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山崎賢人『キングダム』で示した存在感 「またお前か」キラキラ実写要員が乗り越えた大爆死と「根性」

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映画『キングダム 魂の決戦』

 映画『キングダム』シリーズ最新作、『魂の決戦』が7月17日に公開される。累計発行部数1億2000万部超え、既刊79巻(2026年7月現在)の同名コミックを原作とし、2019年に始まった実写映画シリーズは今回で5作目。山崎賢人(31、崎の正式表記は「たつさき」)が引き続き主人公・信(しん)を演じ、作中最大規模の戦いが繰り広げられる新章「合従軍(がっしょうぐん)編」へと突入する。

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“キラキラ俳優”山崎の起用に懸念もあったが…

 今でこそ山崎あっての『キングダム』だが、1作目の時点では懸念の声も大きかった。

 なにしろ原作は、2006年の連載開始から10年以上(当時)愛され続け、実写化決定時点で50巻を突破していた超人気作。2013年には「第17回手塚治虫文化賞 マンガ大賞」を受賞し、青年マンガを代表する存在だった。

 対して主演に起用された山崎は当時、『L・DK』(2014、「・」はハートマーク)や『オオカミ少女と黒王子』(2016)などで、恋愛・青春マンガに出てくる男子の役回りを欲しいままにしていた頃。漫画実写化ブームと相まって、SNSではその連投ぶりに「また山崎賢人か」と揶揄する声が続出する始末だった。

 さらに実写は実写でも、恋愛系から抜け出したかと思えば、主演作『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(2017)は「実写化失敗」「コスプレ映画」などと評判は散々。『キングダム』への起用にも一部のファンは、〈何でもかんでも山崎賢人に実写化させるな〉〈ちゃんと実力派を使ってほしい〉と警戒心を示したものだ。

 それが今やNHK大河ドラマ『ジョン万』(2028)主演が決まるほどの存在感。いつの間に、そしてどのようにして山崎はキラキラ街道から肉体派、そして国民的番組の大看板へと躍進してきたのか。自身が主催する映画サイト「映画瓦版」で、『キングダム』シリーズを1作目から見守ってきた映画批評家・服部弘一郎氏とともに振り返る。

山崎賢人が、平成の青春実写に重宝された理由

 山崎が“キラキラ俳優”として世間に広く認知されたのは、前出『L・DK』だろう。今から12年前の作品で、当時山崎は18歳。同作では、剛力彩芽(33)演じたヒロイン・葵の相手役、学校一のイケメンツンデレ王子・柊聖(しゅうせい)役に抜擢された。最終興行収入は4.2億円と、突出したヒットとはいえないまでも、柊聖が壁に片手を置き、葵と顔を接近させるシーンは10代を中心に胸キュンフィーバーが勃発。同作の影響で“壁ドン”というワードが2014年「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10入りを果たし、山崎の代名詞としても広まった。

 改めて遡ると、2010年代の山崎は『orange -オレンジ-』、『ヒロイン失格』(ともに2015)、『四月は君の嘘』(2016)、『一週間フレンズ。』(2017)など、まばゆい青春系マンガを原作とする実写映画に次々と出演。服部氏は、そうした作品に山崎が重宝された理由を「“低体温”な存在感」にあったと見る。

「山崎さんって不思議な存在で、セックスアピールがあまり感じられないんですよね。目力が強いとか、極端なクールさとか、圧倒的な何かがあるわけでもない。『目立たないけど気になる』ような存在でもない。いわば“色のない透明な清潔感”が魅力でした。

 2010年頃以降の青春・少女マンガでは、圧の強くないイケメンとか、無口で何考えているかわからないけどちゃんと優しくて、寄り添ってくれるような男子キャラが求められていて、山崎さんはナチュラルにそういう雰囲気を持っていたのでしょう」(服部氏、以下同)

 例えば『L・DK』の柊聖は一見冷徹だが、時折優しさを見せるキャラクター。『オオカミ少女と黒王子』で演じた恭也も、腹黒でドSだが、クールな表情の裏に優しさを秘めたキャラだった。無色で低体温だからこそ、時代が求める王子像に山崎はすっと馴染んだ。

「キラキラ系」脱却で挑んだ『ジョジョ』が大爆死…

 キラキラ系映画で地位を確立し、実写界で引っ張りだこだった山崎だが、前述のとおり同じ実写化作品でも『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』は“大爆死”だった。

 同作では青春イメージを封印し、リーゼントに学ラン姿という不良み漂う主人公・東方仗助役。山崎は新しい一面を見せたものの、原作がシリーズ累計発行部数1億部(当時)という大ヒットIPなのに対し、最終興収9.2億円とかなり残念な結果で終わっている。原作ファンからは半ば「黒歴史」として扱われ、公開から10年以上経ってもなお「第二章」の音沙汰はない。

「少女マンガ原作からの脱出一発目としては、ちょっと失敗だったかもしれません。2010年代は、佐藤健さん(37)や菅田将暉さん(33)といった若手のイケメン枠俳優が、少女マンガの相手役を挟んで、一般的作品へシフトしていく流れがありました。ただ、山崎さんは“初手”が『ジョジョ』でしたから、『キングダム』が決まった時には『大丈夫かな』『平気かな』と心配になった人も多かったと思います」

『キングダム』で山崎賢人が見せた“新境地”

 古代中国の春秋戦国時代を描いた一大戦記である『キングダム』は、その壮大なスケールから「実写化不可能」と囁かれた。人気作が実写化で次々爆死する流れからも、原作ファンの間には「実写化しなくていい」という空気すらあった。

 そんななか、実写版『キングダム』は長編映画の布石として、連載10周年を迎えた2016年、作品世界を現実で再現する「短編動画プロジェクト」を始動。この時主役を務めたのが山崎だった。そして同年4月に公開された180秒と60秒の映像で、山崎は見事に『キングダム』に“ハマって”いる姿を見せつけ、ファンの不安を跳ね除けた。

「自分の喜怒哀楽を全身で表現する熱い役が、意外にも山崎さんにピッタリだった。思ったことをなんでも口にするし、大国の将軍相手にもタメ口をきいてしまう。仲間と一緒に肩を組んで戦う信の情熱には、『こういう山崎賢人もアリなのか』という気付きがありました」

 映画情報誌『SCREEN』2026年8月号(近代映画社)のインタビューで山崎は、同作について「アツさやパワーをもらっています」と語り、信についても「そういうものがストレートに伝わってくるキャラクター」だと表現。作品自体に、「心を揺さぶられるまっすぐな感情を伝え合うものがあると思う」と語っている。その熱血でド直球な演技体は、山崎の「新しい武器」になった。

 第一作(2019)は興収55.5億円で、同年の実写邦画1位を獲得。服部氏は、「1本の映画として完結し、安心して見られる作品に仕上がっていた」ことが人気に火をつけた理由のひとつだと指摘する。実際、同シリーズプロデューサーの松橋真三氏は、前出『SCREEN』で「1作目の『王都奪還編』ではクライマックスの中国ロケを中心として構造を作り、信と漂と政の3人の物語、成長の物語を描き、これがうまくいったら2、3、4と続けて」いく予定だったと明かしている。

 その意味で、山崎にとっての本番は「2」だっただろう。服部氏が言う。

「1作目は、それだけで物語が一度終わっているんですよね。どんな作品でもヒットすればその次が難しく、山崎さんにとって2作目の方がより試練だったでしょう。しかも2作目以降は主人公の信が、大きな戦いの隅っこで戦うことになって、物語の中での役割が小さくなったといえなくもない。さらに周りにいるのは山田裕貴さん(35)、要潤さん(45)、大沢たかおさん(58)と、キャラが立ちすぎの俳優たちばかり。その中で埋没せず、存在感をアピールし続けている山崎さんはすごいと思いました」

山崎賢人は映画界の大将軍に成長できるのか?

『キングダム』が大好きだという服部氏は、シリーズに惹かれる理由に「主人公の成長を見守る楽しさ」があると語る。

「最初は信が奴隷だった頃。友達のために戦う、というピュアなテーマから始まって、『天下の大将軍に俺はなる!』という大きな夢を追い求めていく。信頼関係をゼロから築き上げながら仲間を増やし、困難にぶつかっても折れずに乗り越え、成果を出していく。しかも、そこに“チート”がない。どんな困難にも、正面から真っ直ぐに立ち向かおうとする。

 前回の映画では、信が子どもの頃に見た憧れの存在で、ロールモデルでもあった王騎将軍(大沢たかお)が退場。自分が目指すべき目標がいなくなった後、信は自分の道をどう切り開いていくのかが楽しみだし、それを応援したい気持ちになります」

 信の成長と並行するかのように、山崎もまた『キングダム』以降、目覚ましい活躍を見せている。映画『ヲタクに恋は難しい』(2020)や『ゴールデンカムイ』(2024〜)といった巨大IPの実写版のほか、『劇場』(2020)や『夏への扉 -キミのいる未来へ-』(2021)のような一般作への出演も増えてきた。

 主演映画『アンダーニンジャ』(2026)の忍事機密報告会(完成披露会見)では、脱皮を繰り返していい人になれるよう生きていきたい、と語っていた山崎。挑戦を繰り返すたびに一皮、二皮と剥けていく山崎が、邦画界の大将軍になる日も近いかもしれない。

えっ、今? 1960年『ガス人間第一号』

(取材・文=町田シブヤ)

町田シブヤ

1994年9月26日生まれ。お笑い芸人のYouTubeチャンネルを回遊するのが日課。現在部屋に本棚がないため、本に埋もれて生活している。家系ラーメンの好みは味ふつう・カタメ・アブラ多め。東京都町田市に住んでいた。

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最終更新:2026/07/15 12:00