマンガの編集者になった。実家を出て親からの束縛からも解放された。
しかし、仕事を続けていても心にモヤモヤが残った。何か大切なものが失われてしまったかのようだった。
「好きなマンガの編集をしていても、心が空虚になっているような感覚でした。ダンスをしていた頃のように自分が奮い立つ気持ちに戻りたかったんです。もし、今の仕事を辞めてまた舞台の裏方に戻ったとしても、プレイヤー側に嫉妬してしまうかもしれない。『自分のほうがもっと踊れるはずだ』と思ってしまうに違いありません。この腰の持病さえなくなれば……」
そんな中、森さんは会社の上司と揉めて仕事を辞めてしまった。そこで、生活費を稼ぐためにダンスとは関係ない劇場でのアルバイトを始めた。まだ舞台の仕事に未練があったのだ。だが、新しい仕事をしていても虚無感は続いていた。
この虚無感を解消するにはどうしたらよいのかと考えた結果、今までやったことのないことをしようと考えた。それが風俗に行くことだった。
まさかの急展開! リボ払いでデリヘル利用
「今まで女性と接してきたことがなく、避けてきた部分もあります。大学でチャラチャラしていた人たちも嫌いでしたし、男女の関係よりも大事なものは絶対にあると思っていました。でも、一度も経験していないのも問題かもしれないと思い、デリヘルを利用してみることにしたんです」
家にデリヘル嬢を呼んでみたところ、やってきたのはとてもかわいい少し年上の女性だった。すべて相手に任せきりだったが、人生で味わったことのない快楽を得た。
「今まで女性のことを全く好きではなく、半分憎んでいたと言っても過言ではありません。でも、彼女は、僕のすべてを受け入れてくれる女神のような存在に思えたのです。そこから、いろいろな女性を家に呼ぶようになりました。最初は現金で払っていたのですが、生活費が足りなくなってきたので、クレジットカード払いを使うようになりました」
一括で支払うと首が回らなくなるため、自然とリボ払いの設定にした。クレジットカードも作れるだけ作り、すべてリボ払いで最低限、月5000円の支払いにした。
ところが、6枚目のクレジットカードを作ろうとしたところ、審査に落ちてしまった。
「一気にクレジットカードを申し込んだのがよくなかったのかもしれません。月5000円で限度額まで使えるのはとてもお得だと思ってしまったんです。月々の固定費で快楽を満たせるなら、最終的に首が回らなくなったら自己破産すればいいという安直な考えでした」
月に2万5000円程度の支払いなら全く問題ないと思っていた。しかし、度重なるデリヘルの利用により、借金の総額は80万円を超えていた。ようやく事態の深刻さに気づき、デリヘルを呼ぶのをやめた。
「利子が予想以上に高くて、毎月2万5000円払っても元本が半分ほどしか減らない状況になっていました。その間にクレジットカードでの支払いもしてしまい、借金は増え続けています」
事態は思ったより深刻かもしれないと考え、弁護士に相談することにした。しかし、弁護士からは予想外のことを言われた。
「無料相談できる法テラスに行ったところ、『風俗での浪費は自己破産できない場合がある』と言われました。できたとしても管財事件扱いになり、弁護士費用と合わせて80万円ほどかかるし、その額も一括で納めなければならない……。そんな大金を持っているはずがありません」
「自己破産」と「任意整理」の違い
弁護士になんとかしてほしいと泣きついたところ、「任意整理」をしてリボ払い契約を止め、月々返済していく方法を勧められた。
任意整理とは消費者金融やクレジットカード会社と直接交渉し、利息や遅延損害金を免除してもらう仕組みだ。実質的に借金を減らしたり、返済期間を延ばしたりできるが、利息などを除いた元金部分は分割で返済していくことになる。
近年、「国が認めた借金救済措置」や「借金減額シミュレーター」といった触れ込みで、任意整理に誘導する弁護士事務所のインターネット広告をよく見かけるようになったが、借金の減額を期待し、SNS上のこうした広告から任意整理を始める人は少なくない。
「結局、月に2万5000円を返していく形になりました。弁護士費用もかかったのですが、一括で支払う余裕がなく、分割払いをすることになりました。月1万円の支払いです。結果的に月3万5000円の支払いとなりました。もともとの計算では自己破産して借金がなくなり、デリヘルで女性のことも知れて一石二鳥だと思っていたのですが……。現実はそう甘くないようです」
実際、自己破産の最大のメリットは、裁判所の免責によって借金を帳消しにできる点である。しかし、高価な財産は処分され、当然ながら信用情報にも傷がつく。管財事件の場合、引っ越しが制限されたり、保証人が借金を肩代わりすることになったりもする。
また、自己破産すると、法令や公示事項を掲載する国の機関紙「官報」に名前が載り、知人などに知られてしまう可能性がある。そのため、任意整理よりも自己破産のほうが、有利とは限らないことも理解しておく必要がある。
そんな森さんは今、実家に戻り、時給の高いコールセンターで働きながら、地道に借金を返済し続けている。
(取材・文=山崎尚哉)
