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『黒牢城』宮舘涼太、『木挽町』長尾謙杜…時代劇で重宝される旧ジャニーズ陣「集客力」以外の理由

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宮舘涼太(写真:Getty Imagesより)

 映画『黒牢城』が6月19日に公開される。『〈古典部〉シリーズ』『インシテミル』などで知られる作家・米澤穂信による「第166回直木賞」受賞の同名小説を原作に、武将・荒木村重役を本木雅弘(60)、その家臣役としてSnow Manの宮舘涼太(33)が共演する。

『Michael』「不都合」の“真実”

 本作は織田信長に謀反を起こし、有岡城で籠城中の荒木の身に起こるさまざまな(架空の)事件を、織田側の軍使・黒田官兵衛(菅田将暉)が解決していく「時代劇×ミステリー」だ。日本公開に先立ち5月19日(現地時間)にはフランス・カンヌ国際映画祭で公式上映、約1000人からスタンディングオベーションを浴びた。

 時代劇×STARTO(旧ジャニーズ)社といえば、今年初頭にはなにわ男子・長尾謙杜(23)が『木挽町のあだ討ち』(2月27日公開)でストーリーの鍵を握る若侍役を熱演し、高い評価を得た。トップアイドルの座にいながら、時代劇コンテンツにも重宝される旧ジャニーズたち。その系譜を辿ると、東山紀之(59)の功績が改めて浮かび上がる。「集客力」だけではない、時代劇と旧ジャニーズの関わりを、映画評論家・前田有一氏が解説する。

“冬の時代”時代劇が目をつけた、カリスマアイドル

 時代劇に旧ジャニーズが起用され始めたのは、ジャンル全体に陰りが見えてきた1990年代初めごろ。“冬の時代”の詳細は後述するとして、時代劇離れが進むなか、彼らは「逆に」確固たる基盤を築いてきた。

前田氏がまず着目するのは、旧ジャニーズの傑出した集客力だ。そして集客力が見込めるタレントを起用できれば、制作時の予算規模は引き上がるという。“回収”できる見込みがグンと上がるためで、前田氏は、「何かとお金がかかる時代劇にとって、制作費問題が解消されるメリットは大きい」と話す。

 基盤構築に貢献したのが東山だ。『新選組1 沖田総司 愛と青春の時』(1987、テレビ朝日系)で時代劇に初出演して以降、『名奉行 遠山の金さん』(1988〜1992、テレビ朝日系)、『源義経』(1990、TBS系)などへの参加を経て、『琉球の風』(1993、NHK)にて、旧ジャニーズで初めて大河ドラマの主演を務めた。

「東山さんは『琉球の風』で、アイドルがきちんと時代劇のメインを張れることを示しました。プロ意識が高い東山さんは、役作りのために沖縄の歴史を学び、琉球舞踊や琉球三味線を習得して撮影に臨んだようです」(前田氏、以下同)

開拓と伝承、「時代劇×ジャニーズ」路線

 前田氏は、時代劇と現代劇との最大の違いは「所作」にあると話す。歩き方一つとっても今と違う時代劇は、細かい所作が全体の世界観に深く関わってくる。“演技”にはあらわれない身のこなしが大切になる点で、「日本舞踊を身につけていた東山さんは、時代劇に大正解のキャスティングだった」(前田氏)。

 東山が日本舞踊を習ったのは、1990年の主演舞台『なよたけ』がきっかけだった。当時23歳の東山に稽古をつけたのは日本舞踏「梅津流」の家元・梅津貴昶(たかあき)氏。同氏の著書『天才の背中』(光文社、2019年)の中で、東山は〈時代劇をいくつもやらせてもらっていますが、スムーズに侍の所作ができるのも、あのときのお稽古があるからです〉と述懐している。前田氏は、そんな東山が後輩たちへ及ぼした影響は絶大だったとみる。

「アイドル人気に甘んじることなく、正面から挑んだ東山さんの功績は非常に大きい。時代劇の師と慕う松方弘樹さんや、里見浩太朗さんら名優たちとの関係性も丁寧に築き、時代劇スターの1人になった。事務所内、後進の良いお手本となったでしょう」

 その後、旧ジャニーズは途切れることなく時代劇に顔を出す。たとえば1972年から続くアンチヒーロー時代劇『必殺』シリーズでは、2007年放送のスペシャル版『必殺仕事人2007』(テレビ朝日系)より東山が主演となり、元TOKIO・松岡昌宏(49)、SUPER EIGHT・大倉忠義(41)が共演。その後も、東山版『必殺』シリーズは半年〜2年ほどのスパンで定期的に放送され、元KAT-TUN・田中聖(40)、Hey! Say! JUMP・知念侑李(32)らを投入しながら、2023年まで続いた。

時代劇「スターシステム」との共通点

 旧ジャニーズと時代劇の親和性が高かったポイントとして、前田氏は、事務所の体制が時代劇の業界風土とシンクロしたことに言及する。

「旧ジャニーズは、直営で独自の育成システムがありますよね。業界が後進を育てる仕組みとしては、養成学校やスクールで授業料をとり、事務所所属を目指させる養成所システムがありますが、旧ジャニーズの場合は最初から事務所に所属させ、長期的に育てていく。

 これには、かつての映画会社が看板俳優を育てたスターシステムと似た雰囲気があります。昔は東映のような映画会社がそれぞれ俳優と専属契約を結び、時代劇の所作や殺陣を代々教えていたものでした。それができていたのは、映画を年間何本も量産できていたから。さらに、旧ジャニーズでは先輩は後輩へ技術を伝え、また後輩も礼儀作法や振る舞いを先輩の背中に学ぶ文化がある。それは時代劇の世界が継続させてきたことと近しいんですよね」

続々育つ「新・時代劇スター」たち

 東山以降、時代劇で存在感を示す旧ジャニーズスターが続々と現れ始める。松竹映画の歴代最高興収(当時、興収41.1億円)を打ち立てた『武士の一分』(2006)で主演を務めた木村拓哉(53)や、大河ドラマ『軍師官兵衛』(2014)で主演、Netflixドラマ『イクサガミ』(2025)の主演兼プロデューサーを担った岡田准一(45)はその代表例だろう。

「木村さんは、トレンディドラマの視聴率をほしいままにしていた頃に、『織田信長 天下を取ったバカ』(1998)で時代劇初挑戦。『武士の一分』では、“木村拓哉らしさ”を失わずにこんなに時代劇にハマることができるんだという驚きがあり、まさにエポックメイキングな作品でした。

 その後の『無限の住人』(2015)、『レジェンド&バタフライ』(2023)も同様です。“木村拓哉”そのままに、その時代の人物としての説得力をもたせる演技を披露した。これはやはり、頭一つ抜けたカリスマ性とスター性がなし得た技でしょう。岡田さんは時代劇におけるエンタメ性を高めた功労者で、また別格の存在。もはやハリウッドでいう千葉真一さんのような立ち位置に到達していますよね」

 その他、NHK大河ドラマを遡れば滝沢秀明(44)は、『義経』(2005)にて歴代最年少の当時23歳で単独主演。最近では『どうする家康』(2023)で、主演・松本潤(42)と岡田の“ジャニーズ二枚看板”の共演が話題になった。

ネガティブな声を乗り越えて

 彼らの活躍は、ジャンルそのものを「残す」ことに繋がっている――と前田氏は指摘する。

 1970~1980年代に隆盛を極めた「テレビ時代劇」だが、時代劇スターの世代交代が起きにくいことにくわえ、内容はマンネリ化。新陳代謝がなかなか進まず、新しい視聴者層を取り込めなかった結果、徐々にスポンサーは離れていった。

「1969年から42年間続いた『水戸黄門』(TBS系)の地上波レギュラー放送が2011年に終了し、テレビ時代劇のレギュラー放送が姿を消しました。さらに、視聴率調査が2020年から『個人視聴率』へと本格的に移行すると、時代劇は購買・消費意欲が高いF1、F2層(※年齢層×性別で分類するマーケティング用語。F1=20〜34歳、F2=35〜49歳の女性)に見られていないという残酷なデータを突きつけられました」

 時代劇の制作は全方位に高コストだ。まず、現代ではない時代を描かなくてはならない負担がのしかかる。「その時代」の舞台セットや衣装、小道具など、すべてを新しく作り、あるいは調達する必要がある。かつ、画面に電線のような“現代のもの”が映ってはいけないため、準備も編集もより慎重さが求められる。しかも時代劇に出るような俳優のギャラは高い。テレビ局にとってその制作は重荷になり、時代劇コンテンツは番組表から徐々に数を減らした。

 そうした流れとともに時代劇に関わるスタッフも外へと流出したが、だからといって業界が「なくなってもいい」と思っていたわけではない。

「いくら見る人が減ったといえど、時代劇はやはり“日本人こそが作れるもの”だという精神的支柱ではある。かつ、時代劇を制作する技術は、細々とでも続けないと完全に途絶えてしまう。なんとかして時代劇を作り続けないといけない、という使命感にも似た思いを持つ監督さんは多かったと思います」

 時代劇存続の危機。そんな折に起用された旧ジャニーズたちに期待されたのは、新しい風だった。

「ドラマでも映画でも、旧ジャニーズのアイドルたちが出演してくれると、時代劇=古臭いという“オワコン”感を払拭してくれる。シニアが見るものという固定観念を壊し、幅広い年代に『自分たちも見ていいんだ』という印象を与えてくれます。“時代劇にアイドルなんて”とネガティブな声もありましたが、彼らは何を言われようと出続けた。今となってはそうした声も減り、ファンにとっても推しの時代劇出演は『かっこいい』イメージになってきています」

 次世代に受け継ぎ受け継がれ、時代劇は続いていく。

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(取材・文=町田シブヤ)

町田シブヤ

1994年9月26日生まれ。お笑い芸人のYouTubeチャンネルを回遊するのが日課。現在部屋に本棚がないため、本に埋もれて生活している。家系ラーメンの好みは味ふつう・カタメ・アブラ多め。東京都町田市に住んでいた。

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最終更新:2026/06/18 12:00