楽しい社畜ライフ『ミニオンズ フィーバー』 フジテレビから日テレへ“仁義なき移籍”

本来はモブキャラだったのに、今ではすっかりZ世代の人気者になっているのが、ミニオンズです。米国のアニメ会社「イルミネーション」が製作した劇場アニメ『怪盗グルーの月泥棒』(2010年)でこの黄色い謎の生命体たちは初登場し、次々とシリーズ化されています。
映画製作に力を入れていたフジテレビは家族層にアピールするため、2012年に「イルミネーション」と提携し、ミニオンズたちはフジテレビ映画のオープニングをにぎわせていました。しかし、日本での人気がすっかり定着し、「中居問題」などでフジテレビが凋落していく間に、しれっと日本テレビの『金曜ロードショー』へミニオンズはお引越ししています。
かわいい見た目に反して、なかなかしたたかな連中です。
5月22日(金)の『金ロー』で放送される『ミニオンズ フィーバー』(2022年)を紹介しつつ、ミニオンズの人気の秘密を探りたいと思います。
グルーとミニオンズが出会った頃の物語
シリーズ第1弾となった『怪盗グルーの月泥棒』は、世界一の悪党を目指すグルーとその手下であるミニオンズが月を丸ごと盗み出すというスケールの大きな犯罪コメディでした。『ルパン三世』や『名探偵コナン』をヘビロテしている『金ロー』と相性のいいシリーズです。
今回の舞台は1970年代の米国。グルー(CV:笑福亭鶴瓶)はまだ12歳の少年で、ミニオンズと出会って間もなかった頃のお話です。当時から悪党になることに憧れていたグルー少年は、犯罪集団「ヴィシャス・シックス」の新メンバー募集のオーディションを受けることに。
ベル・ボトム(CV:尾野真千子)率いる「ヴィシャス・シックス」の選考は、年齢を理由にあっさり落とされます。しかし、ただでは帰らないのがグルーです。ベル・ボトムらが大事そうに持っていた秘宝を、ちゃっかり盗み出すことに成功します。
ところが、この秘宝は伝説の大悪党であるワイルド・ナックルズ(CV:市村正親)も狙っていました。ベル・ボトムたちだけでなく、ワイルド・ナックルズにも、グルーは追われることになります。グルー家の地下に居候していたミニオンズは、グルーを救うために動き始めますが、案の定やることなすこと裏目に出て、物語は予想外の展開を迎えます。
1970年代といえば、ブルース・リー主演映画『燃えよドラゴン』(1973年)をはじめとするカンフー映画が大人気だった時代です。リンダ・ロンシュタットの「悪いあなた」、ローリング・ストーンズの「無情の世界」などの懐かしいヒット曲も流れます。そんな70年代カルチャーへのリスペクトも込められ、大人も気軽に楽しめる作品に仕上がっています。
ディズニーが失った「毒気」が魅力
オリジナル版「ミニオンズ」シリーズでミニオンズの声優を務めているのは、ピエール・コフィン。『怪盗グルーの月泥棒』など初期作の監督も手掛けています。父親はフランス人、母親はインドネシア人で、フランスでアニメーター修行し、イギリスでキャリアを積んだクリエイターです。
今回の『ミニオンズ フィーバー』は70年代の米国カルチャーが前面に出ていますが、シリーズ全体からは欧州映画っぽい雰囲気が漂い、ハリウッドものとはちょっとテイストが違うんですよ。
そもそもミニオンズはモブキャラで、凶悪なボスに仕えることを願うという「毒気」のあるキャラクターです。ボスとなるグルーと一緒に嬉々として悪いことに励みます。正義のヒーローが活躍するハリウッド映画とは異なる捻りが感じられます。
近年のディズニーアニメは、伝統とポリコレを重んじるあまり「毒要素」をすっかり失ったわけです。新興会社の「イルミネーション」が製作した「ミニオンズ」には、ディズニーアニメが失ってしまったものがあるように思います。
社畜であるがゆえの楽しい生活
ミニオンズって、悪いボスに振り回される社畜キャラでもあると思うんですよ。グルーの指示がゆるいことから、ミニオンズは毎度のように失敗を繰り返します。ブラック職場の日常を、社畜サイドから描いたコメディでもあるんじゃないでしょうか。
でも、そこで社会風刺にならないところがコメディシリーズ「ミニオンズ」の良さでもあるわけです。
何度失敗しても、モブキャラゆえに個人が責められることは基本的にありません。彼らの失敗は逆に多くの人たちの幸せを招き、感謝されることになります。世界一の悪党を目指すグルーも、根はいいヤツで、ミニオンズたちに愛情を感じています。そして、何よりも魅力的な悪党に仕えたいという同じ夢を共有する仲間たちがいます。
モブキャラ、社畜キャラでいるのも案外、楽しいことなのかもしれません。
モブキャラたちに愛情が湧く瞬間
現代の日本は、AKB48、乃木坂46、櫻坂46といったメジャーなグループアイドルだけでなく、地下アイドルやローカルアイドルも加えれば、それこそ数えきれないほどのアイドルが氾濫しています。名前も顔もよく知らないアイドルたちが、人気スターを目指してそれぞれ懸命に歌って踊っているわけです。
モブキャラであるミニオンズも、物語が進むにつれ、それぞれ微妙にルックスが異なり、性格も違うことが分かってきます。そうしたミニオンズの違いが見えてくると、このシリーズに対する愛着が次第に湧いてくるんですよ。アイドルグループの「推し活」みたいに、応援したくなっちゃうんです。
自己承認欲求はあるけど、悪目立ちはしたくない。自分ひとりで責任を負うのはムズいけど、みんなと一緒に思いっきりバカなことを経験してみたい。主役は無理でも、仲間の輪には加わっていたい。SNS社会で育った今の若者たちは、ミニオンズの姿に自分たちを投影しているのかもしれません。
(文=映画ゾンビ・バブ)
