映画『366日』が低調スタートで指摘される苦戦の理由
俳優・佐藤健と永野芽郁がW主演した『はたらく細胞』や木村拓哉主演の『グランメゾン・パリ』が年をまたいでもヒットを続けているが、それらの牙城にどこまで迫れるのか注目を集めていたのが映画『366日』だ。
本作は、かなわぬ恋を歌った失恋ソングとして2008年にリリースされ、今なお世代を超えて愛されている沖縄出身のバンドHYの名曲「366日」からインスパイアされたオリジナルの純愛ストーリー作品。
主演を赤楚衛二が、ヒロインを上白石萌歌が務め、監督にはラブストーリーの名手である新城毅彦氏を迎えていたこともあり、公開前から期待を集めていた。
しかし、今年1月に公開されると初週の動員ランキングはまさかの第6位。
深夜ドラマを映画化した『劇映画 孤独のグルメ』(第3位)にも大差で敗れる結果となってしまった。
「楽曲の世界観とストーリーがシンクロし、涙を誘う仕上がりだと評判で、SNS上では『感動した』や『久々にこんなに泣いた』といった声も多い。映画の評価自体は決して低いものではないだけに、“数字”がついてこないのは予想外でしたね」(映画ライター)
前評判とは裏腹に本作が低調なスタートとなった理由として指摘されているのが“主演俳優の弱さ”ではないかという声もある。
民放テレビ局の番組プロデューサーは話す。
「赤楚は昨年公開の『もしも徳川家康が総理大臣になったら』や『六人の嘘つきな大学生』ではともに浜辺美波とのコンビで主演級の扱いでしたが、いずれの作品も大ヒットには至らず。ドラマでも23年の『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系)、24年の『Re:リベンジ-欲望の果てに-』(フジテレビ)と主演しましたが、いずれも全話世帯平均視聴率が4~5%と苦戦しています。赤楚の所属事務所は小栗旬が社長を務める大手プロダクションであることもあり、実力派俳優のひとりであることは間違いではないのですが……」
もっとも、芸能ジャーナリストの竹下光氏はこう語る。
「赤楚さんといえば、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)でブレイクを果たし、数多くのドラマや映画で活躍。NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』では福原遥さん演じるヒロインの幼なじみの同級生を好演するなど、細やかな演技は業界内でも高い評価を受けています。今作の演技に関してもSNS上などでは好意的な意見も見受けられますからね。そもそも、今を時めく米倉涼子さんや川口春奈さんもかつては主演ドラマの苦戦が続き“低視聴率俳優”扱いされていた時期もありましたし、主演作品の成績が振るわないと“戦犯”扱いされるのは人気俳優の宿命とはいえ、過剰に責められるのは不憫な部分もありますよね」
そんな中、テレビ誌ライターは「366日」というテーマの方に問題があった可能性もある」と指摘する。
「『366日』は24年4月期に広瀬アリス、眞栄田郷敦のコンビでフジテレビの“月9”でドラマ化されたばかり。こちらも全話平均世帯視聴率は6.1%と厳しい結果に終わっています。同曲は09年の映画『赤い糸』でも主題歌に起用されており、現在、同バンドが結成25周年イヤーを迎えたこともあって多方面でのプロモーションを展開。新バージョン『366日(Official Duet ver.)』がリリースされたのをはじめ、全国ツアーや特別記念ライブ、有名歌手によるカバーなどさまざまな取り組みが行われています。しかし、こうした試みに対して一部からは『お腹いっぱい』との声も聞かれ、食傷気味に感じている人も少なからずいるようです。同曲が“擦りすぎた”たことが映画版の出足を鈍らせた面もあるのではないでしょうか」
スタートダッシュに失敗した映画『366日』だが、それでもTikTokを中心に若年層にじわじわと評判が広がっており、2週目には第5位に、3週目は2位にランクアップしている。
口コミやSNSでは高い評価を得ている同作だが、これらの後押しを受けての巻き返しを期待したい。
(取材・文=サイゾーオンライン編集部)