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『金ロー』を独自視点からチェックする!【107】

懐かし堀北真希『ALWAYS 三丁目の夕日』 実は事件事故だらけだった「昭和」の幻想

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映画『ALWAYS 三丁目の夕日』[DVD]

 ヤマザキ春のパンまつりならぬ、「山崎貴監督まつり」の開催です。10月23日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)は、山崎監督のブレイク作となった『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)、10月30日はアカデミー賞視覚効果賞を受賞した『ゴジラ-1.0』(2023年)を2週続けて放送します。

思春期の頭の中『インサイド・ヘッド2』

 11月3日(火)には、山崎監督の最新作『ゴジラ-0.0』が劇場公開されます。1964年(昭和39年)生まれの山崎監督は、現実とは少し異なる「もうひとつの昭和」を描き続けている監督だと言えるでしょう。

 国内興収32.3億円のヒット作となり、シリーズ化された『ALWAYS』では描かれなかった「本当の昭和」を振り返ってみましょう。

人情が息づくノスタルジックな世界

 西岸良平のロングセラーコミック『三丁目の夕日』を原作にした『ALWAYS 三丁目の夕日』はこんなストーリーです。1958(昭和33)年、東京タワーが建設中だった頃の東京の下町が舞台。集団就職で青森から上京してきた六子(堀北真希)は、鈴木社長(堤真一)と妻のトモエ(薬師丸ひろ子)が営む自動車修理工場で働くことになります。家族経営の小さな職場にがっかりする六子でしたが、情の厚い鈴木家に次第に溶け込んでいくのでした。

 鈴木家のお向かいの駄菓子屋には、売れない作家の茶川(吉岡秀隆)がいます。茶川は近所の居酒屋の女将・ヒロミ(小雪)から頼まれ、身寄りのない少年・淳之介(須賀健太)を預かるのでした。それまで笑顔を見せたことのなかった淳之介でしたが、茶川が児童小説を執筆していることを知り、目を輝かせます。淳之介はアイデア出しなどを手伝い、血のつながらない2人は共同創作を通して深い関係性を育んでいきます。

 戦争が終わって13年、庶民の暮らしはまだ豊かとは言えないものの、がんばって働けば明るい未来が待っていると信じられていた高度経済成長期の物語です。ビンボーでも、人情がまだ残されていた下町の世界がノスタルジックに描かれています。

ズーズー弁を話す、ブレイク前の堀北真希

 スティーヴン・スピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』(1993年)の大ヒット以降、CGをバンバン使ったド派手なSF映画がブームになっていたのですが、山崎監督は建設中の東京タワーや復興を遂げた銀座の風景などの再現シーンにCGを効果的に使ってみせました。こうした派手さのないCGの使い方によって、逆に多くの日本人が『ALWAYS〜』の世界に郷愁を覚えることになったのです。

 懐かしいといえば、六子役を演じた堀北真希を「久々に見た」と感じる視聴者も少なくないでしょう。ズーズー弁を話す六子役で堀北はブレイクし、その後は『花ざかりの君たちへ 〜イケメン♂️パラダイス〜』(2007年/フジテレビ系)や朝ドラ『梅ちゃん先生』(2012年/NHK総合)などに主演。さらには東野圭吾原作の映画『白夜行』(2011年)のヒロインを演じ、繊細な演技を得意とする若手女優として活躍しました。

 2015年に俳優の山本耕史と「交際0日」で結婚し、出産後は家庭に専念するために芸能界を引退しています。ブレイク前の堀北の姿が、『ALWAYS〜』の世界をより懐かしいものにしています。

 昭和だけでなく、平成もすでに遠い過去になりつつあるようです。時間の流れの速さを感じさせます。

戦争体験者が多かった高度経済成長期

「昔はよかった」。そんな甘い、ノスタルジックな気分にさせてくれる『ALWAYS〜』ですが、実際に昭和30年代の日本がそんなにユートピアな社会だったわけではありません。鈴木家が仰ぎ見る東京タワー建設の死亡事故こそ1件でしたが、高度経済成長期だった当時は労災事故が多い時代でもあったのです。

 大型トラックが一般道をビュンビュンと走り、交通事故による死者は年間1万人を超えていました。現在の約3000人に比べ、いかに多かったのかがわかります。

 宮崎駿監督の劇場アニメ『となりのトトロ』(1988年)も昭和30年代を舞台にしていますが、当時は身代金目当ての幼児誘拐事件が相次ぎ、社会不安を招いていました。1969(昭和44)年から放送が続くTVアニメ『サザエさん』(フジテレビ系)でも、以前は磯野家にたびたび泥棒が入っていました。貧困による犯罪も多い時代でした。

『ALWAYS〜』の気が荒い鈴木社長は戦場体験者で、医師の宅間先生(三浦友和)は空襲で妻子を失っています。戦争の傷痕がまだ残っていたことを感じさせます。昭和の名作アニメ『巨人の星』(日本テレビ系)の父親・星一徹も戦場帰りでした。現代ならPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されるような人も多かったと思います。現代の若者たちがノンアルコール志向なのに対し、昭和のオヤジが深酒し、ギャンブルにのめり込んでいた社会背景には、戦争の傷痕があったのかもしれません。

 戦争を直接は知らない世代である山崎監督は、あくまでも『ALWAYS』は記憶を美化したファンタジー世界として描いていることは覚えておきたいところです。

映画文化が消え去る前に

 山崎監督は『ゴジラ-1.0』など最近の作品は自分で脚本も書くようになっていますが、『寄生獣』二部作(2014年~15年)までは脚本家・古沢良太とのタッグでおなじみでした。『ALWAYS〜』も全72巻ある膨大な量の原作を、うまく万人受けするストーリーにまとめていると思います。

 10月30日放送の『ゴジラ-1.0』で改めて述べたいと思いますが、最近の山崎監督作品は特撮シーンの見どころの多さに比べ、ストーリーが薄いままなのが気になるところです。山崎監督はできればビジュアルづくりに専念し、脚本はプロに頼んだほうがいいんじゃないでしょうか。

 山崎監督自身が脚本をまとめたほうが、CGなどの特撮パートの手配がスムーズに進むのでしょう。しかし、山崎監督が脚本も手がけた実写版『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』『ルパン三世 THE FIRST』(どちらも2019年)などは、作品そのものがなかったことにされています。

 映画って、50年後、100年後にも残るものだと思うんですよ。山崎作品がもうひとつ上のグレードに進むためには、作品選びや企画づくりの体制から見直すべきです。もしくは、意に沿わない仕事ははっきりと断ってほしいものです。

 細田守監督にも同じことが言えます。脚本家の奥寺佐渡子さんと組んだ劇場アニメ『時をかける少女』(2006年)や『サマー・ウォーズ』(2009年)は、多くのファンに深く長く愛され続ける作品になっています。しかし、ひとりで脚本を書くようになってからはどうでしょうか。

 監督が脚本も兼任することが、映画作家としての自立だとは思いません。面白い映画を残して、ナンボでしょう。

「昔はさ、映画館と呼ばれる施設が街にあって、映画というのが2時間前後上映されていたんだよ。懐かしいなぁ」なんて言われないように、山崎監督も細田監督も「巨匠」と呼ばれる前に、いま一度現実を見つめ直してほしいものです。

メンヘラの可視化『インサイド・ヘッド』

(文=映画ゾンビ・バブ)

映画ゾンビ・バブ

映画ゾンビ・バブ(映画ウォッチャー)。映画館やレンタルビデオ店の処分DVDコーナーを徘徊する映画依存症のアンデッド。

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最終更新:2026/10/23 12:00