日本人の6割超が「ポイ活」に無関心! 専門家が明かす楽天・PayPay・ドコモの次に来るポイント経済圏の“意外な未来”

世はまさに「ポイント経済圏」の戦国時代。楽天をはじめとする巨大プレイヤーが決済の場面に深く入り込み、強烈な囲い込みを進めている。
この状況をメディアは「ポイ活」として盛り上げ、私たち消費者も「〇〇ペイのほうが還元率いい」「〇〇社のほうがポイントの付く店が多い」など、その還元率と利便性に一喜一憂しがちだ。
しかし、ここで一度立ち止まって考えたい。本当に私たちはポイ活で得をしているのだろうか? むしろポイントに行動を縛られ、自由な選択肢を狭める“ラットレース”に巻き込まれてはいないか?
「ポイ活」の次のフェーズについて、モバイル市場に特化した国内最大級の調査機関であるMMD研究所(MMDLabo株式会社)の代表・吉本浩司氏(以下、「」内コメントは同氏)に話を聞いた。
6割超の日本人が無関心? ユーザーの“ポイント疲れ”も
楽天、PayPay、ドコモなど全国規模のポイント経済圏は急速に拡大してきた。スマホひとつで買い物が完結する利便性をうたい、次々と新サービスを投入している。
しかし、MMD研究所のデータが示す現実は、世間の盛り上がりを裏切るものだった。
同研究所は、予備調査で18歳〜69歳の男女2万5000人、本調査ではポイント経済圏メイン利用者2500人を対象に、2025年12月11日〜12月17日の期間で「2025年12月ポイント活用に関する調査」を実施。
それによると、ポイント経済圏を意識している人は61.9%で、前回調査から1.1ポイント増加。それだけでなく、ポイント経済圏を意識している人の共通ポイントの活用率は96.9%という高水準を示した。
一方で、ポイント経済圏を意識していない人の共通ポイントの活用率は65.2%。吉本氏によると便利さを追求したはずの私たちは、思いもよらない“罠”に陥りつつあるという。
「ポイント経済圏は今、大きな転換点を迎えています。4年前から各企業は還元率を上げて拡大路線を取ってきましたが、この1年でサービスが増えすぎて煩雑になり、ユーザーに“ポイント疲れ”が起きています。加えて、還元率がいきなり下がるといった改悪も相次ぎ、消費者は『いろいろ考えなければならないので大変』と疲弊し始めているのです」
また、メディアが煽るほど、日本人のポイント熱はそこまで高くない。というのも、ポイント付与の条件が複雑化し、ユーザーの満足度はむしろ低下傾向にあるからだ。
「ポイ活は買い物の選択肢を広げる側面がある一方で、特定の経済圏に縛られることで行動が狭まってしまう面もあります。例えば楽天経済圏にどっぷり浸かると、ホテルを探す際にも『まずは楽天トラベルで』といったように、無意識のうちに行動が固定化されてしまう。そのため、企業は今後、経済圏の拡大よりも定着に重点を置き、利用者を継続的に維持するための施策へ転換していく必要があります」
巨大経済圏で疲れているユーザーが出てきている一方、カウンターカルチャーのように台頭してきているのが、地域限定型のポイント経済圏だ。中でも吉本氏によれば、福岡の「ふくおかフィナンシャルグループ」の動きは象徴的だという。
同グループは、今年1月19日より新ポイントサービス「vary(バリー)」を開始、専用カード「バリーカード」で提携店を利用すると最大20%のポイント還元を実施する。銀行利用状況に応じたランク(最大+5%)と、ほっともっとやリンガーハットなど、チェーン店や地域特化の約20社での高還元が特徴だ。
全国どこでも同じように使える利便性よりも、あえて“地元とのつながり”を強める方向に舵を切っているということだが、なぜあえてローカルなのか?
「地域産業は、全国すべての場所で使ってもらうというより、独自の生活圏の中でローカライズを強化し、ロイヤリティを高めていく方向に向かっています。楽天やPayPayなどの共通ポイント系が、すべての分野で使える拡大路線を取る一方、JRやイオン、トヨタなどは特定のエリアや分野に密着したサービスを提供しています。ふくおかフィナンシャルグループの事例のように、地元の銀行が地域の店舗と手を組み、地域活性化を目指す動きは今後さらに強くなるでしょう」
500人調査で発覚! 自治体ポイントの「真の狙い」
ローカル化の流れは、ついに自治体をも巻き込み始めている。東京都が開始した「東京アプリ生活応援事業」などは、自治体が直接ポイント経済圏に関与する初の大規模実験として注目を集めている。
自治体がポイント事業に乗り出す背景には、単なる還元以上の“思惑”がある。行政サービスのデジタル化、そして将来的には個人の行動データの把握だ。
だが、ここに大きな壁が立ちはだかる。「マイナンバー連携に対する消費者の強いアレルギー反応」である。
政府は声高にマイナンバーカードの普及を訴えているが、国民からすれば「国にすべてのデータを監視されるのではないか」という根強い不信感がある。こうした抵抗感について、吉本氏はこう分析する。
「『すべての情報を一元管理します』と言うと、『どこかの国のようにすべて監視される』と反発を招くのは当然です。だからこそ、ポイントというメリットの提示が重要になります。いきなり『健康データを解析したい』と言うのではなく、まずは生活に身近な買い物体験などでポイントを提供し、お得な状態をつくるのです」
もともと意識していない人でも、ポイントをもらうことが当たり前になると、今度は「もらえなくなること」への損失回避の心理が働くということだ。
「そうしたタイミングで『健康維持のアプリを使えば、さらにポイントが付与されます』と提案し、ユーザー自身の許諾を得てデータを活用していく……。これが今後のやり方になるでしょう」
国や自治体は、ポイントを使って消費者の警戒心を解き、徐々にデジタルインフラへと誘導している。東京のモデルは、この課題をどう解決するかを示す大きな実践例となっている。
そのため、今後のポイント経済圏は、どこかひとつが覇権を握るという単純なものではない。吉本氏の予測によれば、複数の層が重なり合い、それぞれの目的で棲み分ける多層的な構造へと進化していくそうだ。
「通信キャリア、eコマース、決済、交通系という4つの大きな軸に加えて、今後、第5の軸として『ヘルスケア(健康)』分野が出てくる可能性が高いです。なかでも少子高齢化が進む日本では、運動によってポイントが貯まるといったサービスが、高齢者にとっても身近に感じられるでしょう。健康になりつつポイントも貯まるとなれば、非常に強い動機付けになります」
しかし、企業や自治体が莫大なコストをかけてまでポイントをばらまき、ヘルスケア分野にまで進出する本当の狙いは何か? それは「顧客の囲い込み」にとどまらない。購買、行動、そして健康に関するデータという、極めてセンシティブな個人情報の獲得だ。
「企業が消費者にポイントを貯めさせて何をしたいかというと、最終的には金融ビジネスです。これまで給与データなどでしか判断できなかったローンの審査も、日々の買い物行動や決済履歴、さらには健康データまでを組み合わせることで、その人の『信用スコア』をより精緻に評価できるようになります。特に健康データは、その人のライフスタイルや将来のリスクを予測するうえで非常に価値が高い。つまり、個人の信用がデジタルデータ化され、金融評価に直結する段階へと進むのです」
私たちは、目先の数十ポイントと引き換えに、自分の信用スコアを“丸裸”にされようとしている。こうした仕組みが社会に浸透すれば、ポイント経済圏から外れることは、単に損をするだけでは済まない。
社会的な信用評価の土俵から降りる――。そんな意味合いすら帯びてくるかもしれないのだ。だからこそ、セキュリティと信頼の担保は絶対条件になる。
「デジタルデータの管理は極めて重要になり、個人情報保護や個人認証への投資が不可欠です。すでに携帯電話契約時の本人確認も、マイナンバーカードとの紐付けやデジタル認証技術へと移行しつつあり、より厳格化しています。セキュリティ対策とプライバシー保護をどう両立させるか……。この懸念を払拭できなければ、地域経済圏が受け入れられることはありません。東京のモデルがこれをどう解決するかが、他の自治体のモデルケースになるでしょう」
もはやポイント経済圏は「おまけ」ではない。信用と利便性を天秤にかける、新たな社会インフラへと進化しつつある。
見えないシステムを恐れるのではなく、私たち自身がそれをどう使いこなすか。いま問われているのは、その姿勢なのかもしれない。
(取材・文=西脇章太:にげば企画)
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