元暴走族総長が“ノーマル単車”で激走!? 『TOKYO BURST 犯罪都市』がハマった「アングラ描写のリアルと罠」

小さな頃から映画館が大好きである。それは今も変わらない。映画館で観たい映画が上映されていることを知ると、観に行ける喜びにわくわくすることができる。
奇しくも、かつて藤井道人監督と横浜流星さんによる映画『正体』の舞台挨拶が行われ、私も監督に招待してもらった劇場だった。映画『TOKYO BURST 犯罪都市』を観たのは、全く同じ兵庫県尼崎市の館内であった。
1年半前、映画『正体』を観て衝撃を受けたよなと思いながら、私は『TOKYO BURST 犯罪都市』を観始めたのだった。
映像の仕事をすることになって7年である。そのせいなのだが、内容よりもまずはどうしても制作費が気になってしまうのだ。嫌でも10分も観れば、その作品の予算を予測できることができてしまう。そこにまずは目がいってしまうのだ。何の予備知識もないままに最近、U-NEXTで観た『ちるらん 新撰組鎮魂歌』は、始まってすぐに「これはめちゃくちゃ制作費がかかっているな!」とひっくり返りそうになった。
調べてみるとそれもそのはずであった。
TBSグループとTHE SEVENが掲げる300億円規模のグローバルコンテンツ制作予算で制作されていたのだ。作り込みも圧巻であった。出演している俳優部も豪華キャストである。
「すごいよね〜」と思いながら観たのだが、作品とは違う角度から少し毒でも吐いてよいだろうか。TBSと読売テレビは大嫌いである。忘れるところであった。角川春樹事務所なんて何よりも嫌いだ。嫌いレベルで言うと、玉ねぎ並みにまで達する。
最近はコンプライアンスだなんだと神経質になったので、易々と「嫌い」という言葉も使いづらくなってきたが、私はしっかりと言える。TBSも読売も角川春樹事務所も大嫌いである。
話を戻そう。『TOKYO BURST 犯罪都市』には、私が仕事で所作指導した俳優部の人たちが4人出ていて、自然と「頑張れ!」と思ってしまう。特に『インフォーマ』シリーズに出てくれている谷充義さんや香川幸允くん。それに今はなきに等しい本当に嫌なヤツ、俳優の木下ほうかに頼まれて、私が監督・脚本を務めた未完のショートドラマにキャスティングした荒岡龍星くんには、「うまいぞ!」と内心で叫んでいた。その中でも香川幸允くんは、そこにいるだけで存在感も出ていて、「なるほど、いま日本一と言われる映画監督が気に入るわけだ」と納得させられたのだった。
犯罪都市シリーズはすべて映画館で観ていて、大好きな韓国映画の一つだ。私が原作・監修を務めるドラマ『インフォーマ』は、「犯罪都市」パート1を猛烈に意識した。この作品を超えてみたい、これを超えないとクライム・アクションの最高峰には辿り着けないと考えたほど、影響を受けた作品である。
それだけに遠慮なく言わせてもらうと、東京編は大丈夫かな〜と感じていたのは事実であった。
なぜならば映画『犯罪都市』は、韓国が舞台でマ・ドンソクが出ていなければ成立しないからだ。予備知識として、マ・ドンソクがプロデューサーに名を連ねていたので、嫌な予感があった。『犯罪都市』の魅力はマ・ドンソク演じるマ・ソクトの圧倒的な強さにあるからだ。あの強さこそが、犯罪都市の魅力なのである。
それを『龍が如く』シリーズの春日一番みたいな役柄が主人公を務めてしまうと、別作品になるのではないかという不安があったのだ。知っているだろうか。ゲーム『龍が如く』の主人公といえば桐生一馬であるのだが、シーズン7とシーズン8は春日一番なのである。私はそこでもがっかりさせられたのだ。
それだけに『犯罪都市』を名乗る以上、マ・ソクトを超えられるのかと思っていたのだが、すまない。私個人としては、マ・ソクトの破壊力は今作の主人公・相葉四郎から感じることができなかった。
「基本」を無視した演出への違和感
本当に申し訳ないと思う。私も同じクリエイターとして、作品作りに携わる人々の情熱は十分に理解しているので、ケチなんてつけたくないし、これまでケチをつけたことは一度もない。だけれどもだ。だったら、あの単車はなんなのだ。相葉四郎は元・暴走族の総長なんだよな。なんで後輩からクソどノーマルの単車を借りて、敵を追いかけたりするのだ。
簡単な話である。例えば、ヤクザならば、だいたいこの車種、スポーツ選手ならば、こういうスポーツカーと相場が決まっているのだ。
あれにはこだわってほしかった。暴走族というバックボーンを使ったりするから、いけないのだ。使うならば、暴走族の基本に忠実にあるべきではないか。暴走族の基本とは何か。述べるまでもない。族車である。族車に命を賭けているのだ。それを族車に改造できないバイクを、族車みたいな設定で強引に使用すれば、興醒めするに決まっているのではないか。
出だしは凄くよかった。ピエール瀧さん演じるヤクザの組長も良かったし、舞台やシチュエーションの運びかたも『犯罪都市』シリーズを彷彿とさせた。
だが、私にはそれだけしか感じることができなかった。俳優部のお芝居が良いのに、作品が面白くないのは、いいか。本に原因があるのだぞ。なんでもかんでもアングラを知った風な知識やニュースで観たくらいの取材で書けば良いというものではないのだぞ。
そんな非現実的な情景描写にリアルなんて一生生まれないぞ。本当に知りもしないのに、なんでもかんでもアングラを取り入れるから、似たような作品しか生まれないのだ。
観てみろ。私が監修を務めた映画『ヤクザと家族』(藤井道人監督)を超える映画が出てきていると思うか。いまだに「あれは凄い」と言われているのだ。なぜだかわかるか。予算なんて大してなかったぞ。現実のリアルを極限まで追及したからだ。リアルが全てと言いたいのではない。しかしだ。どんな世界でも、それを題材にするからには、そこにあるべきリアルがあるのではないか。
ただ、である。こうやって賛否を述べることができるのは、自分の足で映画館に行く観客の特権なのである。だからこそ、私の言っていることが本当かどうか、ぜひ劇場へと観に行って確かめてほしい。
パク・ジファンが演じるチャン・イスが出てきた時には、心底ホッとしたのは私だけではあるまい。
ノンストップ・アクションエンターテインメント。つまりはクライムアクションを観たあとは、肉がやたらと食いたくなる。特に韓国作品ならば尚更だ。
映画を観終えた私は焼肉屋に行き、肉を食べながら、「あそこをこうしたら良かったのにな〜」とずっとぶつぶつ言いつつ、マッコリのボトルを一本あけたのだった。
(文=沖田臥竜/作家・小説家・クリエイター)