わたしのお腹から生まれてくる子は…夫がいるのに“パパ活”を続ける20代女性たちの欲求不満

経済的に余裕のある年上男性と食事やデートをし、その対価として金銭や物品を受け取る行為は、一般に「パパ活」と呼ばれている。
食事やデートのみで違法となるわけではないが、性的関係を伴うケースや既婚者との関係では、状況によっては民事上の損害賠償(慰謝料)請求や、その他の法的トラブルに発展する可能性がある。
また、既婚者が配偶者以外と肉体関係を持つ「不貞行為」は法定離婚事由にあたり、離婚や慰謝料請求へ発展するリスクもある。
さらに、食事やデートだけでは終わらず、好意を抱いていない相手と性的関係を重ねることで精神的な負担を抱えたり、関係のもつれからトラブルや犯罪被害につながったりするケースも報告されている。
それでも、なぜ彼女たちはそうしたリスクを抱えながら、パパ活を続けるのだろうか。
「援助交際」よりも気軽? 「パパ活」が広まった理由
「『パパ活』という言葉は2015年頃に生まれ、2017年頃から急速に広まりました」
そう語るのは、援助交際やパパ活を長年取材してきたジャーナリストの秋山千佳氏。同氏によると、「パパ活」という言葉は、大手交際クラブが考案し、出会い系サービスへユーザーを誘導するアフィリエイターが広めたものだという。
「例えば、『援助交際』という言葉には、体の関係を伴うというイメージが強くあります。一方で、『パパ活』という言葉が広まり始めた頃は、体の関係があるのかどうかが曖昧でした。そのため、援助交際よりも『気軽に始められるもの』というイメージが浸透していったのだと思います」
こうして広まった「パパ活」という言葉は、現在では当初よりも幅広い意味で使われるようになった。食事だけの関係を指すこともあれば、出会い系サイトを通じた「割り切り」や、金銭を介した性的関係まで含めて語られることもある。
実際に取材を進めると、お金だけを目的にしている人ばかりではなかった。既婚者でありながら、性的な刺激や欲求を満たすために出会い系サイトを利用する女性もいる。
そのひとりが、高野麻耶さん(仮名・25歳)だ。くりっとした目が印象的な彼女は元パティシエ。受け答えは明るく歯切れがよく、一見するとごく普通の25歳の女性だ。
しかし、彼女は既婚者でありながら、PCMAXなどの出会い系サイトを利用し、夫以外の男性と金銭を介した関係を続けている。
「パパ活って流行っているじゃないですか。だから、わたしも若いうちに少しだけ、お小遣い稼ぎとしてやってみようと思ったんです。それと、夫のことは好きなんですが、性生活には少し不満があって……。そこを満たせたらという気持ちもありました」
お金よりも「性的な刺激」を求めるように
高野さんの価値観を大きく変えたのが、出会い系サイトで出会ったある男性だった。これまでにない性的な満足を経験したことをきっかけに、さまざまな男性と会うようになったという。
「『今までのセックスって何だったんだろう』と思ったほどでした。それがきっかけで、いろいろな男性と会うようになりました。『この人とは一度きりでいいかな』と思う相手なら、お金をもらいます。ただ、会ってみて気に入った人とは、タダで会うこともあります」
出会い系サイトを利用していることを周囲に知られないよう、プロフィールには身元を特定できる情報や本人の写真は載せていない。
「身長や体重などの体型だけを書いて、写真も自分以外の人のものを加工し、顔をスタンプで隠した『雰囲気写真です』という形で載せています。『写真を載せないとマッチしないんじゃないの?』と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。男性の中には、女性全員に『いいね』を送っているような人もいるので、こちらから積極的に動かなくても、自然とメッセージが届くんです」
高野さんが出会い系サイトを利用する目的は、次第に金銭よりも、性的な刺激やストレスの発散へと移っていった。
「自分本位なセックスをされるのは、夫だけで十分なんです。だから、金銭を介した出会いをする頻度はそんなに多くありません。最近は、お金を介さない男性と会うことのほうが増えてきました」
ただし、特定の男性と継続的な関係を築くわけではない。あくまでその場限りの関係が中心で、夫に知られないよう、相手とのやり取りも極力残さないという。
「長期間の不倫という感じではなく、一回きりの関係がほとんどです。連絡もほとんど取り合いません。やり取りが必要な時はPayPayのチャットを使っています。顔認証をしないと開けないので、見られる心配もないんです」
そんな高野さんは、夫以外の男性と性交渉をする際に、避妊具を使わないこともあるという。望まない妊娠や性感染症への不安はないのだろうか?
「結婚生活を続けるなかで、『妊娠って、思っていたほど簡単にするものではないんだな』と感じるようになりました。だから、生理前で妊娠の可能性が低いだろうと自分で判断した時は、避妊具を使わないこともあります。性感染症にも今のところかかったことはありません。でも、相手について少しでも違和感を覚えたら、関係を持たないようにはしています」
ただし、妊娠の可能性を月経周期だけで正確に判断することは難しく、性感染症の有無も相手の見た目や印象だけで判断できるものではない。高野さんは自身の経験則をもとにリスクを判断していたが、その認識は医学的な知見と必ずしも一致するものではない。
妊活中も夫以外の男性と関係を続けていた女性
こうしたケースは、高野さんだけではない。取材を進めると、出会い系サイトで「割り切り」と呼ばれる金銭を介した出会いをきっかけに、夫以外の男性との関係を続けるようになったという既婚女性にも出会った。
それが、フリーランスのデザイナーとして働く佐藤七海さん(仮名・29歳)だ。
「仕事が少なくなってきた時に、『手っ取り早く稼げる』と思ってパパ活を始めたんです。でも、そのあと結婚したので、パパ活をする頻度は自然と減りました。子どもも生まれて、今は子育て中なのですが、やっぱりストレスはたまるんですよね。それをどうにか発散したいという気持ちもあって、また出会い系サイトを使うようになりました」
夫に子どもを預け、「友達とご飯に行ってくるけど、すぐ帰るね」と伝えたうえで、出会い系サイトで知り合った男性と短時間だけ会うこともあったという。
「夫は正直、あまりタイプではなくて、性的にもあまり興奮しないんです。でも、子どもは欲しいので、生理後は妊活も兼ねて週3回くらいはしています。ただ、夫だけを相手にしていると、だんだん気持ちが沈んでしまうというか、気分が重くなってしまうんです。そのストレスを発散するために、定期的に出会い系サイトで相手を探していました」
佐藤さんは、夫以外の男性と関係を持つことに、背徳感や興奮を覚えていたという。妊活中であっても、その行動は変わらなかった。
「相手は出会い系サイトのアダルト掲示板で探していました。男性がたくさん募集しているので、一つ一つ見ていって、気になった人がいたら自分からメッセージを送ることもあります。そして、夫以外の人としたあと、そのまますぐ家に帰って夫とするのが一番興奮するんです」
さらに佐藤さんも、夫以外の男性と性交渉をする際にも避妊具を使っていなかったという。気に入った人としか会わないこともあり、心のどこかには「誰の子が生まれてもいいかな」という感覚もあったそうだ。
「定期的に会う男性もいて、その人に会った日の晩はLINEで『夫として上書きしてもらった〜』と報告したりします。相手もやきもちを焼いたりして、それがおもしろいんですよね(笑)。いろいろな人と会うようになってからは、逆に夫とのセックスにも興奮できるようになりました」
「誰の子か分からない」第2子の妊娠が判明
夫以外の男性との関係を続けていた佐藤さんだが、現在は第2子を妊娠中だ。妊娠が分かってからは、以前のような衝動は落ち着き、出会い系サイトを利用することもなくなった。
「何度か会っていた相手にも、『生理が来なくて病院に行ったら妊娠してた〜』と連絡しました。そうしたら、『俺の子かな?』と返ってきたんです。どうせ責任を取る気なんてないくせに、適当なことを言うんですよね。やっぱり、出会い系サイトで知り合った人より、今の夫に育ててもらったほうが、この子にとってはいいと思いました。夫に関係が知られたら面倒なので、その人とはもう会わないようにしました」
佐藤さん自身、夫の子どもである可能性が最も高いと考えているものの、父親が誰なのか確信は持てないという。それでも、DNA検査をするつもりはない。
「DNA検査って、すごくお金がかかるじゃないですか。それに、夫の子じゃなかった時のことを考えると最悪なので……。正直、誰の子か分からない部分はありますが、一番可能性が高いのは夫だと思っています。仮に夫の子じゃなかったとしても、わたしのお腹から生まれてくる子は、みんなかわいい我が子という感覚です」
「パパ活」や「割り切り」という言葉からは、金銭目的の出会いを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、取材で見えてきたのは、それだけでは説明できない実態だった。
性的欲求や夫婦関係への不満、ストレスの発散、そして背徳感。入り口は「お小遣い稼ぎ」だったとしても、やがて金銭とは別の欲求が、夫以外の男性との関係を続ける動機になっていくこともある。
そして、その選択は本人だけの問題では終わらない。夫婦関係を壊したり、望まない妊娠や性感染症につながったりする可能性もある。佐藤さんのように妊娠と重なれば、生まれてくる子どもの父親が誰なのかという問題にまで発展する。
なぜ、リスクを抱えながらも続けるのか。その背景には、「お金が欲しい」という理由だけでは捉えきれない欲求があった。
(取材・文=山崎尚哉)
