『御上先生』の教師役も好評、吉岡里帆が“巻き込まれるヒロイン”として支持される理由

文科省から私立進学校に派遣された官僚・御上孝を主人公に、異例の学園ドラマを展開するのが、松坂桃李主演のTBS系日曜劇場『御上先生』。文科省での天下り斡旋事件や国家公務員試験の会場で起きた殺人事件などが絡み合うなか、ミステリアスな御上先生(松坂桃李)が教育の現場で戦う物語である。
学園モノによくある熱血漢ではなく、冷血かつミステリアスな教師を表現する松坂のそばで、若き国語教師・是枝文香を好演しているのが吉岡里帆だ。
教育熱心で生徒からも信頼されている是枝だが、御上が赴任してきたことで担任から副担任に降格したうえ、文科省や学園を取り巻く大きな渦へと飲み込まれ始めていく──。そんな吉岡は、 “巻き込まれ”る役どころで、異質の存在感を放つと言ってもいい。
2022年にディズニープラスでシーズン1が配信され、今年3月にはシーズン2の配信が予定されているドラマ『ガンニバル』では、暴力的で過剰な正義感を持つ警察官・阿川大悟(柳楽優弥)の妻・阿川有希を演じた。作中では夫の暴走が原因となり、怪しげな村民たちに拉致される展開もある。また昨年Netflixで配信された『忍びの家 House of Ninjas』で吉岡は、ある事件の取材を進めていくなかで忍びの抗争に巻き込まれていく、雑誌『ムー』の記者・伊藤可憐を演じている。
“あざとい”では語れない、吉岡里帆の「爽やかな邪悪さ」
騒動に巻き込まれながら、気がつけば重要なエッセンスとして物語の立ち位置を確立する吉岡。コラムニストでドラマ評論家の吉田潮氏は、そんな吉岡の強みを「爽やかな邪悪さ」だと話す。
「『よろず屋ジョニー』(フジテレビ系/2015年)というドラマで“魔法が使える”という設定のキャバ嬢を演じた時、口元は笑ってるんだけど目が笑っていない、得体の知れなさがすごく印象的でした。その後NHKの朝ドラ『あさが来た』(2015年~2016年)ではヒロインの波瑠演じるあさの娘の学友で、メガネをかけた無愛想キャラ・田村宜(のぶ)役を演じて話題に。さらに、『カルテット』(TBS系/2017年)での魔性を感じさせる役がドハマリしました」
得体の知れない、無愛想、魔性。何を考えているかわからない役で光る吉岡の演技について、吉田氏は「ちゃっかりいろいろなものを奪って幸せになるさまが気持ちいい」と評する。
「吉岡さんは、ストレートに“あざとくモテる”役が与えられることはあまりない。どこかこじらせていたり、真面目さが邪魔をしてうまく生きていないとか、ジレンマを感じさせるポジションが多いんですよね。あくまでも物語の1ピースという立ち位置で、ずるい、腹黒い部分もありながら絶妙に気配を消す。その場の空気のなかで過分なことはしない、引いた演技で作品全体の味を整える天性のバランサーとしての魅力があると思います」
尖った個性を持つ俳優が多いなかで、“一見普通の人”を見事に演じる吉岡里帆。今後『御上先生』のなかで、いかにして騒動に巻き込まれていくのかに注目したい。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)