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巨人・田中将大は“モデルチェンジ”で復活したのか? かつての大エースがもう一度勝つために必要なもの

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かつては日本代表としても活躍した田中将大。(写真:Getty Imagesより)

 田中将大を語る時、どうしても人は“あの頃”を基準にしてしまう。楽天時代の24勝0敗、メジャーでもローテーションの中心として投げ続けた姿。あまりにも全盛期のイメージが強いからこそ、現在の田中を見る目は厳しくなりやすい。

 しかし、今問うべきなのは「2013年の田中将大に戻れるのか」ではない。年齢を重ね、球速や制圧力が変化した中で、もう一度“勝てる投手”として自分を作り直せるのかである。2026年の田中は、全盛期の再現ではなく、配球、緩急、球種の順序、そしてゲームメイク能力によって新しい勝ち方を探している。

 果たして田中は、モデルチェンジによって本当の意味で復活できるのか? 6月28日時点の数字と投球内容から、その現在地を読み解いていく。

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【編注:本記事のデータは2026年6月28日時点のものです】

復活の基準をまず間違えてはいけない

 田中将大の復活を語る時、いちばん危ないのは「2013年の田中将大に戻れるか」という問いを立ててしまうことだろう。2013年は24勝0敗、防御率1.27、212回で183奪三振。あれは“復活”の比較対象ではなく、もはや伝説の座標だ。

 むしろ今見るべきは、楽天最終年の2024年が1試合0勝1敗、防御率7.20、巨人移籍1年目の2025年が10先発で3勝4敗、防御率5.00、そして2026年が6月27日時点で10先発3勝3敗、防御率3.52、53回2/3で40奪三振、16四球まで戻してきていることだ。つまり現時点の田中は、「昔の怪物が帰ってきた」のではない。「勝てる投手」「試合をつくる投手」へと自らを作り直そうとしている投手なのである。

 また、全盛期の田中は球威と制圧力で相手を押し切るタイプだった。だが今の田中に同じことを求めるのは、議論の入り口からずれている。2026年の10先発53回2/3という数字を単純に割れば、平均は5回強。今必要なのは完投能力の再現ではなく、5〜6回を投げて試合を壊さないことだ。

 しかも今季は53回2/3で16四球、被本塁打2。40奪三振という数字も十分だが、それ以上に重要なのは、四球と長打を大きく増やさず、ゲームを崩壊させない投球ができている点だろう。復活の条件は、派手な奪三振ショーではない。四球を出さず、試合の主導権を完全には手放さないことだ。これは数字から見える、かなり現実的な現在地である。

鍵は経験を生かした熟練のピッチングスタイル

 今の田中に必要なのは、宝刀スプリットの切れ味だけではない。むしろ重要なのは、そのスプリットをどう生かすかという配球の設計だ。

 6月4日のオリックス戦で田中は7回1失点、112球6奪三振と好投し、日刊スポーツは最速149キロの直球に加え、79キロ台の超スローカーブまで使いながら多彩な変化球で翻弄したと伝えた。

 さらに平石洋介氏も「今、辻さんが言われましたけど、リードしたまま次につなぐ。今日もしっかり粘りましたし、まっすぐが昨年よりもちょっといいんじゃないかなと。元々変化球を器用に操る。バッターの対応を見ていると、まっすぐが昨年より邪魔になっているのかなと感じる。変化球を打たされたり、前に出されたりすることもあるので、今年はいいんじゃないかなと思いますね」と評価している。

 つまり今の田中は、球種単体の威力で勝つのではなく、前の球が次の球をどう生かすかで勝負している。スプリットを決め球にする前に、打者の待ちを壊す。そこに今の生命線がある。

 もう少し正確に言えば、今の田中は身体能力だけで勝つ投手ではない。打者が何を待っているかを読み、その待ち方をずらし、打たせたい場所へ誘導する投手へ変わろうとしている。

 4月16日の阪神戦で6回3失点、82球で2勝目を挙げた際にも、辻発彦氏は「モデルチェンジと言ったら大袈裟ですけど、丁寧にカーブを交えながら緩急もつけますし、何と言っても相手に追いつかせない。1点リードのままピッチングができる強さがありますよね」と投球を高く評価していた。

 若い頃の田中が「圧倒して勝つ」投手だったなら、今は「読ませて外して勝つ」投手へ移行している。言い換えれば、マウンドでやっていることが力比べではなく、読み合いのゲームになっている。

 ただし、ここで楽観し過ぎると見誤る。田中の復活が本物かどうかは、悪い日をどこまで少なくできるかにかかっているからだ。好投する日はある。だが、悪い日をまだ小さくまとめ切れていない。そこが最後の壁として残っている。

本当の復活とは「昔の自分」に戻ることではない

 だから結論は、かなりはっきりしている。田中が本当に復活できるか。答えは「できる可能性はあるが、条件付き」だ。

 その条件とは、全盛期の再現を目指さないこと。球速の衰えや制圧力の変化を前提にしながら、配球、緩急、コース、一打席ごとの組み立てを再構築して勝つことだ。

 かつての田中は圧倒して勝った。これからの田中は、崩れずに勝機を残して勝つしかない。そして、その新しい勝ち方を自分のものにできた時、初めて「復活」という言葉は本物になる。

 本当の意味での復活は、昔の田中将大へ戻ることではない。衰えを受け入れたうえで、それでも勝てる投手へ自分を再定義することだ。四球を減らし、打者の狙いを外し、5〜6回をゲームメイクし、悪い日を最悪の結果まで引きずらない。そこまでできてこそ、「かつてのエースがもう一度勝つ」という物語は完成する。

 今の田中将大は、その入口には立っている。だが、6月11日のような崩れ方を乗り越え、もう一度一軍ローテーションに定着して初めて、その復活は証明される。つまり現時点の田中将大は、復活した投手ではなく、「復活の予兆を感じさせる投手」なのである。

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(文=ゴジキ)

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ゴジキ

野球評論家・著作家。著書に『巨人軍解体新書』(光文社新書)、(集英社新書)、『システムで読む甲子園』(カンゼン)などがある。『データで読む甲子園の怪物たち』(集英社新書)と『マネジメント術で読むプロ野球監督論』(光文社新書)は発売前重版を記録。連載実績として「ゴジキの巨人軍解体新書」「データで読む高校野球2022」「ゴジキの新・野球論」などを担当し、現在はサイゾーオンラインにて「ゴジキの野球戦術ちゃんねる」を連載中。週刊プレイボーイ、スポーツ報知、女性セブン、日刊SPA!、集英社オンライン、現代ビジネスなど各種メディアでの寄稿・取材も多数。Yahoo!ニュース エキスパートにも選出されている。
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ゴジキ
最終更新:2026/07/02 22:00