KIBA×YURAサマ ~インタビュー後編 バンドを続ける二人が変えることと守ること

撮影=石川真魚
メンバーが離れても、Gargoyleをやめようとは思わなかった。「困っている自分は、何を発想するんだろう」。KIBAは当時の心境をそう振り返る。一方、同じ5人で再び活動するPsycho le CémuのYURAサマは、年齢を重ねた今だからこそ、派手な衣装を着て喜んでもらえることが楽しいという。
対談の後編は、バンドを続けることと、その外で新しいことを始める話へ。子どもたちの発表会を開きたくて始めたドラム教室、ファンと一緒に体を動かすエアロビクス、そしてSNSでどこまで自分を見せるか。活動の形は違っても、二人の判断の根には、自分が楽しい、かっこいいと思えるかどうかがある。
──Psycho le Cémuが同じ5人で再び活動するようになったのは、何がきっかけだったんでしょう。
YURAサマ:僕たちは兵庫県の姫路で集まった5人なんです。活動が止まった時期はありましたけど、地元から一緒に出てきたというところで、どこかつながっているんでしょうね。絆みたいなものが。
それぞれ普通に生きていたら、「またやるか」となるタイミングが自然に来た、という感じだと思います。メンバーのことは、この先何があっても嫌いになることはないと思いますし。
KIBA:いい話ですね。
──KIBAさんも、以前のメンバーと一緒に演奏する機会がありますね。
KIBA:あれは僕のほうから誘っています。例えば「記念ライヴがあるから、せっかくだし一緒にやってくれへん?」で、「いいよ」が来たら「じゃあ日程を調整しよう」という感じですね。向こうからは気を使うかもしれません。一人でやり続けてることを尊重してくれてる気はしています。頼んで、タイミングが合えばやってくれるって感じです。
──昔から、プライベートでもよく会う関係だったんですか?
KIBA:やり始めの頃はありました。TOSHIさんとは同級生だったり、一緒にも住んでいたし、KENTAROくんはもともと遊び友達で、関西時代よく一緒に遊んでた。でも、だんだんみんなでご飯に行くようなことはなくなりましたね。
YURAサマ:だんだん減りますよね。僕の印象では、KIBAさんが一番気を張らずに接していたのはKATSUJIさんなのかなと思っていました。ステージのMCでも、よくいじっていたので。
KIBA:KATSUJIくんは、絵に描いて額縁に入れたくらいいい人なんですよ。本当に優しくて、常に優しい。だから僕が甘えて、ちょっと無理を言うところもあるんでしょうね。
──バンドにありがちな、殴り合いの喧嘩はありました?

KIBA:ないです。100パーない。言い合いもないです。
YURAサマ:僕らは口論みたいなのは、やっぱりありますけどね。
──メンバーが離れて一人でGargoyleを続けると決めた時、誰かに相談したんですか?
KIBA:相談しなきゃとは思わなかったですね。当然困るんだけど、「困るの、面白そう」と思っていたので。困っている時に、自分はどういうことを発想するんだろう。その中で何ができるんだろう。困っている自分って面白そうやな、ぐらいの感じでした。
──一度も、やめようとは思わなかった?
KIBA:ないんですよね。みんなGargoyleが嫌で辞めるわけではなかった。嫌でだったら、僕ももっと悩んだかもしれないけど、そうじゃないし、やってきたことも間違っていないだろうと。「じゃあ一人で頑張るわ」ぐらいの感じでした。
やめたいとは思わなかった。やめなきゃいけなくなったら嫌だな、とは思いましたけど。
──以前のメンバーと演奏する時と、今のサポートメンバーとでは、気持ちも違いますか?
KIBA:違います。以前のメンバーに安心感はある。けど、そこで新しいことをやりたい、作りたいというのは、もうないんですよね。ただ、たまに一緒にやりたいという気持ちはあります。見たい人もいてくれるだろうし、応えたかったりもします。
今はサポートという形だけど、そこでより新しいものを作ろう、もっとよくしようという向上心を持ってやれている。その違いがありますね。
──同じ曲を演奏しても音は変わるものですか?
KIBA:変わります。演奏も音色も違うし、特にドラムは生音の違いがわかりやすい。もちろん、ベースもギターも違う。でも、違うことが悪いとは限らないとも思っています。
──YURAサマは、先輩たちが活動を続けている姿をどう見ていますか?

YURAサマ:ずっと見ていますね。自分が40歳になる時も「40歳でヴィジュアル系って、どうやってやるんだろう」と思っていましたし、50歳が近づけば、今度は50歳でどうやるんだろうと。先輩方が先にやってくれているので、どんな活動をされているのか、追いかけて見ています。
KIBAさんは強力な武器を持っていて、それで戦い抜くというスタイルじゃないですか。それを見ているとワクワクするんです。僕とはスタイルが違うので、「勉強させてもらう」ともちょっと違うかもしれませんけど、目が離せないですね。
──Psycho le Cémuも、再始動後は考え方が変わりましたか?
YURAサマ:当時は「売れるために全部やろう」でしたけど、今は「自分たちはこういうことをやりたい」のほうが強くなってきている感じはあります。
ただ、当時ぐらいの人気を取り戻したい、それ以上になりたいという気持ちはもちろんある。そのために何ができるかは、今でもみんなで話しています。
KIBA:それがなかったら、もっと楽な格好でライブできるもんね。
YURAサマ:確かにそうですね。でも、衣装を考えるのは楽しいんですよ。出来上がってきた時はワクワクします。年齢を重ねると、違う楽しみになってくるんです。「この年でこの格好をして、みんなに喜んでもらえるって楽しくない?」という感じですね。
──あの衣装は、制作にも相当お金がかかりそうです。
YURAサマ:時代や作るものによりますけど、5人分で300万、400万円かかっていた時もありました。一点物ですし。
──同じものを何着も持っているわけではないんですね。
YURAサマ:そうです。クリーニングに出せるものは出しますけど、出せないものが多いので、丁寧に扱います。
KIBA:僕も衣装の保管が大変で、何年か前に、もう布が駄目になっていたものは処分しました。僕の衣装も9割くらいは作ってもらっていると思います。すごく初期は母親に布を買って持っていって、「こんなのを作ってほしい」と頼んでいました。
その後は人形を作る知り合いの方にお願いしたり、衣装屋さんに頼んだり。最終的には、関西の信頼できる方に、何十年も作ってもらっていましたね。
──YURAサマは、子ども向けのドラム教室も開いています。きっかけは何だったんですか?

YURAサマ:発表会をやりたいと、ずっと思っていたんです。僕も地元でドラムを習って、発表会に出た経験があるんですけど、その空気がすごく温かかったのを覚えていて。
本番を前に緊張している子どもがいて、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんが応援している。家族みんなで楽しめる場所だったんですよね。それを作れたらいいなと思った。発表会をやるには、教室を開くしかないか、と。
──教室より先に発表会があったんですね。
YURAサマ:そうです。対象は小中高生で、念願だったホールでの発表会も開催できました。
KIBA:小さい子に教えてるんだ。
YURAサマ:はい。子どもたちも「YURAサマ先生」と呼んでくれます。
KIBA:いろいろやってるよね。エアロビクスもやってない?
YURAサマ:Lidaと二人で、歌って踊るユニットをやっているんです。曲には全部振り付けがあるんですけど、ファンの人たちも僕たちと一緒に年を重ねていくじゃないですか。どうせ一緒に体を動かすなら、ライブに来るほど健康になるようなものがいいなと思ったんですよ。
それで、きちんと体にいい動きを教えられるように、エアロビクスのインストラクターのライセンスを取りました。
──ファンの皆さんも、ライブで一緒にエアロビクスをすると。
YURAサマ:そうですね。そのほうが、楽しんでやれるじゃないですか。
KIBA:バンドの人とは違う視点が多いんでしょうね。それを楽しんでいる感じがいいんだろうな。
YURAサマ:楽しそうなことを、ずっと探している感覚はあります。でも、あまり理解されないこともあるので、エアロビのライセンスを取りに行く時も、あえて黙って行きました。「今後、エアロビでいくから」と言っても、絶対「ええで」とはならないでしょう。
──まず「どうした?」となりそうです。
YURAサマ:理解してもらえないだろうなと思って。でも、KIBAさんも昔から「楽しいと思うことをずっとやっている。それがバンドだから、ずっとやっている」という話をされていた記憶があるんですよ。
KIBA:そうだね。けど、楽しいの発想の自由さが、僕より上かもしれないです。
──新しいファンに知ってもらうために、取り組んでいることはありますか?
YURAサマ:みんなで「SNSを頑張らなきゃ」とは話しています。でも、難しいですよね。教わればうまくできるというものでもないと思っていて。「とりあえず毎日投稿しなきゃ」と、理由もなく意味のない毎日投稿をしてしまうような逆効果のパターンもあるじゃないですか。
KIBA:僕らの時代は逆に、普段の自分をなるべく見られたくなかったんですよ。一番いいことはステージでやるから、それまでどう自分を磨いていくか。水面の下で足を動かして、華やかな場所で一番いいと思うものを見せたい。それ以外なんて見てほしくなかったんです。
SNSにはいろいろな使い方があると思うけど、僕はもう基本的に告知しかしていない。無料で告知できる、いいツールだと考えています。
YURAサマ:そういう意味でも、先輩方がどうしていくかは見ています。使い方に正しい、間違いがあるとは思わないですけど、僕自身、好きな先輩には水面の下で頑張っているところを見せてほしくないという気持ちがあるんですよ。「あなたには、それをやってほしくない」と思ってしまうことが。
KIBA:変にはしゃいでいるのを見ると、ちょっとね。
YURAサマ:新しい世代のやり方に、無理に寄せてこないでほしいというか。でも、ご本人は「こうしなきゃ」と思って努力されているのかもしれない。何が正解かは、なんとも言えないです。
──活動の続け方や、音源の売り方についても変化を感じますか?
YURAサマ:バンドだけで生きていくのは難しくなったと感じますね。音源については、僕個人は「CDはもういらないんじゃないか」という考えの方です。自分が買わないので、作りたいと思わない。
でも、メンバーの考えはそれぞれです。ジャケットを見て選ぶのが楽しかったから、お客さんにもそうしてほしいという人もいる。僕たちと同じ世代のお客さんには、CDが欲しい方も多いので。

KIBA:LPからCDになった時にも、「こんな小さい写真は嫌だ」という気持ちはあったと思うんです。好きな人の写真が大きく載っているのがよかった、と。でも、時代に求められて変わっていくものには、乗っていけばいいのかなと思っています。
──前回のインタビューでGargoyleの新作の話が出ましたが、CDで出すんですか?
KIBA:マネージャーと相談します。こだわりはないです、僕は。
──Gargoyleは、凝ったジャケットも魅力でした。そこを期待するファンもいると思います。
KIBA:そういう人が多かったら、やる。それは、それをやると面白い時代だったからやっていたんだと思うし、次に出す時に、まだ面白いと思えるならやる。そうではないという判断が周りに多ければ、それを曲げてまでやろうとは思わないですね。
──今の若い世代の活動で、違いを感じるところは?
YURAサマ:撮影会の話はよく聞きますよね。ライブが1時間、撮影会が2時間とか。でも、僕が上の世代に「SNSで私生活をあまり見せてほしくない」と思うのと同じで、僕達がそういうことをやったら、下の世代から「先輩達は違うでしょ」と思われるかもしれない。
だから、無理にやろうとは思いません。僕らはふざけた感じのバンドではありますけど、自分なりにかっこいいと思うところは守っておきたいです。
KIBA:最終的には、そこが判断基準だから。自分の楽しいとか、かっこいいとかを信じるしかないよね。
──これから、新しくやってみたいことはありますか?
YURAサマ:ヴィジュアル系のコスプレイベントをやりたいですね。僕の頭の中では、渋谷公会堂、今のLINE CUBE SHIBUYAで。バンドのコスプレをする人達が、あのステージに立って写真を撮れたら、熱くないですか?
当時コスプレをしていた人も、そういう場所があれば、衣装を出してきてやってくれるんじゃないかなと思うんです。
──バンドで、次に実現したいことは?

YURAサマ:バンドについては、僕は特にないんですよ。楽しくバンドをやれていたら、それでやりたいことができている感じなので。
KIBA:素晴らしい。
──KIBAさんは音楽以外の仕事を、もっと増やしたいと思いますか?
KIBA:それはないです。僕らのやることには、大きく分けると二つあると思っていて。自分で作ることと、誰かが作ったものを受けること。バンドで何かやる、アルバムを作るというのは前者ですね。YURAサマがやっていることも、そっちが多いと思います。
僕は最近だとパチンコ屋さんのお仕事をよくいただくんですけど、それは基本的に受けるもの。ああいうのは法律がちょっと変わったら、来店はダメとかになったりもする。それは僕らの側の問題じゃないので、来たらやります、というスタイルです。頑張るのは、自分で作るほうですね。
──では、音楽的にこれからやりたいことは?
KIBA:特にないです。常に、いい曲。
──それを聞きたかったんです。いつも、その答えですよね(笑)
(文・構成=Leoneko 写真=石川真魚)
