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SB・柳田悠岐はまだ一線で活躍できるのか? 時代をつくった打者が描くべき晩年のキャリアプラン

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日本代表としても活躍した柳田悠岐。(写真:Getty Imagesより)

 柳田悠岐を語る時、どうしても全盛期の圧倒的な姿を基準にしてしまう。打率、出塁率、長打力、走力、守備力まで兼ね備え、まさに“全部を持っている打者”として時代をつくった存在だったからだ。

 しかし、37歳となった今の柳田に問うべきなのは、「かつての柳田に戻れるか」ではない。怪我や出場試合数の問題を抱えながら、どの能力を残し、どの役割でチームに価値を与え続けるのかである。2025年の日本シリーズで見せた勝負強さ、DH起用を含めた負担軽減、そして若手への影響力。

 柳田はまだトップでいられるのか。全盛期の再現ではなく、晩年のトップ打者としての新しい形から読み解いていく。

【編注:本記事のデータは2026年7月6日時点のものです】

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「全盛期と比べる」とだいたい見誤る

 柳田はまだトップでいられるのか――。この問いに答えるには、まず「トップ」の意味を少し変える必要がある。

 7月6日終了時点の柳田は65試合に出場し、打率.248、9本塁打、28打点、出塁率.302、長打率.396、OPS.699。もはや全盛期のようにシーズン全体を圧倒する数字を残しているわけではない。37歳という年齢を考えれば、かつての“全部を持っていく柳田”をそのまま期待する段階ではないだろう。

 ただし、ここで「もうトップではない」と切り捨てるのも早い。柳田は2025年に右足の負傷で長期離脱しながらも、9月下旬に一軍復帰すると、日本シリーズでは5試合で22打数10安打、打率.455、1本塁打を記録して日本一に貢献した。短期決戦で一気に試合の空気を変える集中力は、今なお明確に残っている。

 つまり今の柳田は、毎日すべてを支配する打者ではなくても、「勝負どころでトップ級の価値を出せる打者」であり続けている。

課題は能力そのものより「怪我」と「出場試合数」

 柳田の晩年設計で最も重いテーマは、衰えそのものより稼働率だ。NPBの年度別成績を見ると、2024年は52試合、2025年は20試合、2026年も7月6日時点で65試合にとどまる。柳田自身も2026年の目標として「怪我をしない」と掲げている。打てるかどうか以前に、どれだけグラウンドに立ち続けられるかが最大の争点になっていることは、本人も球団も十分に自覚している。

 実際、2026年春も首の張りで調整が乱れた。3月14日には首の張り再発で別メニュー調整となり、小久保裕紀監督も「無理して試合に出ることもないというところで。ちょっと(首の張りと)付き合いながらになるんじゃないですかね」とコメント。さらに3月22日には、首のコンディション不良で2度離脱したことを踏まえ、開幕後は基本的にDHで起用する方針が示された。

 つまり、今の柳田は「出れば怖い」は前提としてあり、そのうえで「どうすれば長く出場し続けられるか」が最大のテーマになっている。

 また、現在のDH中心構想は単なる休養策ではない。晩年の柳田に必要なのは、毎日100%の出力で暴れることではなく、70~80%の力を長期間維持することだからだ。小久保監督はDH起用について「長期離脱が一番困る」と明言し、当面は守備負担を減らす考えを示している。

 これは柳田の価値が落ちたからではない。むしろ、打席で勝敗を左右できる存在だからこそ、守備負担を軽減して打撃の価値を最大化しようとしているのである。

 つまり、いま問われているのは「昔みたいに全部できるか」ではない。どの能力を優先して残すかだ。守備で走り回り、肩でも魅せて、打席でも毎日圧倒する。それを37歳の柳田に求めるのは現実的ではない。

 しかし、守備負担を軽減しながら打席での怖さと勝負強さを維持する設計なら、まだ十分に成立する。晩年のトップ打者は、能力の総量ではなく、その配分で勝負する。柳田もまさにその段階へ入っている。

2025年日本シリーズで見せた勝負強さと生存戦略

 晩年のキャリアプランを考えるうえで、2025年の日本シリーズは非常に象徴的だった。柳田は5試合すべてで安打を放ち、22打数10安打、打率.455、1本塁打を記録。5試合シリーズでの10安打はタイ記録とされている。

 レギュラーシーズンを長くフル回転できなくても、短期決戦で一気にギアを上げる集中力は失われていない。柳田はもはや毎日同じ出力で暴れる打者ではなくても、「最も重要な数試合」で相手に最も嫌がられる打者であり続けられる。

 そのうえで、柳田がまだトップ戦線にいられるかを左右するのは、コンタクトの質をどこまで維持できるかだろう。

 2024年は225打席で36三振、2025年は78打席で13三振、そして2026年は251打席で50三振(7月6日時点)。単純計算では三振率は2024年の約16.0%、2025年の約16.7%から、2026年は約19.9%へ上昇している。

 もちろん打席数が異なるため単純比較は慎重であるべきだが、少なくとも「空振りの管理」が以前にも増して重要になっていることは確かだ。一方で、長打力の気配が完全に消えたわけではない。問題は、そこへ至るまでのプロセスである。

 全盛期の柳田は、多少カウントが不利でも最後は自分のスイングでねじ伏せられた。しかし今後はそうはいかない。速球を待ち、変化球を見極め、タイミングを外されても対応する。その順序を自ら設計し、打者ではなく「打席の設計者」として勝負する必要がある。

 コンタクト率の維持とは、単にバットに当てることではない。自分が最も打てる形へ打席を導けるかどうかなのである。これは晩年のトップ打者にとって極めて重要な価値だ。長いシーズン全体の数字では若い主砲に譲ることがあっても、短期決戦や大一番での打席の重みは、経験と感覚で補うことができる。柳田の2025年の日本シリーズは、まさにその証明だった。

 さらに柳田の価値は、打撃成績だけでは測れない。小久保監督は2025年オフ、筑後キャンプに柳田が拠点を置く予定であることを明かし、「ガンガン吸収してほしい」と若手へメッセージを送った。球団内でも柳田は「チームの顔」と位置づけられている。

 つまり柳田は、もはや単なる中軸打者ではない。若手が何を見て育つか、その基準そのものになっている。

 そして試合でもなお勝敗を動かしている。5月24日の日本ハム戦では勝ち越し2ランに加え、8回には決勝犠飛を放ち3打点を記録。5月29日時点では、先発出場した試合で7試合連続安打もマークしていた。

 数字全体は全盛期ほどではなくても、シーズンの分岐点で打線を引っ張る力は残っている。トップ打者の条件が「シーズン全体を支配すること」から、「ここ一番で勝ち筋をつくること」へ変わるのであれば、柳田は今なお非常に高い位置にいる。

 結論を言えば、柳田はまだトップでいられる可能性がある。

 ただ、それはかつてのように143試合を暴れ回る絶対王者としてではない。怪我と出場試合数という現実を受け入れ、守備負担を減らし、DH起用を織り込みながら、コンタクトの質と勝負どころでの集中力を残していく。晩年に成功するなら、柳田は別の意味でトップに立てるはずだ。

 衰えは避けられない。しかし、衰えたから終わるわけでもない。そのなかで、どの能力を残すかが勝負になる。

 柳田に必要なのは、若い頃の全能感ではない。試合数を管理しながら、最も価値の高い場面で最も怖い打者であり続けることだ。

 晩年の柳田が本当に目指すべき「トップ」とは、おそらくそこにある。

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(文=ゴジキ)

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ゴジキ

野球評論家・著作家。著書に『巨人軍解体新書』(光文社新書)、(集英社新書)、『システムで読む甲子園』(カンゼン)などがある。『データで読む甲子園の怪物たち』(集英社新書)と『マネジメント術で読むプロ野球監督論』(光文社新書)は発売前重版を記録。連載実績として「ゴジキの巨人軍解体新書」「データで読む高校野球2022」「ゴジキの新・野球論」などを担当し、現在はサイゾーオンラインにて「ゴジキの野球戦術ちゃんねる」を連載中。週刊プレイボーイ、スポーツ報知、女性セブン、日刊SPA!、集英社オンライン、現代ビジネスなど各種メディアでの寄稿・取材も多数。Yahoo!ニュース エキスパートにも選出されている。
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ゴジキ
最終更新:2026/07/09 22:00