マイケル復活、W杯狂騒、高市首相疑惑――週刊誌が映す現代日本の不安
ところで2025年7月~12月期ABC公査部数ランキングが出たので紹介しよう。(今井照容責任編集【文徒】2026年(令和8年)6月12日より転載)
順位 雑誌名 当期部数 前期比(%) 前年同期比(%)
1 ハルメク 459,469 99.4% 98.4%
2 家の光 291,042 98.5% 88.1%
3 週刊文春 169,291 93.9% 99.9%
4 月刊ザテレビジョン 152,777 107.8% 97.0%
5 レタスクラブ 133,730 133.8% 92.2%
6 致知 121,328 99.7% 98.8%
7 女性セブン 117,607 97.8% 95.7%
8 文藝春秋 113,347 94.2% 86.5%
9 日経ビジネス 112,488 97.6% 92.8%
10 女性自身 111,228 98.9% 93.8%
11 ESSE 109,483 121.8% 91.4%
12 美的 91,859 152.2% 130.4%
13 VOCE 89,524 108.7% 115.7%
14 プレジデント 88,462 96.3% 97.2%
15 週刊ポスト 86,033 92.7% 87.8%
16 週刊新潮 85,933 89.4% 86.5%
17 婦人公論 84,590 98.3% 98.0%
18 LEE 84,248 139.4% 87.0%
19 週刊現代 73,227 100.6% 86.5%
36位にFRIDAY 43,602 99.5% 88.8%
週刊文春の部数が減り続け、止まらない。文春砲は健在だが、経営的には苦しいだろうな。
さて、高市政権が血道をあげている国家情報会議設置法というのがある。
だが、サンデー毎日でルポライターの昼間たかしは、そんなものを作っても21世紀の認知戦には対処できはしないという。
「特に無視されているのが、集められた情報の管理方法だ。スパイを防ぐと言いながら、その情報基盤はどこにあるのか。マイナンバー、住民票、税記録、社会保障など、日本政府が扱うデータの大半は、ガバメントクラウドと呼ばれる共通基盤の上で管理されている。その9割以上を占めるのがAWS、すなわちアマゾン・ウェブ・サービス。アメリカ企業だ。
そのほかの政府や行政のクラウドの大半もグーグルやマイクロソフトによって占められている。そして、日本の官公庁はそれらの企業と関係を深めるのに危機感をみじんも抱いていない」
さらにこういう。
「他人の倉庫に大切なものを預けたら、その倉庫の主人のルールに従うしかない。アメリカには『クラウド法』という法律がある。アメリカ政府はAWSやマイクロソフトに対し、サーバーが日本国内にあっても令状一枚でデータの開示を要求できる。日本政府が拒否する手段はない。マイナンバーも防衛省の業務データも、法的にはアメリカの手が届く場所にある。障害が起きたときも同じだ。システムが止まっても、日本の技術者には手の出しようがない。(中略)グーグルの日本法人は渋谷に、アマゾンは目黒にあるが、そこに技術者はいない。トラブルがあっても、『今直しています』という言葉を信じて待つしかない」
ゆえに、
「がんじがらめにされて、機密情報まで他国に預けているのに、スパイを防ぐ法律をつくったところで意味などない。しかし、そこに危機感を感じる人が少ないのはなぜか? それを危機だと感じていないからだ」
たしかに今、デジタル主権ということがいわれる。海外のサイトを使うのは危ないといわれる。
しかし昼間は、主権というのは「決める権利」だ。何を見るか、何を買うか、何を信じるかは、「シリコンバレーのアルゴリズムが決めている。何に怒り、何を信じるかの材料を、外国企業が選んでいる。『自分の意見』のつもりが、誰かが用意した意見だ」という。
これは100%正しい。しかし、もう手遅れだ。デジタル主権のない国は独立していないのと同じだ。
これを第三の敗戦と、私はいいたい。
日米地位協定のように、アメリカに情報までを握られてしまった国は、独立国ではない。高市首相はそれさえ気がついていないようだ。
さて、サッカーW杯が大騒ぎである。4年に1回だから世界中がお祭り気分になるのは仕方ないが、その陰で、汚い金儲けをしているのがFIFA(国際サッカー連盟)であると、文春は批判している。
FIFAは昔からカネまみれのスキャンダルに事欠かなかった。
憲章では中立性や人権尊重、反差別を掲げているが、そんなことは嘘っぱち。
世界中のサッカーファンたちを食い物にしているといってもいいだろう。
出場枠が48チームとなり、試合数も大幅に増やした。『フィナンシャル・タイムズ』(FT)によれば、FIFAは過去最高の89億ドル(約1兆4200億円)の収益を稼ぎ出すというが、その裏には極めて“ヤクザな手法”が横行しているというのだ。
「インファンティーノ会長率いるFIFAは、テレビ放映権料で約四十億ドル(約六千四百億円)、スポンサーから約十八億ドル(約二千九百億円)の収益を見込む。収入の中で、特筆すべきがチケット売り上げだ。
『需要に応じて価格が上下する「ダイナミックプライシング(価格変動制)」を採用したのです。人気の決勝は、公式サイトで最低でも約一万ドル(約百六十万円)から。非常に高値がついている』(経済部記者)」(文春)
中でも物議を醸しているのが、転売システムだという。公式サイトを通じてチケットを転売すると、売り手・買い手から共に15%の手数料がFIFAの懐に入る仕組みになっているそうだ。1000ドルのチケットが転売される度に、FIFAに300ドルが入ることになる。べらぼうというしかない。
ニューヨーク在住のジャーナリスト・津山恵子はこう解説している。
「アメリカでは野球などと比べてサッカー人気が低いので、FIFAが利を得られる仕組みを作ったとしか思えません。『ハイドレーションブレイク(給水タイム)』も、FIFAスポンサーCMしか流していない。裏の狙いはスポンサーを優遇する放送枠を作ることではないかと思ってしまいます」
しかし、案の定、価格が高騰し過ぎて、チケットが売れ残っているという。FTによると、公式転売サイトには、6月9日時点で17万6000枚のグループリーグのチケットが掲載されていたという。
「アメリカホテル・宿泊施設協会は、大半の開催都市で予約数が想定を大きく下回っていると発表。人気のない試合は価格が暴落しているのが実情です」(同前)
さらに深刻な問題が、出場国・イランに対するアメリカの“苛め”だという。
戦争中の2カ国が共にW杯に出場すること自体が異例だがそうだが、
「ルビオ米国務長官は、『選手団に紛れ込んだテロリストを入国させるわけにはいかない』と、入国審査徹底を表明。イランサッカー協会会長ら関係者がビザの発給を拒否され、入国できなかった」(国際部記者)
ビザの問題で、イラン選手団の合宿地もアメリカからメキシコに急遽変更。イランは試合の度にアメリカに入国し、試合が終わるとメキシコに帰らなければならない。
実はアメリカとイランが激突する可能性があるというのだ。両国が各グループを2位で通過すると7月4日に対戦することになる。
アメリカ国内ではイランに同情する声が多いようだ。
6月21日のロイター通信によれば、「サッカーのワールドカップ(W杯)に出場しているイラン代表は、決勝トーナメント進出の望みをつないだ21日の1次リーグ第2戦後、競技場があるロサンゼルスのもてなしへの感謝と『尊厳を持ってこの地を去る』というメッセージをロッカールームに残した」という。
トランプも少しは見習ったらどうか。
お次は、中傷動画問題で追い詰められている高市首相だが、肉体面でも危ういところにあると、新潮が報じている。
高市首相の持病「関節リウマチ」が悪化しているという報道が相次いでいる。
人工関節を入れているそうだが、反対側の股関節の症状が進行している可能性(都賀整形外科リハビリクリニックの渡辺淳也院長)や、「『老年期の自律神経失調症』という可能性もある」と、小山嵩夫クリニック院長が指摘している。
さらに、目に見えるやつれや不眠、喫煙が、彼女の健康を蝕んでいる可能性も指摘されているのである。
6月22日の国会答弁で、他候補への中傷動画の件を突っ込まれた高市首相は悲鳴のようにこういった。
「3日前に質問通告を受けたが、予算委への対応や政府の政策に関する資料を読むなどして『金曜日の夜から今朝までほとんど睡眠も取っていない』と主張。『秘書から聞き取り、伝言するのは無理だ。秘書がしっかりとした陳述書を作る。何とか答弁に代えさせてほしい』と訴えた」(東京新聞Web版6月23日より)
一部メディアでは、安倍晋三元首相が第1次政権の時、「消えた年金問題」で追い詰められ、参議院選で敗れたため、「持病の悪化」を理由に辞任した時と似てきているという永田町雀の声を報じている。
高市首相が自分の「レガシー」を残したいというのであれば、選挙中のSNS活用について、早急に基本方針を作り、便所の落書きのような誹謗中傷合戦にならないようにする法案を成立させ、それを「レガシー」にして辞任すればいいのではないか。
さらに、政治資金規正法の不記載・虚偽記載で高市首相と会計責任者の木下剛志の2人が奈良地検に刑事告発されたといわれる。告発したのは神戸学院大学の上脇博之教授。
高市首相は“ガラスの天井”を打ち破って初の女性首相に就いたのだから、そのレガシーが泥まみれにならないうちに、身を引くことを進言したい。
次は解剖学者で東京大学名誉教授というより『バカの壁』の養老孟司といったほうがわかりやすいだろう。
彼がSNSについて論じているが、これがなかなか面白い。
冒頭、「現代のひとたちは『感覚』でものを捉える力が衰え、そのせいで思考がすべて『言葉』から始まってしまう。それは危険なことであると、私はこれまで述べてきました。
というのも、感覚とは人それぞれで異なり、それを共有するための概念、すなわち言葉がある。感覚があって言葉があるという順序が成り立たなくなると、言葉の有難さが分からなくなります。結果、言葉が伝わって当たり前だと思い込み、少しでも通じないと不安に襲われてしまう。
または通じないことで苛立ち、攻撃的になる。その傾向が顕わになったのがSNSだと思います」
テレビに映っている映像は、すでにいったことや、人の頭の中を一回通したものを共有しているに過ぎない。
現代のこの国では、人の目を通さない「自然」や「人でないもの」に触れ合う時間がほとんどなくなっている。
オーストラリアでは昨年、16歳未満のSNSを禁じる法律を世界で初めて施行した。養老はかの地に1年ほど住んだことがあるという。
「私が、この措置を『無理もない』と感じるのは、あの国が『自然』との接触が多い社会だからです」
だが、日本という国は人の顔ばかり見て暮らしている。SNSも「人の顔」を見る延長線上に位置づけられている。
そんな日本でSNSを規制しても意味があるとは思えないといっている。
そしてこういう。
「そもそもSNSでの人間関係というのは、嫌でも付き合っていかねばならない家族のような関係とは異なります。こうしたインスタントな関係は、人間を乱暴にするので避けた方がいい。
SNSで暴言を吐くことに慣れてしまうと、実際に人に会っても同じ振る舞いをするおそれがあります。これは『活きていくのに都合が悪い』ということに利用者が気付かないと、なかなか変わりません」
なるほど。感覚があって言葉がある。たしかにそうだ。われわれはとうに「第六感」などという感覚を失ってしまった。
そうした感覚を再び磨くためにどうしたらいいのか。AIに聞いてみようか?
ところで、あの麻生太郎が、天皇の外戚になって、昔の藤原道長のように「摂政政治」をやろうと画策していると文春が報じている。
以前、ここでも書いたと思うが、今の旧宮家の男系男子を養子に迎えるという案は、麻生がたくらむ最後の悪だくみではないかと、私も思っている。
それが証拠に、麻生の子分である森英介衆院議長がこう言い放ったのである。
「八日の会議後の会見で森氏が、養子案に関連し『男の子が生まれれば皇位継承権を持つ』と発言したのです。議論していない意見を議長が語ったのは、『不適切』『男系男子に固執しているからだ』などと批判が相次いだ」(社会部記者)
6月10日の全体会議の冒頭、森は「真意が伝わらずご迷惑をおかけした」などと謝罪したが、謝って済む話ではない。
それでも自民党は止まらない。6月13日には鈴木俊一幹事長が皇室典範改正を「今国会で成立させなければならない」と強調した。
なぜそこまで急ぐのか? 背景には、鈴木の義兄、麻生太郎副総裁の存在があると文春は見る。近年、麻生は旧宮家の男系男子を養子とする案を強く唱えてきたという。
「二四年から皇族数確保を巡り、与野党協議が続けられてきました。昨年、女性皇族の身分を保持する案を先行して決めることで、自民と立憲が合意していたものの、麻生氏が『養子案を棚に上げ、取りまとめるのは不自然』とちゃぶ台返しをしたほど」(政治部デスク)
その麻生がなぜ、転向したのか?
「天皇の外戚として、強い影響力を持つことをたくらんでいるのではと言われています」(政治部記者)
麻生の妹の信子は、三笠宮寬仁親王妃家の当主だ。寬仁さんは“男系男子”論者だったが、娘が三笠宮家を継いでおり、現状では跡取りはいない。このままでは断絶も有り得る。
信子が、旧宮家から男系男子を養子に取ることで、家を残すことができる。また、その養子が将来の天皇になれば、麻生家はその外戚、平安時代の藤原道長のようになる可能性があるのだ。
そんなことを許してはならない。
その皇室典範改正。案は二つ。一つは、女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ。二つ目は、旧宮家系の男系男子を養子に迎える。
だが一案では配偶者や子の身分は明記されず、二案でも「必要に応じて一定年数ごとに見直す」と記されているといわれる。
喫緊の課題である「安定的な皇位継承のための方策」については、引き続き検討するというだけ。
国民の7~8割が望んでいるといわれる「愛子天皇」については、「男系男子」に固執する高市首相の意向もあり、全く議論もされず斬り捨てられてしまったのである。
秋篠宮は59歳の誕生日に行われた記者会見で、女性皇族が結婚後も皇室に残る案について触れ、「皇族は生身の人間」と述べた。
これは、個々の皇族も人間としての立場や感情がある。当事者たちの声を聞くべきではないかという意だと、私は受け取った。
この発言は大きな話題になったが、時の首相が動いたという話は聞こえてこなかった。
今の宮内庁長官の黒田武一郎は、高市首相が総務相時代の部下であり、親しい関係にあるといわれている。だが、高市首相が黒田長官を通じて、天皇や秋篠宮に会って話を聞いたという報道は寡聞にして聞かない。
しかし、6月13日、天皇皇后がオランダ・ベルギー公式訪問に先立って行われた会見で、天皇は高市首相を震え上がらせる衝撃発言をしたのである。新潮から見てみよう。
「記者会から『議論の受け止め』について問われた陛下は『制度にかかわる事項については私から言及することは控えたい』とされながらも、『皇室のあり方や活動の基本は国民の幸福を常に願い、国民と苦楽を共にすること』だと前置きされ、続けて、『こうした皇族数の確保のあり方についての議論においても、国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります』と、お気持ちを述べられたのです」(宮内庁担当記者)
これは、さる宮内庁関係者によれば、
「今回は大きく踏み込まれ、くれぐれも『国民の総意』にそぐわないような案にはしないでほしいと、国会や政府に対して念を押された格好です。つまり、現在進行している案が、多くの国民の理解を得られているとは言えない状況を、陛下は十全に把握なさっているわけです」(同)
天皇が皇太子時代の2004年5月10日、雅子さんが宮内庁内で酷いいじめに遭い、適応障害を発症したことについてこう言及したことがあった。
「外交官の仕事を断念して皇室に入り、国際親善が皇太子妃の大切な役目と思いながらも、外国訪問がなかなか許されなかったことに大変苦労していました。雅子のキャリアや、そのことに基づいた雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です」
これは「浩宮の乱」と呼ばれるほど大きな波紋を呼んだ。その時も、皇太子が欧州歴訪前の記者会見の席だった。
私は、天皇は娘の愛子さんを継承者にしてほしい、といっているのではないと思う。愛子さんは24歳、秋篠宮家の佳子さんは31歳である。
彼女たちの幸せを考えたうえで、国民の理解を得られる皇室典範改正をしてくれといっているのだと推察する。
天皇は「娘は私が守る」と決意しているのであろう。天皇は「国民の理解がなければ、天皇制は存続できない」と警告を発したと、私は思っている。
この言葉を伝え聞いた高市首相は頭を抱えたのではないか。
この発言は、感度の鈍い大メディアでも大きく取り上げられた。
この言葉の裏には、「私が愛する娘のためなら、私は何でもやる覚悟がある」という決意が込められていることは間違いない。
ところで、中傷動画問題で陰に隠れてしまった感があるが、「サナエトークン」も看過できない重大疑惑である。
この問題を追い続けてきたジャーナリストの河野嘉誠は、文春や共同通信に告白を売った松井健という人間は、信用にたる男なのかを検証している。
週刊現代は、松井が過去に複数の投資トラブルを引き起こし、サナエトークンを巡っても資金決済法に抵触する可能性のある暗号資産の事前販売(プレセールス)をしていたことを報道してきた。
「高市事務所はサナエトークンの宣伝に加担したことを認めている。違法性が疑われる金融商品をPRしてしまったとすれば、その責任は極めて重い。筆者は一貫して、このサナエトークン問題こそが一連の騒動の本丸だとして、首謀者である松井氏の正体に迫ってきた」
しかし、こうした河野の姿勢に“怯えた”のか、松井は文春や共同の取材に弁護士同席で、高陣営の「誹謗中傷動画問題」を告発し始めた。
これは大きな話題となり、国会でも追及される事態となった。
しかし、河野は、
「これまでさまざまなトラブルを起こしてきた松井氏だけに、その証言を鵜呑みにすることはできない。そこで、筆者は『週刊文春』と『共同通信』の報道を独自に調査した。すると、案の定、虚偽情報が含まれていることが判明したのだ」
そもそも松井氏の経歴からしてデタラメだったという。週刊文春電子版は4月1日に、松井氏の経歴について〈自民党・麻生太郎氏の実弟が塾長を務める専門学校「麻生塾」を出た後、株式会社麻生に入社〉と報道していたが、株式会社麻生に確認すると、同社の管理本部長から書面で次のような回答が届いたという。
「上記記事は事実ではありません。松井氏はグループ中核である株式会社麻生ではなく、2013年に私どもの地元である新飯塚ステーションホテルというビジネスホテルに1ヵ月半ながら在籍をしており、同年の5月22日を最後に出勤はしていないということが確認出来ました。週刊文春や共同通信からの取材、在籍確認はありませんでした」
松井が株式会社麻生に在籍していた事実はなく、グループのビジネスホテルにごくわずかな期間、勤務歴があるというだけだったというのだ。文春と共同通信は裏取りもせずに、松井氏の虚言を垂れ流していたことになると批判する。
「さらに深刻なのは、肝心の『誹謗中傷動画問題』についてだ。松井氏が『昨年9月の総裁選時に作成した動画』として、『週刊文春』や『共同通信』に提供した動画に、今年の衆院選時に撮影された高市総理の写真が使用されているなど、時系列状の問題が多数指摘されたのだ。
松井氏が取材にあわせて捏造した可能性もあり、『共同通信』は6月15日までに動画から切り出した写真の削除と、記事の訂正をした」
さらに文春も電子版から当該のものを一時停止した。では、松井がいっていることは全部嘘で固めたものなのか?
「松井氏が木下氏に他候補のネガキャンについて、メッセージでやりとりしていたこと自体は事実だと見られます。しかし、木下氏も松井氏が『動画作戦』に使っていた具体的なアカウントは、知らされていなかった。木下氏への“自己申告”とは別に、松井氏が実際にどれだけ動画作戦をやっていたのか、その実態は極めて怪しくなってきています」(松井氏周辺)
しかし、文春は「真実の政治」への木下秘書の関与や、木下と松井の間でやりとりをされたメッセージなどを根拠として、「疑惑の根幹を揺るがすものではない」と主張している。
だが、河野によると、その影響は極めて限られていたという。
「『週刊文春』に掲載されているスクリーンショットによると、『真実の政治』」フォロワー18人で、投稿された動画は3本にすぎない。最も再生されたショート動画でも、9000回程度で、選挙への影響は限定的とみられる」
松井は自身の急所になる「サナエトークン」問題から世間の目を逸らすために、文春や共同通信を利用した可能性があるというのである。
だが、河野も書いているように、だからといって高市首相や木下秘書が責任を免れるわけではない。
木下と合わせて松井も国会喚問したらいい。
今週最後の記事は、その文春の「高市陣営中傷動画作成」疑惑追及である。
河野も指摘しているように、松井証言にブレが出てきた。さあどうする文春?
中傷動画もサナエトークンも、高市首相自身が関わっていたかどうかは、原稿を書いている時点では不透明だが、彼女の公設第一秘書・木下豪志が“全く関与していない”というのは考えにくい。
当初、これまでスキャンダルが出た政治家の逃げ方は、いつも「秘書がやったことで、私は知らなかった」として、秘書を首にして幕引きを図るというものだから、高市首相もそうするのだと思われたが、そうではなかった。
「事務所の職員に確認したが、ネガティブ情報発信は一切行っていない」(5月8日)「週刊誌の記事を信じるか、秘書を信じるかというと、私は秘書を信じる」(5月11日)と秘書を庇い、威勢がよかった。
ところが、6月3日に文春が、木下秘書とオンライン上でやり取りしていた松井健(木下と頻繁にやり取りをして中傷動画を作ったと告白した)との「音声」を有料の電子版で公開すると、高市首相の発言はブレ続けるのである。
「有料会員になろうとは思わなかったので(音声を)確認できなかった」(6月4日)「(音声が)秘書本人のものかどうか判断するのは難しい」「(秘書の音声にしては)違和感がある」(6月5日)
そしてついには、こういったのである。朝日新聞デジタル(6月5日 16時50分)から引用する。
《首相は「昨日、夜中から何度か電話をした。今朝方、ようやくつかまり、本人に話をした」と答弁。「キレられましたよ。でも、私は音声を確認した」と述べた。
首相の説明によると、自らが「オンラインに出ているやつを聞いてみて」と伝えたところ、秘書は「なんで私が有料会員にならなきゃいけないんですか。知らない人(松井氏=筆者注)の主張を一方的に書き立てるストーリーを作っている、そんなところに対してなんで私がお金払わなきゃいけないんですか」などと反論したという。》
これを聞く限りこの2人の主従は逆転していると思わざるを得ないが、木下秘書はあくまでも松井に会ったことも話したこともないといっていると、高市首相は答弁しているのである。その後、「面会したことはない」といい方を変えたが……。
だが文春の報道にも致命的な「誤り」があることが判明した。松井側から提供された中傷動画の中に、総裁選で小泉進次郎氏を揶揄した後に映る高市首相の画像が、総裁選後のポスターだったことが判明したのである。
やはり総裁選で、小泉氏を揶揄した後に映る高市首相の画像が、「FRIDAYDIGITAL」が今年の1月30日に掲載した写真と一致したなど、四つの重大な間違いがあったのだ。
だから週刊誌の報道などいい加減なものだという、高市首相側の高笑いが聞こえてくるようだ。
そのため文春は疑義が出た関連動画を一時停止したが、木下秘書側が作成したといわれる「TikTokのアカウントに載っていた3本の中傷動画『真実の政治』には時系列上の疑義は一切確認されなかった」(6月25日号)としている。
さらに文春は、「『真実の政治』の動画やシグナルのメッセージなどが存在している以上、高市陣営が他候補の中傷に関与していた事実関係は揺らぐものではない」と言明した。
文春は、6月5日の電子版で、松井と木下秘書との「Zoom」会議の音声を公開していたが、その音声の「声紋鑑定」を、警察の捜査などにも協力する「日本音響研究所」に依頼したというのである。
鑑定の結果は「同一人物の音声と推定してよい」と出た。鈴木創所長は「高市首相が『高い声で違和感があった』と述べたのは、パソコンのスピーカーを通すと、実際に会った時より高く聞こえるからでしょう」と話している。
私は、松井という人間を全く知らない。永田町によくいる類の怪しい人物のようだが、高市首相の「虚偽答弁」が“免罪”になるものではない。
総裁になろうという者が、相手候補を中傷する動画などをSNSで拡散していたのだ。衆議院選では、首相たるものが野党候補への中傷動画などを、やはりSNSで拡散していたという由々しき問題である。
今後、「自分がやったのではなく、秘書が勝手にやった」と訂正したとしても、「トランプ大統領はしょっちゅう相手を誹謗中傷しているではないか」と詭弁をろうしても、許されるものではない。
(今週取り上げたサンデー毎日の記事は、先週発売号ですが、重要性を鑑み、今週の注目記事に入れさせてもらいました)
(文中一部敬称略)
(文=元木昌彦)
