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ドジャース・佐々木朗希の“才能”を“戦力”に変える最終試験──“怪物”から“計算できる先発”へ進化できるか

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ドジャース・佐々木朗希の“才能”を“戦力”に変える最終試験──“怪物”から“計算できる先発”へ進化できるかの画像1
すっかり、ドジャースの看板投手となった佐々木朗希。(写真:Getty Imagesより)

 佐々木朗希のMLB挑戦は、もはや「通用するかどうか」を問う段階ではない。100マイル近いフォーシーム、空振りを奪えるスプリット、そして一球で流れを変えられるスケール感は、すでにメジャーでも特別な才能であることを示している。

 だが、MLBで先発として定着するために求められるのは、瞬間的な圧倒感だけではない。問われるのは、球数を管理し、悪い日でも試合を壊さず、長いシーズンを通してローテーションを守れるかどうかだ。

 ドジャースは佐々木を“未来の素材”ではなく、“今季の先発候補”として扱っている。だからこそ、序盤戦の不安定さも、単なる失敗ではなく適応過程として見られている。フォーク系球種の改良、配球の変化、出力と制球のバランス調整。その一つひとつは、怪物がメジャー仕様の先発投手へと変わっていくための過程でもある。

 佐々木は、才能だけならMLBでも十分に戦える。しかし本当の勝負は、その才能を“毎週使える戦力”へ変えられるかにある。いま彼が立っているのは、怪物としての証明ではなく、計算できる投手になるための最終試験だ。

 佐々木朗希はMLBで定着できるか?

村上宗隆・岡本和真・今井達也

課題は「出力不足ではなく」稼働率と安定性

 結論から言えば、佐々木は定着できるだけの才能はある。だが、定着を決めるのは才能の大きさではなく、それをどれだけ“毎週使える戦力”に変えられるかだ。

 ドジャースは2026年開幕時点から佐々木を先発ローテーションの一員として扱っており、春先に内容が不安定でもその方針は変えなかった。つまり球団は、彼を“素材”ではなく“先発候補”として見ている。

 その評価の根拠は明確だ。佐々木は球速も球質も、MLBでも上位級のポテンシャルを持つ。MLB公式はレギュラーシーズン初登板で、フォーシームの平均球速が97.6マイル、最速99.5マイルに達したと伝えている。

 しかも、武器は速球だけではない。スプリットは依然として空振りを奪える球であり、最近はそのフォーク系の球種自体も改良が進んでいる。4月25日のカブス戦では、改良版スプリットの球速が従来より大きく上がり、MLB公式も「速度が約6マイル上がった」と報じた。

 ただし、ここで大事なのは、佐々木の課題が「出力不足」ではないことだ。問題はむしろ、稼働率と安定性にある。今季ここまでの佐々木は、序盤戦で5回前後で降板する登板が続き、4月12日のレンジャーズ戦では94球を要しながら4イニング止まりだった。

 MLBで先発として定着する条件は、たまに圧倒することではない。6回、7回まで見据えて球数を管理し、1年間ローテーションを回せることにある。

 ここに、MLBとNPBの評価軸の違いがある。MLBでは「良い日」のすごさだけで先発の価値は決まらない。むしろ重視されるのは、悪い日をどう壊さずにまとめるかだ。今の佐々木は、圧倒できる日がある一方で、少しズレた日に一気に球数と四球が増える。その振れ幅の大きさこそが、MLBで定着するうえでの本当の壁になっている。

“計算できる投手”への進化が求められる

 そう考えると、最近の「フォークが良くなってきている」という兆候はかなり重要だ。4月25日のカブス戦で佐々木はスプリットをもっとも多く使い、その球速を上げた新しい形で勝負した。

 これは単なる球質向上ではない。同じ武器に依存するのではなく、武器そのものをMLB仕様にアップデートし始めているということだ。短期的に通用する投手ではなく、長期的に適応する投手になるための第一歩として、意味は大きい。

 そのため、佐々木は短期的には圧倒できても、長期では適応が必要な投手だと言える。1登板だけ見れば、誰にも打てないような球を投げる瞬間がある。だが先発とは、瞬間最大風速の職業ではない。5カ月、6カ月にわたって同じ出力を、同じリズムで、同じように繰り返せるかが問われる。佐々木はいま、まさにその“最終試験”の中にいる。

 その意味では、チーム事情によっては昨年のように、リリーフ転向の可能性もゼロではない。実際、米メディアではブルペン転向を勧める論調も出ている。

 もっとも、ドジャース首脳陣は現時点でそれを明確に否定しており、デーブ・ロバーツ監督もブランドン・ゴームズGMも、佐々木を先発として見続ける姿勢を示している。つまり、リリーフ転向は“今すぐの答え”ではないが、先発としての完成が遅れれば、将来的な分岐点として浮上しうるテーマではある。

 結局のところ、佐々木に必要なのは、もう“怪物”であることではない。“計算できる投手”に進化することである。100マイル近い速球も、質の高いフォークも、MLB上位級の素材であることはすでに示した。だが、MLBで先発として定着する投手は、良い球を持つ投手ではなく、悪い日でも試合を壊さず、球数を管理し、1年を通してローテーションを回せる投手だ。

 佐々木の勝負は、才能の証明ではもうない。才能を戦力に翻訳する工程に入っている。その翻訳が完了したとき、初めてMLBで「定着した」と言える。

佐藤輝明×森下翔太と最強級投手陣

(文=ゴジキ)

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ゴジキ

野球著作家・評論家。これまでに『巨人軍解体新書』(光文社新書)や『戦略で読む高校野球』(集英社新書)、『甲子園強豪校の監督術』(小学館クリエイティブ)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブン、日刊SPA!、プレジデントオンラインなどメディアの寄稿・取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。

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ゴジキ
最終更新:2026/04/30 22:00