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美輪明宏さんを悼む、椎名林檎×成田悠輔、高市首相“サナエトークン”疑惑――週刊誌が映す日本の現在地

 先週も書いたが、美輪明宏の死は、我々世代にとってはショックであった。

 今をさかのぼる2013年1月、美輪明宏は、クリーム色のゆったりとしたローブに毛皮のストールをまいた装いで自宅の客間に現れたという。

 お馴染みの黄色い髪はカチューシャでまとめられている。文春の取材で、自身の半生をこう振り返っていたという。

「私は世間的に糾弾されたり、日本中を敵に回したりして、普通の人なら自殺しているような人生を送ってきましたけども、そのたびに支えになってくれた友情なり愛情なりにすごく恵まれていたんです」

 3カ月前に体調を崩し、自宅で静養していた美輪が老衰で死去したのは、6月20日の朝。最期の言葉は「ありがとう」。告別式の祭壇には、生前愛した黄色の薔薇が飾られたそうだ。

 晩年まで美輪に寄り添ったのは所属事務所社長で養子のAだったという。

「文学座出身の元俳優。17歳の時、美輪さんに見初められ、付き人として自宅に住み込むように。それから50年以上、公私にわたりサポートしていました」(演劇関係者)

 文春記者から養子にした理由を尋ねられた美輪は、「報いてあげたいと思うじゃないですか!」ときっぱり答え、Aへの感謝と愛を口にしていたそうだ。

 美輪の激動の人生がスタートしたのは、1935年。長崎県で生まれると、10歳の夏に被爆する。その後被爆の後遺症に悩まされる。

 歌の世界を夢見て上京し銀座のシャンソン喫茶「銀巴里」で歌手デビューした。

 57年にはシャンソンのカバー曲『メケ・メケ』が大ヒット。だが、ブームはやがて鎮静化。さらに、同性愛者であると公言したことを機に、人気は急落してしまったという。

 そんな美輪が再び脚光を浴びたのが、65年に自ら作詞作曲した『ヨイトマケの唄』だった。子供のために働く母親を描いた歌が共感を呼び、やがて代表曲に。だが、歌詞に差別用語があるとして放送禁止歌扱いされ、長らく封印された。

 テレビで歌えなくなると、演劇に活路を見出す。劇作家・寺山修司が美輪に捧げた伝説の戯曲が『毛皮のマリー』。同作で男娼役の美輪から愛情を注がれる少年役を演じた萩原朔美が回想する。

「ラストシーンを美輪さんの指摘で、こだわりの強い寺山さんが台本の改変を受け入れたのです。美輪さんの演出力が表れた瞬間でした。あの寺山さんが納得の表情を浮かべており、美輪さんの底知れぬ才能に誰もが驚いていました」

 三島由紀夫は美輪に『黒蜥蜴』をオファーするが2度断られたという。しかし三島の熱情が勝ち、上演にこぎ着けた。

「三島との逸話の中でも語り継がれているのが、自死を決意した三島が美輪さんの楽屋を訪れ、抱えきれないほどの薔薇の花束を置いて去ったエピソード。美輪さんは三島から『君の短所は俺に惚れないことだ』と言われていたそうです」(美輪と交流があった記者)

 その後も『もののけ姫』などの声優をやり、テレビの『国分太一・美輪明宏・江原啓之のオーラの泉』(テレビ朝日系)でスピリチュアルブームを起こす。

「そして多くの人の記憶に残るのが、十二年のNHK紅白歌合戦。七七歳で初出場を果たした美輪が披露したのは、放送禁止だった『ヨイトマケの唄』。美輪は黒髪に黒服という出で立ちで、六分間にわたって歌い切り、大きな話題をよんだ。十三年の取材の際、美輪はその舞台裏をこう明かしていた。

『地塗りだけで紅も落として素顔に近い顔にしたんです。黒一色の衣装でね。何にもいらないんです。それで小さい子供になったり、青年になったり、はたまた労働者のお母さんになったり。観客のみなさんに変わるところを見られないよう『(ステージを)真っ暗闇にしておいてください』と、スタッフに頼んだんです」(文春)

 総合司会を務めた有働由美子がこう振り返る。

『美輪さんは華美なセットを排除されただけでなく、照明一つ一つ、映像のサイズまで徹底的にチェックしていました。愛する我が子のために汗水を垂らす貧しい肉体労働者の母を、ステージ上に生きさせたかったのでしょう。その想いがあの伝説の『ヨイトマケの唄』になったのだと思います。袖で見ていても震えを覚える圧巻のステージでした』

 浮き沈みのある芸能界で何度もカムバックし、差別や偏見と闘った。また被爆の後遺症、呼吸器疾患、脳梗塞と、病に冒され続けた生涯でもあった」(同)

 2023年の文藝春秋のインタビューで文春記者は不倫について聞いたという。すると美和は、

「不倫というのは古来ずっとあって、演劇も音楽もそれを種に名作が生まれてきました。『アンナ・カレーニナ』だってそうじゃありませんか!」

 そう明快に答えると同時に、報じられる側の芸能人には、こんなアドバイスを送っていた。

「『じゃあおまえら記者はどうなんだ』と返す刀を持ちなさい。一般の方も、悪口を言われたら、『おまえも他人のことを言えるのか』と返せばいい。攻撃してくる人たちは、自分はまともだと自惚れているのですから、その化けの皮を剥ぎ取ってやればいいのです」

 文春記者の戸惑いの顔が見えるようである。

 自らが被爆したこともあったが、常に平和を望んだ人だった。惜しい人がまたいなくなってしまった。

 文春は追及してきた高市陣営の中傷動画問題を一休みしてしまったが、現代は、この問題のキーマンである起業家・松井健のいかがわしさを続報している。

 松井が、自分のステイタスをしめすために高市の秘書の木下剛志秘書にも見せたという、トランプ大統領と映っている写真について、こう書いている。

「大統領就任式には、招待状を得て出席させてもらい、その時に、トランプ大統領と撮ったもの」だといいふらしてきていた。

 だが現代によると、現物を入手すると、背景には「CPAC」(保守政治行動会議)がある。全米の保守派政治家が集まるイベントだそうだ。

「CPAC JAPAN」を運営する、あえば浩明(写真の左に写っている)はこう話している。

「松井さんは『自分は天才ハッカーで、一度は捕まったが、当局と取引し、ホワイトハッカーになった』と自称していました。彼のSpace Viewという会社が’22年に約10万ドル(約1300万円=当時)を支払い、CPACのスポンサー枠を買った。テキサスで行われたイベントの際、彼の要望を受けて私がかけあったら、運よくトランプさんと写真を撮れた。1回切り数十秒の出来事です」

 松井とトランプとは何の関係もないといっているのだ。

 こうした巧妙な演出力で、芸能界の人気ダンスボーカルユニットEXILEのATSUSHIに取り入り、都内でバーを共同経営していたという。

 こうしたいかがわしい人間にコロリと騙されてしまったのが高市首相の木下秘書だったということのようだ。

 ここで現代が追及しているのは、松井がいい加減な人間だったとしても、高市首相の秘書の木下が丸め込まれ、いいように利用され、「サナエトークン」を発売するにまで至ったことだ。

 こうしたいかがわしい人間が、高市首相の周辺には多くいるようだ。そこを含めて、すべてを明らかにする必要があるのはいうまでもない。

 お次はポストから。今度は高市首相陣営からタオルを有権者にタダで配っていた疑惑である。高市首相は疑惑のドン・キホーテだ。

 中傷動画をはじめ様々な問題が浮上しても強気の姿勢を貫いている高市首相。そんな高市首相の事務所が、関連グッズ“サナエタオル”を地元有権者に配っていた疑惑が発覚したとポストが報じている。

 選挙区内で有権者に無償で物品を配ることは、公職選挙法違反にあたる可能性があることはイロハのイである。

 ポストによれば、昨年10月、高市首相が自民党総裁選に勝利した瞬間、テレビ中継の画面を彩ったのが、支持者らが首に掛けた「Fight On!! Sanae」などと記された通称「サナエタオル」だった。

 この会の主催は「高市早苗を内閣総理大臣にする奈良の会」となっていたが、当日の参加者らの証言によると、仕切っていたのは「高市事務所」で、タオルの無償配布も事務所や後援会が行なったものだという。

「タオルのお金? そんなの取っていませんよ」

 という参加者の証言もあった。

 このサナエタオルは高市氏の名前入りのもので、ネット通販などで1枚2000円で販売されていた。転売サイトでは最高2万円以上の値がつけられているというのである。

 公職選挙法199条の2(公職の候補者等の寄附の禁止)では、〈公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者は、当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない〉と定めている。つまり、地元の有権者に無償でタオルを配った行為は、公選法が禁じる「寄附」にあたる可能性があるのだ。

 これまでも国会議員の地元への違法寄附は2014年に「うちわ」配布で法相辞任に追い込まれた松島みどり議員をはじめ、しばしば問題化し、大臣辞任や議員辞職に追い込まれたケースが少なくない。

 高市首相はポストの取材に「高市事務所において、10年以上前から、高市早苗政治資金パーティのパーティ券購入者にお渡ししているほか、希望者に販売しているものです。事務所として、選挙区内の方に無償で配布するということは一切行っていません」(高市事務所の回答)としている。

 だが、高市首相の地元・天理市にある奈良プラザホテルの大宴会場は、昨年10月4日の自民党総裁選当日、詰めかけた多くの高市支持者の熱気で溢れていた。高市氏の勝利が決まると歓声が上がり、「おめでとう」と書かれた紙が広げられた。日本初の女性総理の誕生への道が開いた瞬間だった。その様子はテレビの全国ネットでも報じられた。

 この時、ほとんどの支持者が首から掛けていたのが「サナエあれば憂いなし」「Fight On!! Sanae」などと入った“サナエタオル”だったという。

 当日の参加者の1人がこう語っている。

「司会をしていたのは高市事務所所長の木下剛志・秘書で、事務所の秘書やスタッフたちが支持者のお世話をしていた。高市事務所が仕切っている感じでした。会場では事務所か後援会かのスタッフが段ボール箱に詰まったサナエタオルを『余っているものなので、欲しい方いますか?』と言って配っていました。1年前のバージョンのタオルだと聞いたが、みんな受け取っていた。出口で回収? そんなことしてませんでしたね」

 次から次へと湧き出す疑惑。これも高市が本気で首相を目指していなかった証左であろう。あまりにも警戒心がなさすぎるのだ。

 “棚ぼた”首相のわきの甘さは、どんな威勢のいい言葉を重ねても払しょくできるものではない。

 ところで、会期末を17日に控え、重要法案、中でも皇室典範改正法案を通すために強行突破するのかが焦点になってきた。

 ほかにも重要法案がいくつもあるのに、皇室典範改正に絞ってきた意図は何なのか?

 その裏には、麻生太郎が、自分の目の黒いうちに女系、女性天皇を完全に潰し、あわよくば、自分の妹が無理やり作った新皇族家に養子をとり、天皇に仕立て上げ、外戚として権勢を振るおうという時代錯誤の謀略が潜んでいるのではないかと危惧されている。

 これは私の妄想ではない。

 野田佳彦元首相もこういっている。

「要綱では、養子の受け入れ先に『親王妃』も含まれています。もちろん、養子縁組は皇室会議で決めていくことですが、法律上は外戚政治も可能になる。麻生氏は利害関係者にもかかわらず、なりふり構わず養子案を推し進めています」

 高市首相は麻生のいいなりだが、ここへきて、高市の“舎弟”の黒田宮内庁長官が、突然、援護射撃かと思われる発言をしたので、唖然とした。

 毎日新聞によると、

《宮内庁の黒田武一郎長官は2日、定例記者会見で皇室典範改正案が閣議決定された見解を問われ「長きにわたって議論が積み重ねられた結果として、閣議決定にいたったことを重く受け止めている。まずは法案の審議に適切に対処していきたい」と述べた。

 皇族数の確保を目的とした改正案では、女性皇族が結婚後も身分を保持し、旧宮家出身の男系男子を養子縁組で皇族とする。この内容や国会での議論のあり方について、黒田氏は「私どもがコメントできる話ではない。どのような結論を出されるのかは国会の判断だ」と説明。静観する姿勢を改めて示した。

 皇室制度を巡る議論はこれまで堂々巡りが続き、皇室の縮小に何ら対策が取られてこなかった。黒田氏は「長い時間を経てここまできた」と経緯を振り返り、「何らかの方向性が出てきたらありがたい」との心境を明かした。》

 これまで長い時間かけてきたのだから、ここらへんで結論を出してもらいたいと、長官が“催促”したのである。

 この発言は、天皇の了解を得てしているのであろうか? 

 天皇はオランダ・ベルギーを訪問する前に会見して、「多くの国民の理解を得る改正であってほしい」と述べた。

 明らかに、今の改正案には“違和感”を持っていると思われる。

 こんな中途半端な皇室典範改正を無理やり今、成立させる必要はない。

 かえって、この中途半端で、男尊女卑の皇室典範改正に対する様々な意見が出たのだから、今一度、これを有識者会議なり、新しい皇室典範改正委員会でも作って、徹底的に議論して作り直せばいいのだ。

 拙速にこんな半端なものを成立させれば、天皇制そのものが揺らぐことになる。

 高市首相は嫌いな日本国憲法をもう一度読み直すべきである。

 さて、高市政権の支持率がじわじわ落ちてきているのと同時に、自民党内からも高市首相に反旗を翻す議員たちが出てきた。

 石破茂前首相は元々党内野党だから、また同じことをいっていると歯牙にもかけられないが、将来の首相候補の一人である小渕優子が離反したとなれば、高市首相も身震いしているのではないか。

 新潮によれば、一強を誇る高市首相に対して、身内が公然と職を辞する形で盾を突いたのは初めての例といっている。

「自民党内では一途で従順と評判だった小渕優子元選挙対策委員長にとっても、それは四半世紀の政治家人生で初めての“反抗”となった。

 自民党の数ある調査会の中でも、日本の税のあり方を決めるなど絶大な権限を持つとされるのが税制調査会。その非公式幹部会合メンバー、通称インナーの一員で副会長を務める小渕氏が、突如として辞任の意向を示したのである。

『今の自民は、高い支持率を保つ高市総理にモノ申せない状況にありますが、税調インナーを自ら辞することは明確な“NO”の意思表示。とても勇気のある行動だと評価したい』

 歴代内閣で閣僚を歴任したベテラン議員に聞くと、

『小渕先生の行動は、党内の風向きを変えるかもしれませんね。あとに続く人もいるでしょう。今後、内閣支持率の低下と反比例して、徐々に徐々にと数は増えるでしょう。党内抗争になる可能性もなきにしもあらずだと思います』

『勇気のある行動』『党内抗争』など、何やら物騒な言葉が飛び交うありさまなのだ。

 小渕氏が代表を務めるいくつかの議連で事務局長を担う大岡敏孝元環境副大臣は、彼女の心情をこう代弁する。

『小渕先生は日本のためには財政再建が必要との立場で、未来の子どもたちに負担を残さないという信念をお持ちです。今の税調で居場所がなかったのではとの指摘もあるようですが、私は逆に捉えています。なかなか税調で議論していても外には伝わらない。そこで小渕先生は身を挺して、安易な消費減税の危険さを伝えたかったのだと思います。自分がどうのこうのというよりは、思い切った行動を取ることで、国民の皆さんに警鐘を鳴らしたのではないでしょうか』

 一方、小野寺五典(いつのり)税調会長は周囲に対して、『高市内閣の支持率が下がらないようにすることが一番大事だ』と発言したという」(新潮)

 政権発足当時から、高市首相のやり方は「やってる、やってる」と見せるだけで、物価高にあえぐ国民生活を少しでも楽にする施策を何一つといってもいいくらい手を付けていない。

 新潮で経済学者で慶應義塾大学大学院の小畑績教授はこういっている。

「消費減税という政策には合理性があるように見えません。というのも、国民が物価高で困り始めてから、もう1年以上経っているわけです。そんな中でまだ今から半年、あるいは1年以上実現にかかるわけでしょう。もはや緊急対策にならない。物価高対策をやるなら構造的な対策が必要なのであって、一時的に国民の気分を盛り上げるための消費減税では、問題の本質には届かない。要は高市さんの“国民のために私は頑張っている”というアピールにしかなっていないのです」

 高市政権の化けの皮を剥がせ!

 今週の最後は、個性派俳優・佐藤二朗(57)が共演している橋本愛(30)に対して「爆弾ハラスメント」をしたと報じている文春の特集である。

 このタイトルは、少し前に映画『爆弾』が公開され、爆弾犯の中年男スズキタゴサクを見事な迫力のある演技で演じたのが佐藤二朗だったからだろう。この演技で佐藤は日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞した。

 私の好きな俳優ではないが、子どもが無理に気負っているおこちゃま俳優ばかりのいまのテレビや映画では、ほとんどいなくなってしまった貴重な個性派俳優である。

 私は映画『あんのこと』の複雑な刑事役もよかったと思っている。

 橋本愛というのはよく知らないが、NHKの朝ドラ『あまちゃん』で能年玲奈の親友役で注目を浴びたそうだ。

 “事件”のあらましを見てみよう。

「四月十四日からフジテレビ系列で放送されたドラマ『夫婦別姓刑事』。

 東京・中野区の沼袋警察署刑事課に勤務する四方田誠と鈴木明日香。抜群のコンビネーションで事件を解決していく名バディだが、実は二人は夫婦でもあった。

 警察には『夫婦は同じ部署に所属してはいけない』という暗黙のルールがあり、禁断の関係を隠しながら事件解決に奔走する姿を描く。

 秋元康が企画・原案を担当し、視聴率こそ振るわなかったものの、無事六月二十三日に最終回放送を迎えたばかりだ」(文春)

 妻の明日香を橋本が演じた。

 だが、撮影中に、佐藤の橋本に対する問題行為が発覚し、事態を重く見たフジテレビ側が弁護士に調査を依頼し、ハラスメントだと認定されたというのである。

 時系列でみていこう。

「三月二十二日、フジテレビ本社で佐藤と橋本が警察車両に乗るシーンの撮影が行われた。

 ここで後の問題のきっかけとなる事件が起きる。

『佐藤さんがアドリブで橋本さんの頬に両手で触れたのです。この日、佐藤さんは体調を崩していて、頻繁に咳をしていた。身体に触るなら事前に伝えるなど配慮すべきだった。橋本さんも、そこまで気にしなかったのですが、周りのスタッフは「これ大丈夫かな」と心配した様子でした』(同前)

 橋本には、こうした身体接触を憂慮する深い事情があった。

『実は橋本さんは十年ほど前に、舞台の現場で共演者からハラスメント被害を受け、心に深い傷を負った経験があります。今回、ベッドシーンなどはありませんでしたが夫婦役でのオファーを受ける際、念のためプロデューサーに対して身体接触の制限が出るかもしれないと事前に伝えていたのです』(ドラマ関係者)」(文春)

 ここでプロデューサーが佐藤側に伝えた方がいいかと聞いたところ、橋本の事務所は判断をゆだね、プロデューサーは佐藤のマネジャーに身体接触の制限が出るかもしれない旨を伝えたそうだ。

 だがマネジャーは佐藤が撮影を張り切っているので、演技に制約をつけたくなかったためで、「佐藤には伝えず、プロデューサーもそれを了承した」という。

 翌日、2人の寝室シーンが行われるので、2人が別々に楽屋に入った。

「前日に顔面へのタッチがあったので、橋本さんの事務所から、プロデューサーを通じて、佐藤さんに身体接触についての配慮を改めて求めるよう申し入れがありました」(ドラマ関係者)

 プロデューサーから事情を聞いた佐藤は、橋本の楽屋へ向かったそうだ。

 楽屋には彼女のマネジャーとヘアメイクの担当者がいたが、佐藤は、「2人きりで話したい」と“強引”に迫り、ヘアメイクは退出、マネジャーは残ったという。

「佐藤は『(身体接触の)制限があるなら事前に言うべきだ!』と橋本を痛烈に批判。橋本側はオファー段階で局に制限の可能性を伝えていたことを説明した」(文春)

 橋本は「なんでこんなことができるんだろう……」と怯え、佐藤が退室した後に号泣したという。

 その後も佐藤と橋本、プロデューサーとマネジャー同席で、肩と腕はアドリブで触れて良く、そのほかの個所にも事前に許可を得れば問題ないとまとまったそうである。

 ここから“事件”が起こる。

 それから2週間たった4月8日。第一話の完成映像を見た佐藤は感極まったのか、またも橋本の楽屋へ突撃したというのだ。

 ドアを開けるや佐藤は、「感動した!」と感想を伝えたという。そして強い口調でこうまくしたてたというのだ。

「そういう(身体接触の)制限があるんだったら夫婦役は受けるべきじゃない」「あなたはこの仕事を受けちゃいけなかった」

 そして橋本のこれまでのキャリアを全否定する発言が飛び出す。

「あなたは役者をやるべきではない!」

 突然の“爆弾発言”に橋本はひどく動揺した。

「佐藤さんの剣幕は相当なものだったそうです。橋本さんもヘアメイクさんも一方的に話す佐藤さんをメイクの鏡越しに見つめるだけで『はい』としか返事ができなかったそうです」(ドラマ関係者)

 撮影に入っても橋本の涙は止まらなかったという。

 フジテレビも黙って見ていたわけではなく、外部の弁護士に調査を依頼したというのだ。

 所属事務所社長、フジのプロデューサーなどが同席のもと、弁護士による佐藤のヒアリングが行われたそうだ。

 弁護士は、橋本に直接謝罪することは避けるように、2人だけの雑談も避けるように注意したという。

 真摯に聞いていた佐藤だったが、その8日後、佐藤が急に撮影を休んでしまったそうだ。

 この日、佐藤のXに次の一文が掲載されたという。

〈俳優として、譲れぬことは、絶対に、絶対に、「なにがなんでも譲れぬ」と言うべきだった。自分が表現者として絶対に守るべきことは守るべきだった。芝居の神さまに死んでもお詫びしきれない。〉

 投稿はすぐに削除された。

 その後、佐藤の橋本に対する態度が一変し、横に橋本がいても「我慢、我慢」といったり、橋本を遠ざけようという態度を見せ始めたそうだ。

 以降、撮影現場にフジの幹部が立ち会うようになり、フジ側は弁護士によるヒアリングを進め、「役者などやるべきではない」という発言は「深刻なハラスメントに該当する」と認定したという。

 だが、佐藤の事務所側は「ハラスメントに該当するとは考えていない」とし、

「佐藤が一話の完パケを見たところ素晴らしかったので、今後の撮影のことも考えてわだかまりを残さない方がいいと思い、橋本さんとお話ししたく、楽屋に伺いました。そこでは橋本さんに俳優同士のお芝居の話として、今回素晴らしい芝居であったこと、そして過去の心の傷は最大限、尊重されるべき社会だと心から思うけど、これからもあなたが夫婦役の相手役にそのようなことを強要し続けるなら、役者は続けるべきではないと僕個人は思います、という思いを伝えました」

 と回答しているという。

 この記事がSNSで大荒れなんだそうだ。

 多くは佐藤の言動に批判的なようだが、橋本への中傷まがいのポストも多いという。

 私はこの記事を読んで、何でこんなことが大きな話題になるのかが理解できない。

 佐藤の「女優論」のほうが真っ当に思える。

 たしかに、橋本という女性は、過去に相当手ひどいセクハラを受けたのだろう。それには言葉もない。だが、引退せずに女優で生きていこうと踏ん切りをつけたのなら、それなりの覚悟を持つべきではないか。

 この些細な出来事を大事にしたのは、当人ではなく、佐藤のマネジャーであり、プロデューサー、フジテレビ側の対応のまずさである。

 昔、三國連太郎という俳優は、女優とベッドシーンの撮影中、本当に挿入してしまったという「逸話」が残っている。

 もちろんそれを肯定しているわけではない。今はどこの撮影所でも、撮影前に女優側が「濡れ場でも、ここまではいいけど、これ以上は嫌」とはっきり主張し、相手俳優はもちろん、プロデューサー、監督もそれを順守することが当然のように行われていると聞く。

 今回、それが明確に行われていなかったようだ。佐藤からすれば、夫婦役なんだから、手を触ったり肩を抱くくらいは許容範囲と考えても批判することはできない。

 濃厚なベッドシーンがあるはずもない。だが、演技するというのは、そんなお上品なものではない。佐藤は「あなたは“女優”をやるべきではない」というべきだった。私はそう思う。

 橋本という女優は、しばらく静養して、女優とは何かを考えてみたらいい。

 文春らしくもない。こんなことで希少な個性派男優を失ったら、日本の映画界の損失だぞ。

 アカデミー賞主演女優賞を4度受賞した、キャサリン・ヘプバーンは女優についてこういったという。

「女優とは、ただ『演じる』人のことではないわ。自分という人間を100%剥き出しにして、大衆の前にさらけ出す勇気を持つ人のことよ」
(文中一部敬称略)
(文=元木昌彦) 

元木昌彦

編集者。「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"。

元木昌彦
最終更新:2026/07/07 11:00