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「給料が入ったら“変な名前の支店”の銀行口座に振り込んでいます」――分割払いで生活が立ち行かなくなった買い物依存の女性

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西園寺綾子さん(仮名・31歳)はリボ払いの地獄には堕ちていないが、クレカの分割払いに毎月頭を悩ませている。(写真:Getty Imagesより/写真はイメージです)

 クレジットカードの毎月の返済額を一定にできる「リボルビング払い」。一見すると便利な仕組みだが、その裏では利息が膨らみ、返済に苦しむケースも少なくない。

 近年では、買い物や支払いをスナック感覚でリボ払いへ変更する若者も増えている。

 こうした選択をした人々を「愚かだ」と断じるのは容易だ。しかし、その背景には、避けがたい事情やカード会社の巧妙な仕組み、さらには他人につけ込まれているケースも存在する。

 なぜ人はリボ払いを選んでしまうのか?

リボ払い地獄に堕ちた男性

問題を先送りにする分割払い

「わたし、リボ払いはまだしていないので、聞いても無駄ですよ。でも、分割払いはやっています」

 都内の食品メーカーで働く西園寺綾子さん(仮名・31歳)は、クレジットカード(以下、クレカ)を1枚しか所有しておらず、多重債務者ではない。

 そのため、リボルビング払い(以下、リボ払い)の地獄には落ちていないが、一方で毎月の返済に頭を悩ませている。原因は「分割払い」だ。

 分割払いとは、高額な買い物の支払いを複数回に分けて行う方法で、クレカ利用時に支払回数を指定する。毎月の支払額を抑えるメリットがある一方、3回払い以上になると手数料がかかり、回数が多いほど総支払額は増えていく。

「今月の支払いは10万円です。まあまあじゃないですか、普通に考えて。ただ、いろいろ繰り越してこの金額にしているんですよ。というのも、先月と先々月の支払いをすべて3回ほどの分割払いにしているからです。そのため、まだ始まってもいないのに、次回の支払いはもう11万円くらいになっています。たぶん今月も払えないから、また分割変更して、翌月にはどんどん雪だるま式に……。つまり、問題を先送りしているんです」

 Amazonで買い物をすると分割払いを提案されることがあるが、西園寺さんは「ヤバくなる」とわかっているため、できるだけ控えるようにしている。それでも支払日が近づくと、請求額があまりに高額になるため、「あとから分割」という仕組みを使い、アプリ上で過去の買い物をひとつずつ3分割にしていく。

 5000円の買い物はもちろんのこと、請求総額を「10万円程度」に調整するため、コンビニで買った数百円のお弁当まで3分割にしているという。手数料がかかるのは分かっているが、「未来のことなんて知らない」と笑う。

 そんな彼女だが、当初クレカを契約したときには、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。

「20歳のとき、海外旅行に行くために必要だと思って、学校近くにあったカードセンターで作ったんです。キャッシング(現金を借りられる機能)も付いていますが、自分の中でポリシーがあるので、まだ使ったことはありません。だから、リボとキャッシングは“バージン”なんですよ」

 もともと「クレカで自己破産」などと騒がれていた平成時代を過ごしてきた西園寺さんは、カードを作ったときもあくまでも「お守り」程度として考えていた。

「基本的にカードは使いたくないんです。というか、インターネットにカード情報を登録するのもイヤなんです。でも、気づいたらこうなってしまいました」

メルカリにハマって買い物依存

 それでは、なぜ彼女はクレカの返済に悩むようになったのか? きっかけは“ネットショッピング”だった。

 当時20代だった西園寺さんは、友人の結婚式に着ていくドレスを探していた。しかし、なかなか気に入るものが見つからず、式の日も迫っていた。

 そんなとき、フリマアプリ「メルカリ」で理想的なドレスを発見する。

「友人たちはみんなメルカリを使っていましたが、私はネットショッピング自体に不安があり、Amazonで買うのもためらっていました。でも、出品者の方がとても親切で、『式まで日がないので、すぐ発送していただけますか?』とメッセージを送ったら、すぐ対応してくれたんです。それがきっかけで、メルカリは安心できるし、掘り出し物も多いと感じるようになって、気づけば毎朝アプリを開くのが習慣になっていました」

 コロナ禍で、職場の雰囲気も働き方も大きく変化していた時期だった。その変化に順応できなかった彼女は、医師から「躁うつ病」と診断された。

 その結果、ストレスが溜まるとメルカリで買い物をし、次第に毎日なにかを購入するようになっていった。

 しかし、収入の少なかった彼女には余裕がない。そこでクレカをアプリに連携させた。

「欲しくなるとその服のことしか考えられなくなるんです。通知はオフにしているのに、ついアプリを見てしまう。現金がなくてもクレカがあれば買えるので、気づいたら1日1万円使っていることもありました」

 完全に“買い物依存”のような状態だったが、そこにはメルカリ特有の「ゲーム性」も影響していたという。

「『いいね』の数でライバルの存在が見えるんです。例えば10件の『いいね』がついていたら、その商品を10人が狙っているということ。顔は見えませんが、競り合っているような感覚になるんですよ。さらにコメントがつくと、いいねをした全員に通知が届くので、『この商品はいま注目されている』ということがわかるんです」

 こうした心理は「ヤフオク!」などのオークションサイトでも見られる。通常の買い物では得られない“駆け引きの快感”があり、それに夢中になる人は多い。

 結果として、彼女の給料はほとんどクレカの返済に消えるようになった。現金がないため、日常の生活費までカード払いに頼り、300円の買い物さえも分割払いにして月々の負担を減らしていた。

「クレカの限度額は50万円以上あるのかな? わからない。でも、手元にお金がなくてもクレカがあれば買い物ができるから、感覚が麻痺していくんですよね。もちろん、返済が厳しくなるので、現金では買いません」

 西園寺さんの家計簿はかなり特殊だ。衣食住のうち「衣」にしかお金をかけておらず、住まいは家賃6万円のアパート。「お金がかからないように、ご飯は食べないようにしている」と話す彼女の食費は、水道代程度。まさに苛烈な生活を送っている。

衝動的ではなく理性的に借金をしている

 だが、そんな自転車操業では生活は回らない。彼女は購入した服を古着屋に持ち込み、現金化するようになった。

「下北沢や吉祥寺にある『NEW YORK JOE』というお店に、IKEAのビニールバッグいっぱいの服を詰めて売りに行くんです。ここでは査定額の30%を現金でもらえるほか、『トレード』にすれば60%分を店内の商品と交換できる。例えば査定額が1万円なら、トレードなら6000円分くらいの服が持って帰れるんです。本当は現金化したいのに、『トレードしたい!』と思っちゃう。1万円で査定されても現金は3000円。もったいないから、6000円分の服が欲しいと思ってしまうんです」

 そんな西園寺さんの給料は、手取りでおよそ25万円。当然ながら、クレカの返済を滞納してしまうこともある。

「例えば10万円の引き落としがあるとして、残高が10万円しかなかったら月末の給料日まで生活できないじゃないですか。だから、10万円を引き出して口座を空にしておけば、引き落としができない。その間にクレカ会社に電話して謝って、期限を延ばしてもらい、給料が入ったら“変な名前の支店”の銀行口座に振り込んでいます」

 さらに彼女には、毎月1万3000円ほどの奨学金返済もあるが、「気づいたら1万円抜かれている」と話すように、こちらの返済は滞らせてはいない。

「不景気で会社も厳しい状況だとは思いますが、ボーナスが欲しいですね。ボーナスがあれば一気に返済できるじゃないですか。1回リセットされるというか……。でも、半年も経てばまた負債が膨れ上がっているんですよね」

 むしろ、このような金銭感覚でリボ払いやキャッシングに手を出していないことのほうに驚かされる。

「根は真面目なんですよ。メルカリでたくさん買ってはいるけど、実はかなり悩んでいるんです。『商品が売り切れてしまう! ライバルが多いから買われてしまう! もうこの服は市場に出回らないかもしれない!』と考えてしまう。だから『セカンドストリート』や『ヤフオク!』など、さまざまなサイトを調べて、売っていないと判断したら買うようにしています。つまり、衝動的というより、理性的に借金をしているつもりなんです」

 しかし、こんな生活を続けても状況が好転するはずはない。ついに、クレジットカード会社から50万円の請求書が届いた。

「本当に驚きました。不正利用かと思ったけど、身に覚えがありすぎて……。さすがに払えず、裕福でもない実家に電話して、母に払ってもらいました」

クレカ返済のためにせっせと転売

 この一件で、買い物依存はいったん収まった。しかし、返済が積み重なった結果、今度は「転売依存」に陥ってしまう。

「何百万円もの返済がまだ残っていて、月々の支払いも大きな負担です。それで“せどり”の情報サイトを見ながら、ゲームなど高く売れそうなものをクレカで買って、メルカリで3割増しくらいで売っているんです。販売手数料を引かれても、現金化してなんとか返済に回す……。こんなことを続けていても、終わるわけがないですよね(笑)。賽の河原の石積みを、先に体験しています」

 さらに今、不安に思っているのは賃貸アパートの審査に通るかどうかだ。というのも、クレカの滞納履歴は賃貸物件の入居審査に影響し、特に信販系保証会社の審査に通りにくくなる。

「これまでアパートの更新審査に落ちたことはありませんが、最近はクレカだけでなく家賃も何度も滞納しています。だから、もし今後なにかあったときのローンが怖いです。あと、今のカードの有効期限が2026年8月で切れるんですよ。クレカ会社にもかなり迷惑をかけているので、延長更新ができるのか不安です。もし更新できなければ別のカードを作らなければいけませんが、その審査が通るのかも怖いですね」

 50万円の請求があったとき以来、返済を滞らせないよう気をつけてはいるが、どうしようもなくなったときは母親に相談していた。しかし、その“最後の頼みの綱”も今は使えなくなってしまった。

「数年前に定年退職した両親が海外に移住したんです。それでも、現金が足りなくなったときは母に泣きついて、銀行アプリで送金してもらっていました。ところが、この夏、いつものように仕送りをお願いしたら、海外からの送金には日本の携帯番号が必要になったらしく、口座間の送金が不可能になってしまったんです。これから現金が足りないとき、どうすればいいのでしょうか……」

 生活を改めたところで、これまでの負債があるため、状況が劇的に改善することはない。ただ、まだ“奥の手”は残っているという。

「ショッピング利用の限度額とは別に、たぶんまだ60万円ほど使えるキャッシング枠があるんですよ。だから、そこから使える分だけ全て現金化して、返済残額を整理することもできます。もちろん、その分また返済が増えるので、一時的には立て直せても、結局また同じことの繰り返しになる気がします」

 病気のこともあるため、全面的に彼女を責めることはできない。「買い物」によって一時的にストレスが軽減されているのだとすれば、それもひとつの“生きる術”なのかもしれない。しかし、彼女は時折こうも考える。

「クレカというのは、自分の身の丈以上……それ以上まで使えちゃうじゃないですか。それって、おかしいですよね。でも、電車に乗っても、YouTubeを見ていても、デパートで買い物していても、みんなクレカを作らせようとしてくる。そんな“人を騙すような社会”は、本当に正しいのでしょうか」

 金のない若者たちに「自分には金がある」と勘違いさせ、一気に返済生活へと落とし込む……。リボ払いだけでなく、クレカそのものの使い方も、いま一度考え直さなければならない。

「おどるポンポコリン」制作秘話

(取材・文=千駄木雄大)

千駄木雄大

1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「東洋経済オンライン」にて「奨学金借りたら人生こうなった」、「ARBAN」にて「ジャムセッション講座」を連載中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)、原作を担当したマンガ『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』(祥伝社)がある。

X:@yudai_sendagi

千駄木雄大
最終更新:2026/04/30 12:00