デリヘルに誘い込んだ友人から今度はパパ活を勧められ、抜け出せない生活に……恋人との同棲も破談になった26歳女性の苦悩

経済的に余裕のある年上男性と食事やデートをし、その対価として金銭や物品を受け取る行為は、一般に「パパ活」と呼ばれている。
食事やデートのみで違法となるわけではないが、性的関係を伴うケースや既婚者との関係では、状況によっては民事上の損害賠償(慰謝料)請求や、その他の法的トラブルに発展する可能性がある。
また、既婚者が配偶者以外と肉体関係を持つ「不貞行為」は法定離婚事由にあたり、離婚や慰謝料請求へ発展するリスクもある。
さらに、食事やデートだけでは終わらず、好意を抱いていない相手と性的関係を重ねることで精神的な負担を抱えたり、関係のもつれからトラブルや犯罪被害につながったりするケースも報告されている。
それでも、なぜパパ活を続けてしまう女性がいるのだろうか。
小中学校時代は引きこもり
「自分の人生について主体的に考え、選択することが難しく、周囲の影響を受けやすい人は、決して少なくないのかもしれません」
そう語るのは、東京・高円寺にある「円メンタルクリニック」の院長で、精神科医の川手恒太さんだ。
「身近な人の行動や周囲の環境に影響され、同じような選択をしてしまうことは誰にでもあると思います。ただ、その背景にはさまざまな事情があるため、本人の責任や性格の問題だと決めつけるのではなく、自分がなぜその選択をしたのか、少しずつ振り返ってみることが大切なのではないでしょうか」
周囲の人々や環境に影響され、いつの間にか自分が望んでいたものとは違う人生を歩んでしまう。その流れを自分自身で変えることは、決して簡単ではない。
茨城県出身の高橋綾さん(26歳・仮名)は、小柄でほんわかした雰囲気の女性だ。月に2〜3回ほど、気が向いたときに出会い系サイトを利用してパパ活をしている。
彼女も最初からパパ活をしていたわけではない。友人の誘いや周囲の環境に影響されながら、次第に現在の生活へと足を踏み入れていった。
「小学校、中学校の頃は引きこもりでした。いじめられたとか、そういうわけではないんです。ただ、ずっと安心できる場所にいたくて、家から出なくなりました。学校では、仲が良かったはずの女の子同士でいじめが起きたり、男子が大暴れしていたり、そういう雰囲気が本当に嫌だったんです。それで、ずっと家に引きこもっていました」
両親は「綾ちゃんの好きにしたらいい」という放任主義だったそうだ。ただ、勉強だけはきちんとするようにと、ドリルを渡されていたという。学校に通わず、時間だけは十分にあったため、読書やドリルに取り組む日々を送っていた。
「中学に進学しても、小学校からの人間関係がそのまま続くじゃないですか。それが本当に嫌だったんです。一度だけ、学校に行ってみたことがあるのですが、『引きこもりが学校に来た!』という感じで注目されてしまいました。それが嫌で、また学校に行かなくなる……。そんな日々が続いていました」
この頃には両親も、このままでは将来が心配だと考えたらしく、全寮制の中学校への編入を勧めた。
「私自身も、さすがに『このままではまずいんじゃないか』と思っていました。そこで、『知り合いがまったくいない環境ならなんとかなるんじゃないか』と考え、勇気を振り絞って中学2年生の時に全寮制の中学校へ編入しました」
編入先の学校の寮で暮らすようになると、人生が一気に開けたように感じたという。
「同級生や先輩も、私と同じような悩みを抱えている人ばかりだったんです。周囲になじめなかった人が多かったんですね。寮生活で毎日一緒に過ごすうちに、自然と仲も良くなっていきました。『学校はこんなに楽しい場所だったんだ』と思いました」
2日間履いた靴下を売って5000円
その後、内部進学で高校に進んだ。そこで友人から、ある“アルバイト”の話を聞くことになる。
「友達が『お金を稼いできた』と言って、1万円札を何枚か見せてきました。『それ、どうしたの?』と聞いたら、中学の時に履いていた上履きや靴下を売ったとのことでした。私も履かなくなった靴下があったので、『これも売れるの?』と聞いてみたところ、5000円くらいで買い取ってもらえると教えてくれました」
そこで高橋さんがSNSで高校生であることをほのめかし、「中学の時に履いていた靴下や上履きを5000円で売ります」と投稿したところ、次々とDMが届いた。
「友達にお金を借りて、バスや電車を乗り継いで東京まで行きました。待ち合わせ場所に行ったら、スーツを着たサラリーマン風の男性が待っていたんです。そこで、紙袋に入れた靴下と引き換えに5000円を受け取りました。『こんなに簡単にお金が稼げるなんて、夢みたい……』と思いました。結局、そのお金を使って、ゲームセンターで遊んで帰りました」
それからは通販で学生用の靴下などを購入し、2日間履いてから売りに行く生活が続いた。1日に何人もの購入希望者と約束を取り付け、2〜3万円を売り上げることもあった。
「高校生活はずっとこんな感じでした。3年間の寮生活では、自殺した友達もいて、大きなショックを受けたこともありました。正直、普通の高校生とは少し違った生活を送ってきたような気がします。その後、高校を卒業してからは進学せず、それまでに稼いだお金を持って上京しました」
上京後、高校時代の友人たちとは次第に疎遠になっていった。そんな彼女が新たなアルバイト先として選んだのは、ガールズバーだった。
「ガールズバーで知り合った友達に、マッチングアプリを教えてもらったんです。それまで一度も性行為をしたことがなかったので、『誰でもいいから経験してみたい』という気持ちがありました。そこで知り合った男性と実際に性行為までしましたが、相手には初めてだということは伝えませんでした」
その後、ガールズバーで知り合った別の友人から、デリヘルで働いていることを打ち明けられた。さらに、「楽しいし、お金も稼げるからやってみない?」と誘われたという。
「最初はちょっと抵抗がありました。でも、友達がやっているなら、別にやってもいいかなと思ってしまい、体験入店してみたところ、断れずに働くことになりました」
ただ、常勤はせず、気が向いたときに連絡して出勤する形をとった。
「お客さんからは『毎日ホームページをチェックして、出勤を確認できたらすぐ予約しなきゃいけないのは大変だよ』と言われていましたね」
金銭的に苦しくなるとパパ活へ
しかし、デリヘルでは苦手な客に接することも多く、次第に出勤するのがおっくうになっていった。出勤回数は減り、一般企業で昼の仕事を始めることにした。
「気づいたら友達もデリヘルを辞めていました。その代わりにパパ活に移行していたんです。『こっちのほうが相手を選べるし、稼ぎも店に取られないからいいよ』と教えてもらい、私も始めました……。『綾のビジュアルだったら結構稼げるよ』と言われて、気軽に手を出してしまいましたね」
今ではデリヘルに出勤していた頃と同じように、空いた時間に出会い系サイトの掲示板へ投稿し、男性と会う約束を取り付けている。
「たまに、『私は何をやっているんだろう』と思うことがあります。一度彼氏ができたのですが、こんな私を受け入れてくれるかどうか試したくなり、風俗で働いていたし、パパ活もたまにやっていると打ち明けたんです。結果、同棲する予定だったのに、その話がなくなってしまいました」
現在は昼の仕事をしながら夜はバーでも働き、金銭的に苦しくなるとパパ活をする生活を続けているという。
時折、憂鬱になってすべてを壊してしまいたくなることもある。しかし、こういう生き方しかできないのだと高橋さんは感じている。
前出の川手院長は、こう指摘する。
「物事がうまくいかないときに、自分以外の要因に目が向きやすいところがあるのかもしれません。自分ではなかなか気づきにくい部分でもあると思いますので、一度、自分自身の考え方の傾向として振り返ってみてもいいのではないでしょうか」
周囲の影響を受けながら、さまざまな仕事を経験してきた高橋さん。これから自分自身の意思で、どのような人生を選んでいくのだろうか。
(取材・文=山崎尚哉)
